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18.それぞれの自由
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「リアン先生、お茶会の日なんだが」
ノックの音とほぼ同時にドアが開くと、聞き覚えのある声が部屋に通っていく。
「……失礼した。休んでいる者がいたとは」
先生のもとへ歩み寄りながらベッドの俺に気付くと目を丸くした。
「レイ・リヴニール・リベラシオン?」
ここにいる俺にそんなに食いつかれるとは思わず、びっくりして救護室に入ってきた第二王子殿下に見入ってしまった。
「お前、やはり具合が悪かったのか?」
「え?レイ様?」
その後ろには聖女のアキラもいた。今は“聖女様”と呼ぶように気をつけなくては……
「やはりとは?」
ルーファスが第二王子殿下に詰め寄った。
「ああ、それがお昼は聖女と共にサロンで過ごしていたんだが、聖女を迎えに行くと机に突っ伏して呻いていたのでな……その時は大丈夫と言っていたんだが」
「お昼の時から体調が良くなかったのですか?兄上、辛い時はすぐにでも救護室で休んでください。無理をなさると身体に良くないですから」
ルーファスがまた心配そうな顔を向ける。
おいおい、もうやめてくれ。俺は大丈夫だからもうこれ以上話を大げさに広げないでほしい。
アキラに縋る思いで視線をやるとすっと目を逸らされた。
おいこらアキラ!
危ない、声が出るところだった。今は聖女様だ。ポロリと出ないように気を付けなければ。
「本当にもう大丈夫だから、先生から薬ももらって寝たら良くなったし」
本当の事なんかもう言い出せない。
「そ、そうだ!」
俺の気まずい空気を察知したのかアキラが声を上げる。
「レイ様の弟さん、ルーファス様もお茶会に参加されませんか?」
「「え?」」
俺とルーファスの目が点になってアキラを見る。
「聖女、何を言ってるんだ。弟の方は学園の者ではないんだぞ」
第二王子殿下が珍しくアキラに対し、困惑した様子で話している。
「僕とレイ様は慣れないお茶会なのでルーファス様がいてくれたら、レイ様も安心するのではと思ったんですが……」
おい、俺が参加する体で話を進めるなよ。
「聖女が慣れていないのは理解できるが……その者は公爵家嫡男だぞ?慣れていないなどといった事はないだろう」
普通の公爵家嫡男ならばそうなんでしょうね。
居たたまれずに目線を逸らしてしまう。
「兄上は元々身体が丈夫な方ではないのでお茶会やパーティはほとんど参加していません」
「……ああ、そうか。そういえばそんな事を聞いたことがあったな」
レイの身体ってそんな、弱っちいの?俺的には全然、快適だと思うんだけど。たまに熱出すぐらいで寝てれば治るなんて凄いと感動したもんだけど。風邪なんて以ての外だった前の身体に比べれば遥かにマシだ。ルーファスに比べれば誰だって弱そうだけどな。丈夫な身体じゃない方が社交界なんやらに出なくてすむし、父上とルーファスがその為の設定をしているのかも。記憶ないやつが出て、トンチンカンな事になるより。
なんなら今ベッドの上にいる事が病弱の証明になっているのでは?よし!このままお茶会参加は断ってしまえばアキラも諦めるだろう!
内心ガッツポーズを決める。
決して笑ってはいけない、しおらしく、残念な顔をして断ろう。
「あの、なのでお茶会は」
「それならば、弟の参加も特別に許可しよう」
はっ?
えっ?
第二王子殿下の言葉に遮られ、俺の中で時が止まる。無情にも第二王子殿下は続けて言った。
「体調が芳しくない中、そうまでして慣れないお茶会に参加することを決めたのならば、こちらも協力しよう」
待って!第二王子殿下!参加決めてないよ!
思わずアキラの方へ目を向けると、アキラはニコニコ顔で俺だけに分かるようにお尻の下あたりで拳を握りガッツポーズをしていた。
良かったねって顔してるんじゃないよ!
「あ……ルーファス無理しなくていいから。やる事他にもあるだろうし、ほら父上にも聞いてみないと」
俺はまだ諦めない。やりたくない事には全力投球だ。
「そうですよ。弟君は無理なさらず。公爵家の方でやることもあるでしょうから」
トマスが口を開いた。が、いい予感はしない。
「ここは私がレイ様のサポートをしましょう」
トマス……お前もか……。
誰一人お茶会に出なくていいよって方向に持っていってくれる人は居ないのか。
いや、まだだ。肝心のルーファスが俺がお茶会に出ることを良しと思ってない可能性が高い。ルーファスが理由付けてくれたら俺は全力でそれに応える所存!
「兄上のことは俺が一番分かっている。男爵家子息がしゃしゃり出る幕ではありませんよ。俺が兄上のお茶会に共に出ます」
いや、俺のお茶会じゃないからね?
って出るって言っちゃったね?
ルーファスとトマスのバチバチの視線を何とも言えない不思議そうな顔で第二王子殿下が横目で見ながら口を開いた。
「えーと、じゃあルーファスは特別参加でトマスもレイと数少ない顔見知りだから共に参加って事でいいな?」
「兄上を呼び捨てですか!?」
「そんな怒ることないだろう。兄弟揃ってると分かりにくいし、呼びにくい。意見をまとめただけだ」
「呼び捨てくらい……俺は構わないけど」
「兄上はあんな無体を働いた者にまで優しすぎます!」
お前、不敬で捕まるぞ。
「あの……第二王子殿下……僕も、レイ様と一緒がいいです」
真の目的を切り出したアキラに、そういえばそんな話から始まっていたなと思い出した。
一瞬、第二王子殿下の動きが止まったように見えた。
俺とアキラが一緒にいるのは第二王子殿下にとって不服な事ではある。サロンでのランチは、あの件での事も含めて譲歩した結果だろうし。
「そうだな……お茶会の日は、私も各テーブルに挨拶に回らなければいけないし。考えてはいたんだが……聖女にとって私と一緒に挨拶に回るのは負担だろうと……」
少し目を伏せて話す第二王子殿下の雰囲気に救護室にいる一同が驚愕した。
アキラも同じように感じたのか、第二王子殿下の袖を掴んだ。ほとんど無意識の行動に見えた。
「……挨拶……した方が良いですか?」
アキラの問いに表情が和らぎ、優しく微笑んで第二王子殿下は答えた。
「聖女にとって私と共に回るのは、緊張も大きいだろう。無理強いはしない」
その答えにアキラは何かを言いかけて、キュッと一瞬口を結んだ。
「……ごめんなさい……“した方が良いですか?”なんて言い方したら、して欲しいなんて言えないですよね……」
「聖女が謝る必要はない。我が儘を言えば……私が初めてのお茶会を楽しむ相手になりたかった。それだけだ」
アキラを見つめて微笑みながら語る第二王子殿下は巷で言われる王子様そのもので、ドラマのワンシーンかと思った。こんな王子様が絵本に出てきたら小さいお姫様たちは目がハートになって憧れてしまうな。初恋泥棒め。
そんな第二王子殿下に顔が真っ赤になるアキラ。
「……第二王子殿下とは……何度も二人でお茶を飲んでるじゃないですか」
ふんと鼻を鳴らし袖を掴んだまま、恥ずかしさからか目を背けるアキラは急なツンデレに見えた。
「フッ……そうだな」
俺のお茶会出席という犠牲まで払って
俺達は一体何を見せられてるんでしょうか?
リアン先生の空気に徹した存在感の消し方は、是非俺に教えて欲しい。
ノックの音とほぼ同時にドアが開くと、聞き覚えのある声が部屋に通っていく。
「……失礼した。休んでいる者がいたとは」
先生のもとへ歩み寄りながらベッドの俺に気付くと目を丸くした。
「レイ・リヴニール・リベラシオン?」
ここにいる俺にそんなに食いつかれるとは思わず、びっくりして救護室に入ってきた第二王子殿下に見入ってしまった。
「お前、やはり具合が悪かったのか?」
「え?レイ様?」
その後ろには聖女のアキラもいた。今は“聖女様”と呼ぶように気をつけなくては……
「やはりとは?」
ルーファスが第二王子殿下に詰め寄った。
「ああ、それがお昼は聖女と共にサロンで過ごしていたんだが、聖女を迎えに行くと机に突っ伏して呻いていたのでな……その時は大丈夫と言っていたんだが」
「お昼の時から体調が良くなかったのですか?兄上、辛い時はすぐにでも救護室で休んでください。無理をなさると身体に良くないですから」
ルーファスがまた心配そうな顔を向ける。
おいおい、もうやめてくれ。俺は大丈夫だからもうこれ以上話を大げさに広げないでほしい。
アキラに縋る思いで視線をやるとすっと目を逸らされた。
おいこらアキラ!
危ない、声が出るところだった。今は聖女様だ。ポロリと出ないように気を付けなければ。
「本当にもう大丈夫だから、先生から薬ももらって寝たら良くなったし」
本当の事なんかもう言い出せない。
「そ、そうだ!」
俺の気まずい空気を察知したのかアキラが声を上げる。
「レイ様の弟さん、ルーファス様もお茶会に参加されませんか?」
「「え?」」
俺とルーファスの目が点になってアキラを見る。
「聖女、何を言ってるんだ。弟の方は学園の者ではないんだぞ」
第二王子殿下が珍しくアキラに対し、困惑した様子で話している。
「僕とレイ様は慣れないお茶会なのでルーファス様がいてくれたら、レイ様も安心するのではと思ったんですが……」
おい、俺が参加する体で話を進めるなよ。
「聖女が慣れていないのは理解できるが……その者は公爵家嫡男だぞ?慣れていないなどといった事はないだろう」
普通の公爵家嫡男ならばそうなんでしょうね。
居たたまれずに目線を逸らしてしまう。
「兄上は元々身体が丈夫な方ではないのでお茶会やパーティはほとんど参加していません」
「……ああ、そうか。そういえばそんな事を聞いたことがあったな」
レイの身体ってそんな、弱っちいの?俺的には全然、快適だと思うんだけど。たまに熱出すぐらいで寝てれば治るなんて凄いと感動したもんだけど。風邪なんて以ての外だった前の身体に比べれば遥かにマシだ。ルーファスに比べれば誰だって弱そうだけどな。丈夫な身体じゃない方が社交界なんやらに出なくてすむし、父上とルーファスがその為の設定をしているのかも。記憶ないやつが出て、トンチンカンな事になるより。
なんなら今ベッドの上にいる事が病弱の証明になっているのでは?よし!このままお茶会参加は断ってしまえばアキラも諦めるだろう!
内心ガッツポーズを決める。
決して笑ってはいけない、しおらしく、残念な顔をして断ろう。
「あの、なのでお茶会は」
「それならば、弟の参加も特別に許可しよう」
はっ?
えっ?
第二王子殿下の言葉に遮られ、俺の中で時が止まる。無情にも第二王子殿下は続けて言った。
「体調が芳しくない中、そうまでして慣れないお茶会に参加することを決めたのならば、こちらも協力しよう」
待って!第二王子殿下!参加決めてないよ!
思わずアキラの方へ目を向けると、アキラはニコニコ顔で俺だけに分かるようにお尻の下あたりで拳を握りガッツポーズをしていた。
良かったねって顔してるんじゃないよ!
「あ……ルーファス無理しなくていいから。やる事他にもあるだろうし、ほら父上にも聞いてみないと」
俺はまだ諦めない。やりたくない事には全力投球だ。
「そうですよ。弟君は無理なさらず。公爵家の方でやることもあるでしょうから」
トマスが口を開いた。が、いい予感はしない。
「ここは私がレイ様のサポートをしましょう」
トマス……お前もか……。
誰一人お茶会に出なくていいよって方向に持っていってくれる人は居ないのか。
いや、まだだ。肝心のルーファスが俺がお茶会に出ることを良しと思ってない可能性が高い。ルーファスが理由付けてくれたら俺は全力でそれに応える所存!
「兄上のことは俺が一番分かっている。男爵家子息がしゃしゃり出る幕ではありませんよ。俺が兄上のお茶会に共に出ます」
いや、俺のお茶会じゃないからね?
って出るって言っちゃったね?
ルーファスとトマスのバチバチの視線を何とも言えない不思議そうな顔で第二王子殿下が横目で見ながら口を開いた。
「えーと、じゃあルーファスは特別参加でトマスもレイと数少ない顔見知りだから共に参加って事でいいな?」
「兄上を呼び捨てですか!?」
「そんな怒ることないだろう。兄弟揃ってると分かりにくいし、呼びにくい。意見をまとめただけだ」
「呼び捨てくらい……俺は構わないけど」
「兄上はあんな無体を働いた者にまで優しすぎます!」
お前、不敬で捕まるぞ。
「あの……第二王子殿下……僕も、レイ様と一緒がいいです」
真の目的を切り出したアキラに、そういえばそんな話から始まっていたなと思い出した。
一瞬、第二王子殿下の動きが止まったように見えた。
俺とアキラが一緒にいるのは第二王子殿下にとって不服な事ではある。サロンでのランチは、あの件での事も含めて譲歩した結果だろうし。
「そうだな……お茶会の日は、私も各テーブルに挨拶に回らなければいけないし。考えてはいたんだが……聖女にとって私と一緒に挨拶に回るのは負担だろうと……」
少し目を伏せて話す第二王子殿下の雰囲気に救護室にいる一同が驚愕した。
アキラも同じように感じたのか、第二王子殿下の袖を掴んだ。ほとんど無意識の行動に見えた。
「……挨拶……した方が良いですか?」
アキラの問いに表情が和らぎ、優しく微笑んで第二王子殿下は答えた。
「聖女にとって私と共に回るのは、緊張も大きいだろう。無理強いはしない」
その答えにアキラは何かを言いかけて、キュッと一瞬口を結んだ。
「……ごめんなさい……“した方が良いですか?”なんて言い方したら、して欲しいなんて言えないですよね……」
「聖女が謝る必要はない。我が儘を言えば……私が初めてのお茶会を楽しむ相手になりたかった。それだけだ」
アキラを見つめて微笑みながら語る第二王子殿下は巷で言われる王子様そのもので、ドラマのワンシーンかと思った。こんな王子様が絵本に出てきたら小さいお姫様たちは目がハートになって憧れてしまうな。初恋泥棒め。
そんな第二王子殿下に顔が真っ赤になるアキラ。
「……第二王子殿下とは……何度も二人でお茶を飲んでるじゃないですか」
ふんと鼻を鳴らし袖を掴んだまま、恥ずかしさからか目を背けるアキラは急なツンデレに見えた。
「フッ……そうだな」
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