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SP(息抜きサブストーリー集)
SP2 その狼は、ただ愛を欲しがる。(1)
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若い狼は、魔女の己の扱いに対しずっと不満を抱えている。
だからこそ彼は、彼女にちょっかいを掛ける。
「ちょっと、お兄ちゃん。腰紐が切れちゃうから紐で遊んでいないでこれを運ぶの助けてくれないかしら」
なのに、魔女は酷い。
いつだって、仔狼らにするように頭を撫でもしないで、そっけなく彼をあしらうのだから。
「んっ? 荷物運ぶのか、それおいらが運ぶぞ」
「ボクもー」
「あら、お手伝い偉いわねぇ。頭撫でてあげる」
ほら、まただ。奴らを特別扱い。腰を屈めてわざわざ視線を合わせながら、魔女は優しく仔狼らを撫でる。
「今日のお散歩は、紡ぎ手の所よ。彼女にお届け物があるの」
その小さな背に荷物を括り付け、そして散歩の距離に丁度の紡ぎ手の所へと染色した毛糸を返しに行こうとする。
「わーい」
「魔女と散歩、うれしいなー」
うれしそうに尻尾がちぎれる程振りまくる仔狼らの無邪気さも見ていられない。
彼は独りふてくされ、そしていつもの苦言を呈す。
「おい、甘やかすなって言ってるだろ」
「あらあら、ごめんなさい。でも私は褒めて伸ばす方針なの」
最近の魔女は何だか偶に可愛くない。
(ほら、また俺と視線も合わせないで、そいつらばかり見て)
最初の頃は、若い狼がぐるると不機嫌に喉を鳴らすとびくびくと怯えて、まだ可愛げがあったのにまるで気にもせず軽く扱うのだから。
若い狼の思いがくすぶるのは、彼女への所有欲があるからだ。
(最初に触れたのは、俺なのに)
……と。
日頃からジルバー達、狼の縄張りを荒らす焦げ熊はずっと群れの問題として認識されていた。
あの日偶然にも編み物魔女を助けられたのは、ジルバーと共に花畑の縄張り荒らしを撃退する為。
焦げ熊は本当にいやらしい輩で、森の嫌われ者だ。奴は無粋なマーキングに、食べもしないのに縄張りの中の獲物をなぶって弱らせ放置するその残忍さ。
以前から、彼もジルバーもずっと憤っていて。
その時、彼女を最初に見つけたのは、若い狼だったのだ。
『女がいる、魔女だ』
そう言って鼻先で示したら、兄はいつもの冷静さをかなぐり捨てたように怒り狂い熊に襲いかかった。
ジルバーはあの巨大な熊を倒す事に夢中で、焦げ熊から逃れた魔女は地面に転がっていて。
無防備な魔女へ仔狼が声を掛け、若い狼はその背に魔女を負った。
(俺が、最初に魔女に触れたんだ)
だから所有権を示したいと思う。俺のものだ、と彼女に言いたい。
だからこそ彼は、彼女にちょっかいを掛ける。
「ちょっと、お兄ちゃん。腰紐が切れちゃうから紐で遊んでいないでこれを運ぶの助けてくれないかしら」
なのに、魔女は酷い。
いつだって、仔狼らにするように頭を撫でもしないで、そっけなく彼をあしらうのだから。
「んっ? 荷物運ぶのか、それおいらが運ぶぞ」
「ボクもー」
「あら、お手伝い偉いわねぇ。頭撫でてあげる」
ほら、まただ。奴らを特別扱い。腰を屈めてわざわざ視線を合わせながら、魔女は優しく仔狼らを撫でる。
「今日のお散歩は、紡ぎ手の所よ。彼女にお届け物があるの」
その小さな背に荷物を括り付け、そして散歩の距離に丁度の紡ぎ手の所へと染色した毛糸を返しに行こうとする。
「わーい」
「魔女と散歩、うれしいなー」
うれしそうに尻尾がちぎれる程振りまくる仔狼らの無邪気さも見ていられない。
彼は独りふてくされ、そしていつもの苦言を呈す。
「おい、甘やかすなって言ってるだろ」
「あらあら、ごめんなさい。でも私は褒めて伸ばす方針なの」
最近の魔女は何だか偶に可愛くない。
(ほら、また俺と視線も合わせないで、そいつらばかり見て)
最初の頃は、若い狼がぐるると不機嫌に喉を鳴らすとびくびくと怯えて、まだ可愛げがあったのにまるで気にもせず軽く扱うのだから。
若い狼の思いがくすぶるのは、彼女への所有欲があるからだ。
(最初に触れたのは、俺なのに)
……と。
日頃からジルバー達、狼の縄張りを荒らす焦げ熊はずっと群れの問題として認識されていた。
あの日偶然にも編み物魔女を助けられたのは、ジルバーと共に花畑の縄張り荒らしを撃退する為。
焦げ熊は本当にいやらしい輩で、森の嫌われ者だ。奴は無粋なマーキングに、食べもしないのに縄張りの中の獲物をなぶって弱らせ放置するその残忍さ。
以前から、彼もジルバーもずっと憤っていて。
その時、彼女を最初に見つけたのは、若い狼だったのだ。
『女がいる、魔女だ』
そう言って鼻先で示したら、兄はいつもの冷静さをかなぐり捨てたように怒り狂い熊に襲いかかった。
ジルバーはあの巨大な熊を倒す事に夢中で、焦げ熊から逃れた魔女は地面に転がっていて。
無防備な魔女へ仔狼が声を掛け、若い狼はその背に魔女を負った。
(俺が、最初に魔女に触れたんだ)
だから所有権を示したいと思う。俺のものだ、と彼女に言いたい。
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