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帰還2

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「俺の方?と言いますと。」
「お前が所属の部署はグリーンヴァルトだと言った。そこの局長はカナタじゃないだろう。レッドウォールの前線まで行けたとして、無事帰って来れる保証は無い。基本的に郵便員はそんな場所まで行く義理は無いんだ。無断で行くのか?」
「あ…、それは…。」
「それは?」
「一度局長と話し合ってみます!!」
「…勝手にしろ。」

ダニエル様の言う通りだ。後先考えずに答えを出していた。涼ちゃんと今のこの場のノリに身を任せ過ぎたんだ。歳上としてあってはならないな、もう少し落ち着かなければ。

「すみません…。」
「はぁ…先が思いやられるな。」

ごもっともだ。


アレンくんから返信用の手紙を受け取り、残りの本日分の郵便を全て配達し終えた。そしてその足で、ヨハン達が待っている宿へと向かった。

「それで、そのアレンくんのお手紙を前線であるアレンパパへとお前と聖女様が届ける、と?」
「そう、なるな。」
「……はぁ……。」
「……。」
「……。」
「……馬鹿だろうお前ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」


キーーーーーーーン


鼓膜が死んだ。
そう悟った。
全力で耳元でヨハンが叫んだのだ。全力で両肩を捕まれ前後に揺さぶられる。脳も揺さぶられるからボードで鍛えられた三半規管と言えど吐きそうだ。そりゃそうだ、俺が彼の立場なら同じ事をする。徴兵されているのだ、騎士団のみでは手が回らないほど疲弊せざるおえない現状なのだ。何も訓練していない、ましてや戦争を味わった事がないもやし。それが前線…自殺行動でしかない。

「馬鹿だろ!!ほんっっつとうに馬鹿だろ!!!そんなにも死にてぇなら俺が一思いに殺ってやろうか!!!」
「ちょ、落ち着いてよー。」
「はなっっせアルフレッド!!このバカを泣くまで殴る!!」
「暴力反対だから。馬鹿なのがもっと馬鹿になる。」
「待ってくれ、俺は馬鹿なのか?」
「違う?」
「え゛。」

待って、アルフレッドからの思わぬ攻撃の方がダメージでかいのだが。俺、そんなにも馬鹿だったのか。

「えっと、この提案をしたのは私なんです!!奏多お兄ちゃんを責めないでください!」
「涼ちゃん…。」

俺の左腕を彼女の折れてしまいそうな細い腕がギュッと力強く絡み、離さない。
因みにその様子をダニエル様が血涙を流しながらご覧になっており、そちらの方もある意味怖くて意識から離れない。

「聖女様のお願いと言えど、奏多は僕達の大切な仲間なんでね。そちらの腐るほどいる貴族様や騎士様とは価値が違うんだ。」
「貴様!!不敬罪にするぞ!!」
「勝手にどーぞ。徴兵を無駄に死にさせてる王国の方が不敬だと思いますけどね。」
「っ!!!!!」
「…アルフレッド、それは言い過ぎだよ。」
「フンッ、僕を怒らせたからいけないんだよ。」

全く、嫌味だとか皮肉ばかりのアルフレッドだ。一度懐に入れてもらえれば何よりも大切にしてくれるのは嬉しいけれど、今回のこの扱いずらい案件にしては相性が悪過ぎる。先程のことも、俺を庇ってくれたのは分かってるんだけど。

「なるべくレッドウォールには魔獣や瘴気が少ない所を通っていきます。許して貰えませんか?」
「確かにここが終われば次はレッドウォールだ。安全圏のな。そこでだ。そもそも、なんでうちの奏多を同行させる。配属先が分かっているんだ、連れていく必要が無いだろう。」
「その…。」
「?」
「私、今日一日で気づいたんです。奏多お兄ちゃんがいたら、力が漲る気がするんです。」
「「……。」」

ヨハン、アルフレッドの瞳が鋭くなったのを俺は見逃さなかった。
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