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帰還4
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「単純な話だ…スズがこの世界に転移してきたからだ。そして、かつての聖女は皆、女性であった。それだけだ。」
「ダニエル様…。」
「今改めて思えば…軽率な行為であったと思う。歴代の聖女…つまりは異世界転移者が全て女性だったからだと、カナタが聖女ではないと決めつけていた。…すまない。」
そういい、ダニエル様は真っ直ぐ俺の方を見据え、そして頭を下げたのだった。
「そ、そんな!!別に俺は謝って欲しいとかじゃ…。」
「いーや、受け取るべきだ。奏多の命を軽んじていたんだ。更にはこの国の希望を捨て去ろうとしたんだからな。」
「そ、それは…確かにそうだな。お前達の言う通りだ。今後はカナタの処遇についても改めさせて頂く、それでいいだろうか?」
「それは…まぁ、はい。」
「…奏多お兄ちゃんは、色んな人に大切にしてもらってたんだね。」
「それは、そう、だね。でも、涼ちゃんもでしょ?」
「…そうだね。大切にはしてもらってたよ。」
悲しげな眼差しが消えない。
【聖女として大切に】という言葉が出てきそうなのを、頑張って堪えているように見えた。空気を読み、グッと飲み込む。そんな健気さが痛々しく見えてしまえたのだった。
「それで、奏多は本当にレッドウォールに行くんだね?」
「聖女様っぽいって判断されたのもあったけど、アレンくんのお父さん達のことも気になるからね…。」
「はぁ…奏多はそういう奴だよ。」
「知ってたけどな。」
「?」
「いい、気にするな。こちらの話だ。…俺達も行く。護衛としてもあるし、レッドウォール宛の手紙もそれなりにあるしな。配達ついでに手伝ってやる。」
「え!!良いのか!!」
「そうでもしないと僕たちの仲間が死んじゃうからね。奏多がいれば僕達の魔力も上がるし、何とかなるでしょ。」
「えへへ。」
「ったく、呑気なやつ。」
どこか期待はしていたんだ。二人が来てくれるって。いままで半年間魔法の練習や仕事のやり方でも無理を言ってた事が何回かあったが、それを何だかんだ二人は手伝ってくれていたのだ。
だから今回も…と期待をしてしまっていた。無理の可能性も当然考えていたけど…。やはり二人は心配して着いてきてくれた。その事実がとても嬉しくて…良い意味でむず痒い。
「ありがとう、二人とも。よろしくな。」
「いーよ、何かしら面倒事を持ってくるのが奏多なのは知ってるから。」
「アルフレッドの言う通りだ。それが奏多だからな。…問題はどうやって局長を説得するかだな。」
「あー…確かに、そっちの方が大変か。」
「そうなの?」
「なんというか…心配性なんだよ。あの人は。」
そう。
俺の事をグリーンヴァルト郵便局に迎え入れくれた人…局長のダイナー・サーラ。
良い人なんだけど…と局のみんなは口を揃えて言われる御方である。間違いなく仕事も出来て良い人なんだけど…。
「残念だなと思っちゃうくらいの、過保護気質なんだよ。」
「過保護…なの?」
「うん、皆のことを自分の子どもだと思ってる。」
「あー…なるほど。何となく理解したよ。」
「ははっ、もしかしたらち涼ちゃんも対象になるかもね。」
「…構えとくね。」
「利口な判断だ。」
「ダニエル様…。」
「今改めて思えば…軽率な行為であったと思う。歴代の聖女…つまりは異世界転移者が全て女性だったからだと、カナタが聖女ではないと決めつけていた。…すまない。」
そういい、ダニエル様は真っ直ぐ俺の方を見据え、そして頭を下げたのだった。
「そ、そんな!!別に俺は謝って欲しいとかじゃ…。」
「いーや、受け取るべきだ。奏多の命を軽んじていたんだ。更にはこの国の希望を捨て去ろうとしたんだからな。」
「そ、それは…確かにそうだな。お前達の言う通りだ。今後はカナタの処遇についても改めさせて頂く、それでいいだろうか?」
「それは…まぁ、はい。」
「…奏多お兄ちゃんは、色んな人に大切にしてもらってたんだね。」
「それは、そう、だね。でも、涼ちゃんもでしょ?」
「…そうだね。大切にはしてもらってたよ。」
悲しげな眼差しが消えない。
【聖女として大切に】という言葉が出てきそうなのを、頑張って堪えているように見えた。空気を読み、グッと飲み込む。そんな健気さが痛々しく見えてしまえたのだった。
「それで、奏多は本当にレッドウォールに行くんだね?」
「聖女様っぽいって判断されたのもあったけど、アレンくんのお父さん達のことも気になるからね…。」
「はぁ…奏多はそういう奴だよ。」
「知ってたけどな。」
「?」
「いい、気にするな。こちらの話だ。…俺達も行く。護衛としてもあるし、レッドウォール宛の手紙もそれなりにあるしな。配達ついでに手伝ってやる。」
「え!!良いのか!!」
「そうでもしないと僕たちの仲間が死んじゃうからね。奏多がいれば僕達の魔力も上がるし、何とかなるでしょ。」
「えへへ。」
「ったく、呑気なやつ。」
どこか期待はしていたんだ。二人が来てくれるって。いままで半年間魔法の練習や仕事のやり方でも無理を言ってた事が何回かあったが、それを何だかんだ二人は手伝ってくれていたのだ。
だから今回も…と期待をしてしまっていた。無理の可能性も当然考えていたけど…。やはり二人は心配して着いてきてくれた。その事実がとても嬉しくて…良い意味でむず痒い。
「ありがとう、二人とも。よろしくな。」
「いーよ、何かしら面倒事を持ってくるのが奏多なのは知ってるから。」
「アルフレッドの言う通りだ。それが奏多だからな。…問題はどうやって局長を説得するかだな。」
「あー…確かに、そっちの方が大変か。」
「そうなの?」
「なんというか…心配性なんだよ。あの人は。」
そう。
俺の事をグリーンヴァルト郵便局に迎え入れくれた人…局長のダイナー・サーラ。
良い人なんだけど…と局のみんなは口を揃えて言われる御方である。間違いなく仕事も出来て良い人なんだけど…。
「残念だなと思っちゃうくらいの、過保護気質なんだよ。」
「過保護…なの?」
「うん、皆のことを自分の子どもだと思ってる。」
「あー…なるほど。何となく理解したよ。」
「ははっ、もしかしたらち涼ちゃんも対象になるかもね。」
「…構えとくね。」
「利口な判断だ。」
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