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SP(息抜きサブストーリー集)
SP3 銀狼の妻問婚(4)
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(好きこそ物の上手なれと言うが、彼女のニットに対する情熱もそういう物なのだろうな)
話を聞きながらしみじみ、彼は思う。
彼女が大好きだったという祖母から教わった編み物は、とても暖かくとても優しい風合いで、彼女の友人らが褒めるのも当然であるだろうと彼は考える。
(現実ではまだ手にしていないが、夢の中の俺の普段着は、魔女の物だしな)
それは伊都のニットを普段使いにしている彼だからこそ、分かる真価である。
そして、彼女のうっかりミスにより、彼はとんでもない人物との繋がりを知る。
その人物とは、モデルのリッコ。読者モデルからの叩き上げで、女子のあこがれである大きなコレクションのリードモデルも勤めた事のある、大人気のモデルだ。
二十代になってからは大人女性向けの雑誌モデル転向、それに加えて、バラエティ番組のご意見番としても独特の辛口批評で好評を博している。
そんな全国区の人気者と、学生時代からの大の親友であるとは……。
(俺も職業柄、著名人と知り合う事はあるが、また大物を掴んでいたものだな……)
しかも、専属ニット職人だなんて、誰が思いつくだろうか。
リッコの私物の中でも、どう見ても一点もののセンスの良いニット作品は、ティーンモデルの頃から有名であった。
著名人の持ち物を目を皿のようにして眺め、それを真似したコピー品を作る阿漕な作家もどきの輩が、毎回のように粗悪なコピー品をフリマアプリなどで流し話題になる……。
そんな感じのアンダーグラウンドな盛り上がり方からして、本当に局地的な人気ではあったが。
彼女は二十一になる迄ティーン誌の表紙を努めてきたが、毎年恒例のモデル私物披露の企画の時に、彼女の私物であるニットは少なからぬ注目を浴びていた。
普段使いのシュシュにカチューム、化粧ポーチや袋類、ミトンにマフラー、セーター、飾り襟。
彼女は上手に、仕事着にも私物を取り入れる。
どれも、リッコのセンスが響いてか、何処にもない色使いと、動物やポップな柄を取り入れた伝統アレンジ柄が好評価で、真似したくなるのも仕方がないというものだった。
リッコがお姉さん誌に移って、テレビでも露出し、ファン層が年上になってきた事で、そんな彼女の私物を社会人も気付き始めたのがここ数年のこと、という訳である。
(そんな、噂の職人が彼女だなどと誰が分かるか)
表情にこそ出ないが、結構な衝撃を受けた白銀である。
知る人ぞ知る、な、局地的有名人であった伊都であるが。
リッコからの勧めで、パソコンに慣れるべくブログを制作していたものの忙しさに忘れていたとの事。
彼女は相変わらず、キーボードは文字を探しながらのぽつぽつとした雨だれ打ちで、丁寧な図説付きの手引きなしでは不安を覚えるタイプである。随分と無茶なチャレンジをしたものだと思う。
その流れで、まさかリッコと故郷で直接会う事になり、アドレスまで交換し、共にリッコブランドとして伊都の作品を盛り立てていく事となる。
しかもリッコ当人がとんでもないくせ者で、その扱いに困る事になるとは……。
この時の彼は、知らなかった。
話を聞きながらしみじみ、彼は思う。
彼女が大好きだったという祖母から教わった編み物は、とても暖かくとても優しい風合いで、彼女の友人らが褒めるのも当然であるだろうと彼は考える。
(現実ではまだ手にしていないが、夢の中の俺の普段着は、魔女の物だしな)
それは伊都のニットを普段使いにしている彼だからこそ、分かる真価である。
そして、彼女のうっかりミスにより、彼はとんでもない人物との繋がりを知る。
その人物とは、モデルのリッコ。読者モデルからの叩き上げで、女子のあこがれである大きなコレクションのリードモデルも勤めた事のある、大人気のモデルだ。
二十代になってからは大人女性向けの雑誌モデル転向、それに加えて、バラエティ番組のご意見番としても独特の辛口批評で好評を博している。
そんな全国区の人気者と、学生時代からの大の親友であるとは……。
(俺も職業柄、著名人と知り合う事はあるが、また大物を掴んでいたものだな……)
しかも、専属ニット職人だなんて、誰が思いつくだろうか。
リッコの私物の中でも、どう見ても一点もののセンスの良いニット作品は、ティーンモデルの頃から有名であった。
著名人の持ち物を目を皿のようにして眺め、それを真似したコピー品を作る阿漕な作家もどきの輩が、毎回のように粗悪なコピー品をフリマアプリなどで流し話題になる……。
そんな感じのアンダーグラウンドな盛り上がり方からして、本当に局地的な人気ではあったが。
彼女は二十一になる迄ティーン誌の表紙を努めてきたが、毎年恒例のモデル私物披露の企画の時に、彼女の私物であるニットは少なからぬ注目を浴びていた。
普段使いのシュシュにカチューム、化粧ポーチや袋類、ミトンにマフラー、セーター、飾り襟。
彼女は上手に、仕事着にも私物を取り入れる。
どれも、リッコのセンスが響いてか、何処にもない色使いと、動物やポップな柄を取り入れた伝統アレンジ柄が好評価で、真似したくなるのも仕方がないというものだった。
リッコがお姉さん誌に移って、テレビでも露出し、ファン層が年上になってきた事で、そんな彼女の私物を社会人も気付き始めたのがここ数年のこと、という訳である。
(そんな、噂の職人が彼女だなどと誰が分かるか)
表情にこそ出ないが、結構な衝撃を受けた白銀である。
知る人ぞ知る、な、局地的有名人であった伊都であるが。
リッコからの勧めで、パソコンに慣れるべくブログを制作していたものの忙しさに忘れていたとの事。
彼女は相変わらず、キーボードは文字を探しながらのぽつぽつとした雨だれ打ちで、丁寧な図説付きの手引きなしでは不安を覚えるタイプである。随分と無茶なチャレンジをしたものだと思う。
その流れで、まさかリッコと故郷で直接会う事になり、アドレスまで交換し、共にリッコブランドとして伊都の作品を盛り立てていく事となる。
しかもリッコ当人がとんでもないくせ者で、その扱いに困る事になるとは……。
この時の彼は、知らなかった。
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