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出来る事を5
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「お兄ちゃんの魔力を吸うだけじゃなかったの?血まで奪うだなんて聞いてない!!死んじゃうでしょ!!!!」
涼ちゃんは俺の前に盾となってくれているかのように、フェリシアさんから身を呈して護ってくれていた。その姿がお姫様を護る騎士の様でつい見惚れてしまう。
彼女は何時覚えたのか、光魔法を両手に発動させてその掌に何かを顕現させる。
長い柄、その先端に曲線を描いた刃が。
全体的に白く輝いており、月明かりが差し込む部屋に色合いがとてもよく馴染んでいるように思えた。
「大きな…鎌?」
「命を刈り取る形、とイメージしたら出せた!」
「い、命を刈り取る…。涼ちゃん…まさか。」
「任せてって言ったでしょ。お兄ちゃんは魔力の確保と回復に専念してて良いからね。私が、全て終わらせる。」
「…フフっ。あっはははははは!!!!この私の命を刈り取るって事?笑っちゃうわ!!!」
それまで黙って俺達を眺めていたフェリシアさん。いきなり大きな声を出して爆笑している。笑いすぎて目元に光る雫が滲んでいた。
「小娘が、活きがよくて結構ね。まぁ、でもその活きの良さがいつまで持つか見ものだわ。」
「………私だって、やれば出来る。それを証明してみせる。」
「……っ?!!!」
再度鎌を力強く握り直し、身体を低くさげ重心を脚に掛ける。
刹那。
俺自身も何が起きたのか分からなかった。突風が室内全体に吹き荒れ閉ざされていた窓や出入口の扉が大きな音を立てて一斉に開け放たれた。今の音で近くの部屋のものが飛び出してきた声がするが、それどころでは無い。
キィィィィィィィン
金属がぶつかり擦れる。
「っくぅ!!!!」
「浅い!!!!!まだまだ!!!!!」
涼ちゃんの鎌の先端がフェリシアさんの首の後ろ側にあり、そこを切り裂こうとしていたらしいがエルフの彼女の腕がそれを防いでいた。腕には金属性の防具を付けていたらしく、先程の甲高い音はそれが原因だったらしい。
直ぐに涼ちゃんは体制を立て直し、その場にて鎌を下から空へ振り回す。これがきっと攻撃魔法の一環なのだろう、振り回す度に白い斬撃派、だろうかそれが短い間隔で振り出される。全てフェリシアさんへと向かい彼女もまた防御魔法で防いでいる。
「流石は聖女様。やりますね。」
「そう言ってられるのも今の内、だと思うよ。」
「?」
白の聖女様専用ローブがめくれる事も厭わず、地面を蹴りフェリシアさんに突っ込んだ…が、涼ちゃんが音もなく消えた。
「がはっ?!?!」
「こういう事!!!!」
チャリンと、先程とは別の金属音がする。見てみればフェリシアさんの手足に鎖が。膝立ち状態で繋がっていて、身動きが取れ無いみたいだ。
「どこで、こんな魔法…。」
「刈り取るって言ったでしょ、動く相手には止まってもらうしかないじゃん。そう考えたら、これが最適だと思ったの。」
数ヶ月前までは普通のとは少し離れているが、概ね一般的な高校生だった女の子が…。こんな事を平気で為せてしまうなんて。
「小娘がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「っ!!!??!お兄ちゃん!!!」
「涼、ちゃ?!!?!」
涼ちゃんすげぇなとか考えていたら、フェリシアさんが鎖を掴み外そうと躍起になっていた。繋がれている部分が強く擦れてしまっているせいか、手足から血が染み出ている。
だが、ダイナー局長も嫌気を起こすエルフ族だ。まさかのその血液を俺達に飛ばしてきた。きっとこれも俺達が知らない魔法だ。悪い気を察した義妹が俺の方へと飛び込んできた。
思わず俺自身目をつぶってしまったが、耳には何かしら破壊される音が届いた。規模がでかいのか、揺れている。
「んぐっ…。」
「だ、大丈夫か?!?」
「ってて、うん。平気だよ。お兄ちゃんは?」
「す、涼が…涼ちゃんが庇ってくれたから。」
「…おぉ、呼び捨て新鮮だね。ってあれ。」
「言ってる場合じゃないだろ!!!血が!!!」
胸元に飛び込んできたまでは良かったのだが。壁やら床辺りをフェリシアさんの魔法は破壊していたらしく、その破片が瞼の上を切ってしまったみたいだった。
小さな怪我でもこの箇所は血がよく出てしまう。傷の具合は分からないが、俺から見て顔の左側は血塗れだ。…女の子なのに…、傷が残ってしまったらどうするんだ。
「…ごめん。」
「なんで?私は平気だよ!!お兄ちゃんがいる限り私は戦えるよ。」
「そうじゃなくて…、まだまだ未来ある女の子なのに。」
「ふひひ、そこは大丈夫。」
「なにが?」
俺の手のひらを頬に当て、体温を味わってるかのようだった。
「お兄ちゃんといるから私は良いんだよ。次で仕留める。刈り取るよ。」
「なんで…そんな。」
よくよく見たら、彼女の破れたローブの隙間から細かい切り傷が覗いている。出血も所々にあった。こんなにもボロボロだと言うのに、何故ここまでこの子は。
「お兄ちゃん、回復はどこまでいってる?」
「半分くらいは回復、してるけど。」
「そっか、なら大丈夫そうだね。お兄ちゃん。」
「ん?」
黒く、黒曜石の様な瞳が眼前に拡がっていた。深く、星の無い夜の闇のようだ。
先程まで義妹は俺の手のひらと戯れていたが、それとは逆で。今は彼女の細い指先に俺の顔が包まれていたのだった。
「私だけの事を考えてて。」
涼ちゃんは俺の前に盾となってくれているかのように、フェリシアさんから身を呈して護ってくれていた。その姿がお姫様を護る騎士の様でつい見惚れてしまう。
彼女は何時覚えたのか、光魔法を両手に発動させてその掌に何かを顕現させる。
長い柄、その先端に曲線を描いた刃が。
全体的に白く輝いており、月明かりが差し込む部屋に色合いがとてもよく馴染んでいるように思えた。
「大きな…鎌?」
「命を刈り取る形、とイメージしたら出せた!」
「い、命を刈り取る…。涼ちゃん…まさか。」
「任せてって言ったでしょ。お兄ちゃんは魔力の確保と回復に専念してて良いからね。私が、全て終わらせる。」
「…フフっ。あっはははははは!!!!この私の命を刈り取るって事?笑っちゃうわ!!!」
それまで黙って俺達を眺めていたフェリシアさん。いきなり大きな声を出して爆笑している。笑いすぎて目元に光る雫が滲んでいた。
「小娘が、活きがよくて結構ね。まぁ、でもその活きの良さがいつまで持つか見ものだわ。」
「………私だって、やれば出来る。それを証明してみせる。」
「……っ?!!!」
再度鎌を力強く握り直し、身体を低くさげ重心を脚に掛ける。
刹那。
俺自身も何が起きたのか分からなかった。突風が室内全体に吹き荒れ閉ざされていた窓や出入口の扉が大きな音を立てて一斉に開け放たれた。今の音で近くの部屋のものが飛び出してきた声がするが、それどころでは無い。
キィィィィィィィン
金属がぶつかり擦れる。
「っくぅ!!!!」
「浅い!!!!!まだまだ!!!!!」
涼ちゃんの鎌の先端がフェリシアさんの首の後ろ側にあり、そこを切り裂こうとしていたらしいがエルフの彼女の腕がそれを防いでいた。腕には金属性の防具を付けていたらしく、先程の甲高い音はそれが原因だったらしい。
直ぐに涼ちゃんは体制を立て直し、その場にて鎌を下から空へ振り回す。これがきっと攻撃魔法の一環なのだろう、振り回す度に白い斬撃派、だろうかそれが短い間隔で振り出される。全てフェリシアさんへと向かい彼女もまた防御魔法で防いでいる。
「流石は聖女様。やりますね。」
「そう言ってられるのも今の内、だと思うよ。」
「?」
白の聖女様専用ローブがめくれる事も厭わず、地面を蹴りフェリシアさんに突っ込んだ…が、涼ちゃんが音もなく消えた。
「がはっ?!?!」
「こういう事!!!!」
チャリンと、先程とは別の金属音がする。見てみればフェリシアさんの手足に鎖が。膝立ち状態で繋がっていて、身動きが取れ無いみたいだ。
「どこで、こんな魔法…。」
「刈り取るって言ったでしょ、動く相手には止まってもらうしかないじゃん。そう考えたら、これが最適だと思ったの。」
数ヶ月前までは普通のとは少し離れているが、概ね一般的な高校生だった女の子が…。こんな事を平気で為せてしまうなんて。
「小娘がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「っ!!!??!お兄ちゃん!!!」
「涼、ちゃ?!!?!」
涼ちゃんすげぇなとか考えていたら、フェリシアさんが鎖を掴み外そうと躍起になっていた。繋がれている部分が強く擦れてしまっているせいか、手足から血が染み出ている。
だが、ダイナー局長も嫌気を起こすエルフ族だ。まさかのその血液を俺達に飛ばしてきた。きっとこれも俺達が知らない魔法だ。悪い気を察した義妹が俺の方へと飛び込んできた。
思わず俺自身目をつぶってしまったが、耳には何かしら破壊される音が届いた。規模がでかいのか、揺れている。
「んぐっ…。」
「だ、大丈夫か?!?」
「ってて、うん。平気だよ。お兄ちゃんは?」
「す、涼が…涼ちゃんが庇ってくれたから。」
「…おぉ、呼び捨て新鮮だね。ってあれ。」
「言ってる場合じゃないだろ!!!血が!!!」
胸元に飛び込んできたまでは良かったのだが。壁やら床辺りをフェリシアさんの魔法は破壊していたらしく、その破片が瞼の上を切ってしまったみたいだった。
小さな怪我でもこの箇所は血がよく出てしまう。傷の具合は分からないが、俺から見て顔の左側は血塗れだ。…女の子なのに…、傷が残ってしまったらどうするんだ。
「…ごめん。」
「なんで?私は平気だよ!!お兄ちゃんがいる限り私は戦えるよ。」
「そうじゃなくて…、まだまだ未来ある女の子なのに。」
「ふひひ、そこは大丈夫。」
「なにが?」
俺の手のひらを頬に当て、体温を味わってるかのようだった。
「お兄ちゃんといるから私は良いんだよ。次で仕留める。刈り取るよ。」
「なんで…そんな。」
よくよく見たら、彼女の破れたローブの隙間から細かい切り傷が覗いている。出血も所々にあった。こんなにもボロボロだと言うのに、何故ここまでこの子は。
「お兄ちゃん、回復はどこまでいってる?」
「半分くらいは回復、してるけど。」
「そっか、なら大丈夫そうだね。お兄ちゃん。」
「ん?」
黒く、黒曜石の様な瞳が眼前に拡がっていた。深く、星の無い夜の闇のようだ。
先程まで義妹は俺の手のひらと戯れていたが、それとは逆で。今は彼女の細い指先に俺の顔が包まれていたのだった。
「私だけの事を考えてて。」
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