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Interlude(2)
33 ピュアリア視点:世界はあたしのモノなのに(2)
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注意:引き続き、ヒロインの性格は最悪です。かなり胸糞です。
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『第三王子に言って、王子の彼女として王太子に会わせて貰うんだ。え? 狙ってる男に次点の彼氏って言うのはやだ? はは、バカな子だね。君の気持ちなんてどうでもいいからやってよ。約束してくれるなら、王太子が絶対惚れる魔法を掛けてあげる。だから君は王太子を骨抜きにして、彼に姫巫女として擁立させて聖域に入りなよ。そしたら、世界中の美形男は全員君にあげる。……ただし、代償は大きいよ? それはね……』
『え、そんなの絶対あたしやるに決まってるし。難しいのどーでもいいからあたしに魔法掛けてよ!』
なんか彼は意地悪な顔をして何かを言いかけたけど、聞く必要なんてないし。美形逆ハーレムが出来るならそれで十分じゃない。
『はあ、これはまたとんでもないの引いたな……第三王子の側に居たから適当に声掛けたけど。まあいいや、操りやすいし。じゃあ、異性の誰もが自分の好みの人に重ねて君に恋しちゃう、裏返せば、君の事をまともに見る者はいず、誰も君の本心に寄り添う事はない、そんな呪いを掛けちゃいまーす。それが代償。えっ、聞いてないって? でもなー僕らのルールなんだよね。契約者とは誠実にって。さ、これで、君は一生誰にも愛されて誰にも愛されない人間になれたね!! 表面上はモッテモテだよ? 独りぼっちおめでとうっ! あーすごい、こんなに同情しなくていい相手にこの魔法掛けたの初めてだよボク』
早口にまくしたてる相手の話なんて聞いてなかった。
あたしはとにかく誰にでも愛される魔法が欲しかった。
今度こそ誰かに妬まれたりしない、誰にでも愛される女に。それが叶うんだから嬉しかった。
パチパチと幻の拍手の音があたしの頭の中に響く……。
それからはとんとん拍子だった。
王太子は下僕の彼女として会ったらすぐにあたしに恋しちゃったし、その日のうちに悪役令嬢と婚約破棄してくれるって言ってくれた。
後は、ゲーム通りにあの場面であの女の泣きっ面を見るだけだし!!
ざまあっ!!
……って、思ってたのに。
「何であたしが、王太子妃が牢屋に繋がれるんだよっ!」
分厚い鉛のドアを叩くけど、誰も助けに来てくれない。
周りじゅう壁で塞がれてて明かりはちびたろうそく一本で暗いし、おトイレすらまともに出来ないんだよ? それに板きれ一枚の寝床なんてベッドって言えないし。
これってえーと、ジンケンシンガイ? ってやつだよね。
それにさぁ、ここん中に居ると、気持ち悪いんだよ。なんか酔っ払ったみたいにさぁ、頭ぐらぐらして……。
「王太子に会わせなさいよっ、あたしをこんな目に遭わせやがってっ!! お前ら全員斬首だっ!!」
ああむかつく。
何で思い通りにならないんだろ。
あたし、ヒロインなのに……。
そんな時だ。
「あはは、相変わらずだねぇ強欲の塊の娘」
軽妙な少年の声が、確かにしたんだ。
「ああ、あたしの神様! ねえ助けてよ! あたしをここから出して!!」
あたしを王太子妃にしてくれる魔法を掛けてくれた彼の声だ。
あたしはあの日みたいにそうお願いした。
「そうはいかない。君のような死刑囚をその魔力遮断の檻から出したら、それこそ僕たちの関与を疑われてちゃうしさ」
「そんな……じゃあ、自分で出るからまた魔法をちょうだい!」
どこかから聞こえる声に、大きな声で話しかけるあたし。
けれど見張りは気にしない。せいぜい「五月蠅い」 と扉を殴りつけるぐらいだ。
毎日毎晩叫んでたから、どうも今日も喚いてるだけと思ってるみたい。それをいいことに、あたしは彼に話し掛ける。
「あたし、治療魔法とか得意だから! やったことないけど、でも魔法なら使えるもん、多分。だってヒロインだから、きっと魔法で扉なんて吹き飛ばせるよ。だから魔法頂戴! この扉をどうにかすればきっとまた男の人が助けてくれるよ!」
女は何でか言うこと聞かないけど、男の人はみんなあたしの味方だもん。
だから、外にいるむかつく女騎士は男の人に頼ればやっつけてくれると思うんだ。
「うーん、君じゃ無理かなぁ?」
「なんで」
「魅了は持ち前の魔力を垂れ流せばいいだけだから魔法の勉強をしてなくても君のバカ魔力で何とかなったけど、魔法を通さない鉛の扉を開くには、純粋なエネルギー変換が必要だ。つまり、魔力の精密なコントロールによって魔力を力に換え放つ……純エネルギーの攻撃って、基礎にして頂点なんだけど、ど素人の上魔法の基礎も分からない君が出来ると思えない」
「なにそれ、難しいんだけど!」
「うん。だから、バカな君だと無理と言ったよね、ボク」
「ひどい……バカって言った!」
もう、一週間ぐらい誰とも話してなかったから、安心して話せる相手がいるって事もうれしかった。
彼は私とたくさんおしゃべりしてくれた。
「……だからさ、ここからは出せないって」
けれど、最後に言うのは結局それ。
「どうして」
あたしは暗がりで言う。
鉛に囲まれた暗い地下室で。
「どうしてって……ボクらが王都の影で暗躍してますなんて、わざわざ善側に聞かせたくないし。君はそこそこ面白い動きはしてくれたけどさぁ……王都の防衛にこうして穴も開けられたし。そこは感謝するけどそれとこれとは別さ」
「なんで」
「またそれぇ? もう、面倒だなぁ。そろそろ潜入も長引いちゃったし、とりあえず君からはイロイロとボクらが介入した痕跡を消さなきゃなんだ。ボクが君に掛けた魔法とか、ボクの記憶とか、その他もろもろ」
――だから、サヨナラ。
彼がそう言ったら、あたしはまるで眠るように……。
暗闇の中に吸い込まれた。
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『第三王子に言って、王子の彼女として王太子に会わせて貰うんだ。え? 狙ってる男に次点の彼氏って言うのはやだ? はは、バカな子だね。君の気持ちなんてどうでもいいからやってよ。約束してくれるなら、王太子が絶対惚れる魔法を掛けてあげる。だから君は王太子を骨抜きにして、彼に姫巫女として擁立させて聖域に入りなよ。そしたら、世界中の美形男は全員君にあげる。……ただし、代償は大きいよ? それはね……』
『え、そんなの絶対あたしやるに決まってるし。難しいのどーでもいいからあたしに魔法掛けてよ!』
なんか彼は意地悪な顔をして何かを言いかけたけど、聞く必要なんてないし。美形逆ハーレムが出来るならそれで十分じゃない。
『はあ、これはまたとんでもないの引いたな……第三王子の側に居たから適当に声掛けたけど。まあいいや、操りやすいし。じゃあ、異性の誰もが自分の好みの人に重ねて君に恋しちゃう、裏返せば、君の事をまともに見る者はいず、誰も君の本心に寄り添う事はない、そんな呪いを掛けちゃいまーす。それが代償。えっ、聞いてないって? でもなー僕らのルールなんだよね。契約者とは誠実にって。さ、これで、君は一生誰にも愛されて誰にも愛されない人間になれたね!! 表面上はモッテモテだよ? 独りぼっちおめでとうっ! あーすごい、こんなに同情しなくていい相手にこの魔法掛けたの初めてだよボク』
早口にまくしたてる相手の話なんて聞いてなかった。
あたしはとにかく誰にでも愛される魔法が欲しかった。
今度こそ誰かに妬まれたりしない、誰にでも愛される女に。それが叶うんだから嬉しかった。
パチパチと幻の拍手の音があたしの頭の中に響く……。
それからはとんとん拍子だった。
王太子は下僕の彼女として会ったらすぐにあたしに恋しちゃったし、その日のうちに悪役令嬢と婚約破棄してくれるって言ってくれた。
後は、ゲーム通りにあの場面であの女の泣きっ面を見るだけだし!!
ざまあっ!!
……って、思ってたのに。
「何であたしが、王太子妃が牢屋に繋がれるんだよっ!」
分厚い鉛のドアを叩くけど、誰も助けに来てくれない。
周りじゅう壁で塞がれてて明かりはちびたろうそく一本で暗いし、おトイレすらまともに出来ないんだよ? それに板きれ一枚の寝床なんてベッドって言えないし。
これってえーと、ジンケンシンガイ? ってやつだよね。
それにさぁ、ここん中に居ると、気持ち悪いんだよ。なんか酔っ払ったみたいにさぁ、頭ぐらぐらして……。
「王太子に会わせなさいよっ、あたしをこんな目に遭わせやがってっ!! お前ら全員斬首だっ!!」
ああむかつく。
何で思い通りにならないんだろ。
あたし、ヒロインなのに……。
そんな時だ。
「あはは、相変わらずだねぇ強欲の塊の娘」
軽妙な少年の声が、確かにしたんだ。
「ああ、あたしの神様! ねえ助けてよ! あたしをここから出して!!」
あたしを王太子妃にしてくれる魔法を掛けてくれた彼の声だ。
あたしはあの日みたいにそうお願いした。
「そうはいかない。君のような死刑囚をその魔力遮断の檻から出したら、それこそ僕たちの関与を疑われてちゃうしさ」
「そんな……じゃあ、自分で出るからまた魔法をちょうだい!」
どこかから聞こえる声に、大きな声で話しかけるあたし。
けれど見張りは気にしない。せいぜい「五月蠅い」 と扉を殴りつけるぐらいだ。
毎日毎晩叫んでたから、どうも今日も喚いてるだけと思ってるみたい。それをいいことに、あたしは彼に話し掛ける。
「あたし、治療魔法とか得意だから! やったことないけど、でも魔法なら使えるもん、多分。だってヒロインだから、きっと魔法で扉なんて吹き飛ばせるよ。だから魔法頂戴! この扉をどうにかすればきっとまた男の人が助けてくれるよ!」
女は何でか言うこと聞かないけど、男の人はみんなあたしの味方だもん。
だから、外にいるむかつく女騎士は男の人に頼ればやっつけてくれると思うんだ。
「うーん、君じゃ無理かなぁ?」
「なんで」
「魅了は持ち前の魔力を垂れ流せばいいだけだから魔法の勉強をしてなくても君のバカ魔力で何とかなったけど、魔法を通さない鉛の扉を開くには、純粋なエネルギー変換が必要だ。つまり、魔力の精密なコントロールによって魔力を力に換え放つ……純エネルギーの攻撃って、基礎にして頂点なんだけど、ど素人の上魔法の基礎も分からない君が出来ると思えない」
「なにそれ、難しいんだけど!」
「うん。だから、バカな君だと無理と言ったよね、ボク」
「ひどい……バカって言った!」
もう、一週間ぐらい誰とも話してなかったから、安心して話せる相手がいるって事もうれしかった。
彼は私とたくさんおしゃべりしてくれた。
「……だからさ、ここからは出せないって」
けれど、最後に言うのは結局それ。
「どうして」
あたしは暗がりで言う。
鉛に囲まれた暗い地下室で。
「どうしてって……ボクらが王都の影で暗躍してますなんて、わざわざ善側に聞かせたくないし。君はそこそこ面白い動きはしてくれたけどさぁ……王都の防衛にこうして穴も開けられたし。そこは感謝するけどそれとこれとは別さ」
「なんで」
「またそれぇ? もう、面倒だなぁ。そろそろ潜入も長引いちゃったし、とりあえず君からはイロイロとボクらが介入した痕跡を消さなきゃなんだ。ボクが君に掛けた魔法とか、ボクの記憶とか、その他もろもろ」
――だから、サヨナラ。
彼がそう言ったら、あたしはまるで眠るように……。
暗闇の中に吸い込まれた。
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