抱きたい。抱かれたい。

Lopeared

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はじまり

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 深い森の奥に響く少女の悲鳴。
その少女に覆い被さる中肉中背の男。

「ヤダ! 止めて! お父さん!」
 
 男は少女の口を押さえ言葉を封じ、空いている方の手で衣服を乱暴に引き裂いていく。
少女は抵抗し塞いでいる手に噛みつくと男はまさぐっていた手を少女のか細い首を掴んで絞めた。
息も吸えず、叫ぶ事もできず空を見つめる少女。

 ーー絶望。

 覆い被さる男は少女の継父、少女の母は娼婦。
だが母は最近客か継父の赤子を妊娠したらしく、今までのようには稼ぐ事はできなくなった。
生きていくにはどうするか……。
継父は当初は少女に体を売らせようとしたが少女の母がそれを許さなかった。

『この子には私のような生き方はさせない』

 妻のあがりで生活している男は妻の機嫌を害うわけにもいかず、だが腹は減る。
赤子が産まれればまた金がかかる……継父は足りない脳を回転させひとつの答えにたどり着いた。

『一人減らせば、俺はそいつの分を食べれる』

 娘と狩りに出かけると見せかけ、始末する。
死体は獣が片付けてくれる一石二鳥だ。
妻には娘が兎を追いかけてどこかに消えてしまった……そう言おう。
深い深い森に。

 花や木の実を集めては継父に微笑む少女。
その笑顔がたまらなく美しく、継父の性欲を刺激した。
始末する前に俺が一人前の女にして天国に連れていってやる、邪な思考がよぎり娘に襲いかかった。


 首を絞められ脳に酸素が届かず意識が朦朧としはじめる少女。
少女のスカートを捲し上げ下着に手をかけずらしてゆく。
生娘の柔肌、白い太もも、毛も生えそろっていない娘の肢体に生唾を飲み込む継父。
その時……。

「お取り込み中失礼します、もし宜しければこれとその娘と交換していただけないでしょうか」

 継父の背後から若い男の声がした。
吐き出したい性欲最高潮の継父は舌うちし男の方に振り替える。
20歩ほど背後に月明かりのようなほのかに輝く銀髪に、今居る森のように深い緑の瞳をしたエルフが1人、小さな袋を2つ掲げて立っていた。

「俺の方が先だ! 後にしな!」
「貴方の手垢がついたものなんて嫌ですよ、……ここに金貨10枚と丘の上に住む公爵夫人が欲しがっている媚薬があります。これを夫人に渡せば貴方が目にした事がない報酬が貰えるでしょう」

 継父に向かって金貨が入った袋を投げつけるエルフ。
重い音を鳴らして落ちた袋を手にしてほくそ笑む継父。

「そっちの袋もよこしな! そしたら娘をくれてやる!」
「とても貴重なものなので投げる訳にはいきません、貴方がこちらまで取りに来て下さい」

 継父は娘からはなれ、むき出しにしていた下半身をズボンにおさめてエルフに近寄る。
 口べらしのために売られる子供たちは多い。
多いと言うことは金貨10枚の価値もない、見目がよくてせいぜい2枚……なければ小麦数袋で売られる。

 捨てる娘が金貨10枚! それ以上になる……継父は上機嫌だ。
エルフから残りの袋をぶんどり中身を確認する。
そこには虹色に輝く5枚の花弁を持つ花が入っていた。
10年に1度、エルフの里でしか咲かない銀水晶の花。
その花を煎じて飲むと異性を虜にする芳香が体から放出すると言う。
エルフの里の入り口はエルフでしかわからない、銀水晶の花を人間が手に入れるのはとても困難なのだ。

「こりゃぁ……まさか……!」
 
 小袋を持つ手が震える継父。

「お察しの通りです、一番高く買ってくれそうな人をお探し下さい……代金には足ると思うのですが?」
「い……いあ、十分でさぁ旦那!」
「では、邪魔者は消えていただけないでしょうか……無粋ですよ」
「こっこりゃぁ、気がつきませんで。……ルーシー良い旦那様が見つかって良かったな! 可愛がってもらえよ!」

 継父は少女のまわりに散らばる狩りの道具と獲物を手にし、そそくさとその場を離れていった。


 絶望、悲しみ、恐怖……いくつもの負の感情がまざり起きる気力さえ失った少女ルーシー……。

『私はこの人に買われたんだ……』

 娼婦の母を持つルーシーは『買われる』と言うことはどういう事なのか子供なりに理解している。
これからエルフに弄ばれる日々が続くのだ……そして飽きたら捨てられる。
母のように。

 エルフは外套を脱ぎ腕に抱えるとルーシーにゆっくり近づいた。
一歩、一歩、近づく落ち葉を踏みしめる音。
エルフの指が少女の頬の涙をぬぐう、知らない異性の接触に体を強ばらせる。
犯される! 脳裏によぎる母の仕事風景。

「……子供には手を出さないよ、体を起こせるかい?」

 安心させるように腕に持った外套をルーシーの肩にかけ、恐怖に震える彼女を抱え歩いていくエルフ。

 少女を買った男。
 エルフに買われた少女。
 これが、二人のはじまり。

 

 ーーそれから10年。
小鳥が囀ずり朝を知らせてから数時間。
仕事が休みなのを理由に昨夜は夜更かしして書物を読みあさり寝坊したエルフの男。
まどろみの中で彼が寝返りをうつと柔らかいものに触れる。
それがあまりにも触りごこちの良いもので、思わずふにふに掴んでしまう。
おおかた脱いだ上着でも掴んだのであろうと寝ぼけた頭で考えていたら、小さなあえぎ声が近くで漏れる。

『……? ベッドは俺一人のはずだ』

 うっすらと瞳を開けると、目の前には金色の髪、細い白い首。
背後をぴったりと彼の前身頃にくっつけて眠っている寝間着姿一枚のルーシーだった。
掴んでいたのは彼女の豊かに育った胸、刺激された事により寝間着ごしから伝わる胸の突起。

「……ん、ん」

 出会ってから10年、大人の女性に育ったルーシー。
無防備な姿に、誘う女体、けだるさから漂う色気。
反応する男の性……。

 今にも起きそうなルーシーから慌てて手をはなし、勃起した下半身とルーシーとの温もりの間に毛布を挟み彼女には知られないように平静を装ってから彼女に声をかける。

「こらっ! ルーシー! また部屋を間違えてるぞっ!」

 声に反応したルーシーはベッドで寝転がったまま軽く背伸びをするとエルフの方を向きニンマリ笑う。

「おはよぉ~セト…………、おやすみぃ……」

 そう言うなりルーシーはセトを抱き枕のように抱え二度寝する。
平常心を装い中の彼に容赦なく押し付けてくる柔胸。
安心しきった寝顔。


『拷問だ……』

 心の中でセトは呟いた。
彼女の頬にかかる髪をのけてからその指をすぅっと下げて行き首筋に触れるとルーシーの眉がよる、くすぐったいのであろう。
その仕草が可愛く、心の中がざわめいていく。
無防備な愛しい娘。

 衝動を抑え込み、ルーシーの頭を抱え込みながらセトは彼女の額に口づけた。
彼女が目覚めるまでそのままで……。

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