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店番
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「いらっしゃいっ! お客さん、何にします~?」
「おや、何であんたが。仕事変えたのかい?」
調剤カウンターで客を迎えるいつもと違う店員に驚く客。
少し猫っ毛の赤毛の短髪、異国の血が混じる褐色の肌に、肉体美を追及しつづけ鍛練を怠らない引き締まった体にほど良くついた筋肉。
セトとは違った美しさを持つ男、ディノッゾ。
「二人して寝坊で……支度できるまで俺が店番中」
「あんただって仕事があるだろうに」
「急ぎの受注はないから、どっちかってぇと暇してる……格安で嫁さんの裸婦画でも描こうか?」
「はっはっはっはっ! バカ言え、あんな脂肪の塊の絵誰が見るってんだよ」
ディノは話術に長けている。
モデル達に良い表情をつくらせるために日頃話しかけているからだ。
「そういあ、あんたここのルーシーとできてるんだってなぁ~昨晩は燃えたかい?」
ゲスな笑みを浮かべる客。
「妄想好きな主婦の噂の一人歩きだよ、旦那。俺は他に好きな人居るからねぇ~ん」
「へぇ、そいつは誰だい」
「これ買ってくれたら教えてやらなくもない」
客の前にずずっと小瓶を差し出すディノッゾ。
小瓶に付いてある値札を見て目を丸くする客。
「銀貨50枚! 出せる訳ないだろっ、何の薬なんだ」
「さぁ……知らない」
『俺の秘密は銀貨50枚じゃ話せないけどな……』
クスリと心の中で笑う。
「すみません、お待たせしました。何をお探しですか?」
風呂上がりでまだ髪が濡れたままのセトが奥から店に入ってきた。
石鹸の香りがディノの鼻をくすぐり、セトの上気した肌に欲望を刺激される。
『やべぇ、押し倒したい』
胃薬と勃起薬を買い求めた客を見送るやいなや、ずいっとセトの前に出てカウンターと両腕で愛しい人を閉じ込める。
何をするんだと怪訝そうな表情の眉間のシワが可愛く感じそこに口づけしようとするディノの鼻先に気付け薬をかざすルーシー。
気付け薬はアンモニアや酢などツンとする強烈な臭いが多い。
袖口で鼻をふさぐ両者。
「いきなり何するんだデカパイ!」
「あんたこそ私のセトに何してくれてるのよっ! はっ! 風呂上がり色気増しましなセトにムラムラしたのね! あ~やだやだ真っ昼間から!」
「ぐっ(図星)」
恋のライバル(?)同士火花を飛ばし合う二人を尻目にカウンターに腰掛け産婦人科系の本に目を通すセト。
植物の知識には長けているのだが、それ以外の知識がまだ乏しい若輩者エルフ。人間の妊娠の事はよくわからないのだ。
『さすがに人狼の子種がどのぐらい女の胎内で生存できるのかなんて記されてないか……、傷の回復力が尋常じゃないからあいつの時の子種は生命力が強いのかもな。ーーそれにしても、満月でもないのに何で衝動にかられたんだろう……リリスの枝に惑わされたルーシーの体液に伝染するフェロモンでも含まれていたんだろうか』
セトが読書に集中すると回りが見えない事を知っているルーシーとディノは一時休戦し訪れる客をあしらう。
客足が途絶えるとルーシーが紅茶を淹れてディノとセトの前に出す。
良い香りに本から紅茶に視線を変えてからルーシーの方に目をやると賑やかコンビが微笑む。
「ありがとう」
「どういたしまして!」
「ディノに言ったんじゃないわよ」
「俺だって店番してるしぃ~」
「あぁ、本当に店番ありがとう。助かったよ」
朝一に店に訪れたディノッゾは最初店内で待っていたのだが中々出てこない二人を心配して昨日ルーシーを看病したセトの部屋に向かったのだ。
昨日ディノが扉を閉めずに出たものだからベッドの上で慌てて服を着ようとしているセトと裸のルーシーを目撃して……そっと扉を閉めて店番をはじめた。
良いやつである。
本に視線を戻すセトを見てからルーシーに話しかける。
「俺はお前と結婚しなくて良くなったんだな」
「うん……」
「親友に寝とられるとわねぇ~。はぁ、セトさんにキスした後にそのまま押し倒しておけば祭りジンクスワンチャンあったのかなぁ~俺にも」
「無い無い、私たちは赤い糸で結ばれてるんだから!」
「裁縫ハサミでそんな糸ちょんぎってやる」
恋敵討論から『セトの素敵ポイント言い合い選手権』に変わり、
爪切りを失敗して深爪したり、読書に集中しすぎて飲み物をこぼしては火傷を負うおっちょこちょいのところ、寝ぼけてボタンをかけ違えるところまで『素敵』に見える『恋は盲目コンビ』の会話は飽くことなく続き……。
ーーこの賑やかで温かい空間に幸福を感じるセトだった。
「おや、何であんたが。仕事変えたのかい?」
調剤カウンターで客を迎えるいつもと違う店員に驚く客。
少し猫っ毛の赤毛の短髪、異国の血が混じる褐色の肌に、肉体美を追及しつづけ鍛練を怠らない引き締まった体にほど良くついた筋肉。
セトとは違った美しさを持つ男、ディノッゾ。
「二人して寝坊で……支度できるまで俺が店番中」
「あんただって仕事があるだろうに」
「急ぎの受注はないから、どっちかってぇと暇してる……格安で嫁さんの裸婦画でも描こうか?」
「はっはっはっはっ! バカ言え、あんな脂肪の塊の絵誰が見るってんだよ」
ディノは話術に長けている。
モデル達に良い表情をつくらせるために日頃話しかけているからだ。
「そういあ、あんたここのルーシーとできてるんだってなぁ~昨晩は燃えたかい?」
ゲスな笑みを浮かべる客。
「妄想好きな主婦の噂の一人歩きだよ、旦那。俺は他に好きな人居るからねぇ~ん」
「へぇ、そいつは誰だい」
「これ買ってくれたら教えてやらなくもない」
客の前にずずっと小瓶を差し出すディノッゾ。
小瓶に付いてある値札を見て目を丸くする客。
「銀貨50枚! 出せる訳ないだろっ、何の薬なんだ」
「さぁ……知らない」
『俺の秘密は銀貨50枚じゃ話せないけどな……』
クスリと心の中で笑う。
「すみません、お待たせしました。何をお探しですか?」
風呂上がりでまだ髪が濡れたままのセトが奥から店に入ってきた。
石鹸の香りがディノの鼻をくすぐり、セトの上気した肌に欲望を刺激される。
『やべぇ、押し倒したい』
胃薬と勃起薬を買い求めた客を見送るやいなや、ずいっとセトの前に出てカウンターと両腕で愛しい人を閉じ込める。
何をするんだと怪訝そうな表情の眉間のシワが可愛く感じそこに口づけしようとするディノの鼻先に気付け薬をかざすルーシー。
気付け薬はアンモニアや酢などツンとする強烈な臭いが多い。
袖口で鼻をふさぐ両者。
「いきなり何するんだデカパイ!」
「あんたこそ私のセトに何してくれてるのよっ! はっ! 風呂上がり色気増しましなセトにムラムラしたのね! あ~やだやだ真っ昼間から!」
「ぐっ(図星)」
恋のライバル(?)同士火花を飛ばし合う二人を尻目にカウンターに腰掛け産婦人科系の本に目を通すセト。
植物の知識には長けているのだが、それ以外の知識がまだ乏しい若輩者エルフ。人間の妊娠の事はよくわからないのだ。
『さすがに人狼の子種がどのぐらい女の胎内で生存できるのかなんて記されてないか……、傷の回復力が尋常じゃないからあいつの時の子種は生命力が強いのかもな。ーーそれにしても、満月でもないのに何で衝動にかられたんだろう……リリスの枝に惑わされたルーシーの体液に伝染するフェロモンでも含まれていたんだろうか』
セトが読書に集中すると回りが見えない事を知っているルーシーとディノは一時休戦し訪れる客をあしらう。
客足が途絶えるとルーシーが紅茶を淹れてディノとセトの前に出す。
良い香りに本から紅茶に視線を変えてからルーシーの方に目をやると賑やかコンビが微笑む。
「ありがとう」
「どういたしまして!」
「ディノに言ったんじゃないわよ」
「俺だって店番してるしぃ~」
「あぁ、本当に店番ありがとう。助かったよ」
朝一に店に訪れたディノッゾは最初店内で待っていたのだが中々出てこない二人を心配して昨日ルーシーを看病したセトの部屋に向かったのだ。
昨日ディノが扉を閉めずに出たものだからベッドの上で慌てて服を着ようとしているセトと裸のルーシーを目撃して……そっと扉を閉めて店番をはじめた。
良いやつである。
本に視線を戻すセトを見てからルーシーに話しかける。
「俺はお前と結婚しなくて良くなったんだな」
「うん……」
「親友に寝とられるとわねぇ~。はぁ、セトさんにキスした後にそのまま押し倒しておけば祭りジンクスワンチャンあったのかなぁ~俺にも」
「無い無い、私たちは赤い糸で結ばれてるんだから!」
「裁縫ハサミでそんな糸ちょんぎってやる」
恋敵討論から『セトの素敵ポイント言い合い選手権』に変わり、
爪切りを失敗して深爪したり、読書に集中しすぎて飲み物をこぼしては火傷を負うおっちょこちょいのところ、寝ぼけてボタンをかけ違えるところまで『素敵』に見える『恋は盲目コンビ』の会話は飽くことなく続き……。
ーーこの賑やかで温かい空間に幸福を感じるセトだった。
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