転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ

文字の大きさ
22 / 25

21.圧倒されすぎてVR気分

しおりを挟む
 嫌な時間というものは、あっという間にやってくる。これが相対性理論でしょうか?知らんけど。

 午前の授業が終わり、午後のお茶会の仕度をする。仕度って言ってもお着替えだけど。学校の一室、きらびやかで豪華なお部屋、ただの着替えにしては広すぎるのではないかと思う。

 「みんな、こんな広い部屋で一人ひとり着替えてるの?」

 「まさか、様々なタイプの部屋がありますよ。家格によって同じ部屋の方たちもいます。うちは公爵家ですからね。兄上が他の人達と一緒に着替えるなんて…………そんなこと、万が一にでも、兄上の肌を見られたりなんてことは絶対にあってはなりません!」

 ルーファスの熱意に、素直にびっくりした。

 警護も兼ねているから、他の人と一緒だと、それなりに気をつけなければならないことが増える。ルーファスの手間的にも、専用部屋のほうが楽なのだろう。

 「着替えくらい、そんなに空間使わないんだし、勿体ない気がしちゃうな」

 そんな考えとは裏腹に本音が飛び出る。
 なんでこっちの言葉が飛び出るかな、俺。

 ルーファスが何か言おうと口を開いたところに、すかさず「俺、着替える!」と遮っておいた。

 公爵家から俺のお仕度用のメイドも連れてきていて、着替える宣言をしたくせにお世話される。介助され慣れてますけどね。

 着替え終わると椅子に座らされ、バサッと首周りに布をかぶせられる。パタパタとお粉が顔の上を舞い、髪の毛をとかれ、何やらグイグイと髪の毛を引っ張られる……介助をされるのは慣れているけど、これは慣れない。目を開けていていいのやら、瞑ったほうがいいのやら。メイドさんを見つめるのも恥ずかしければ、自分の顔を見るのもナルシストみたいで恥ずかしい。結局、ギュッと瞑っていた。

 「兄上、そんなに緊張されなくてもいいんですよ」

 先に仕度を終えていたルーファスが、壁に寄りかかりながら俺に言う。寄りかかり方は腕を組み、少し足をラフにしていて……なんていうか……かっこいい! ズルい!!
 
 いつもの騎士服とは違う服。お茶会のために、ルーファスもおめかししていた。

 ルーファスは黒に近いネイビーのスーツに、上品で優しい黄色のシャツ。ワインレッドのタイ、ポケットからは青い布がチョンと出ている。そして貴族らしいキラキラしたブローチの装飾。服に負けない存在感で、とても似合っている。

 スパダリの具現化かと思うほど様になっていて……なんか……腹が立つ。いつもと違う格好のルーファスってだけで、精神が落ち着かない。
 
 そうこうしているうちに俺の準備はメイドさんの手によって終わったようだ。グイグイ引っ張られていた髪は左側が編み込まれて耳にかけられ、顔がご開帳!って感じだ。女の子のように長くはない髪を、上手に結っていて、メイドさんの腕前ブラボーと心の中で拍手した。
 
 そして俺も貴族らしいキラキラのブローチとそこからジャラっと鎖がぶら下がっているものを付けられて完成だ。

 「では、兄上」

 笑みを浮かべて手を差し出すルーファス。
 そこまではかっこよかった。

 「凄く……凄く……凄く……お似合いです……素敵です……最高です……」

 感無量とばかりに手で顔を覆いながらルーファスは呟いた。

 
 
 お茶会の会場へ足を踏み入れると、庭園の美しさを損なわないように整えられたテーブルに、色とりどりの服を纏った人々が並んでいた。以前の夜に行われた進級パーティーほど華やかではないものの、落ち着いた装いの中に圧倒的な華やかさがある。まるで映画や美術作品を眺めているかのようだ。
 
 「お茶会」って可愛い響きなのに、こんなに大々的で、第二王子殿下が準備に追われていたのも頷ける。
 まるでVRゲームで世界を俯瞰しているような、不思議な感覚。
 俺は呆気に取られていた。VRゲームはやったことないけどね。

 ルーファスに手を引かれて我に返った。
 呆気に取られている間にルーファスは係の人にテーブルの位置を確認していたようだ。
 落ち着かない気持ちを紛らわせるように、ルーファスに話しかけた。

 「公爵家の庭園も立派だけど、こうやってセッティングされてると圧巻だね」

 「……え?そうですか?兄上、綺麗だと感じてますか?」

 思いもよらぬ返しだった。

 どーゆーこと?

 「兄上がそう仰るなら、きっと綺麗なのでしょうね」

 ふわりと甘い笑顔でルーファスは言う。

 ルーファスは綺麗だと思わないのか。感性は人それぞれだから『そう』と言われたらそうなんだろう。
 でも……綺麗なのに綺麗と感じないのは勿体ないとも思う。
 あっ、慣れてるのか。
 ルーファスの感覚の答えが浮かぶ。
 俺だって病室の白い壁や天井を『白くて綺麗だね』と言われたら『え?綺麗だと思う?』ってなると思う。
 なるほど、と一人合点がいく。

 「あちらですよ」

 頭の中で一人解決しているといつの間にか到着した。

 「……もう少し、歩いて堪能したかったな……」

 つい、本音が出る。

 「兄上っ!お茶会なんぞ、いつでも構わないですから俺と散歩をいたしましょう!」

 「いや、お前がお茶会出るって言ったんだろ。散歩こそ、いつでもいいだろ」

 「兄上のお気持ちが最優先ですので」

 そんなわけにもいかないだろ!
 俺のつい出てしまった言葉をそこまで拾ってもらうのは気が引ける。どうにか宥めようとしていると、軽やかな声がかかった。

 「レイ様!同じくらいの時間でしたね」

 アキラだった。そして同時にトマスもやってきた。

 「レイさ……」

 俺の名前を言いかけて爽やかな笑顔のまま、トマスの動きが止まる。
 トマスの目が俺とルーファスの服を交互に見だした。

 「……それ……まさか」

 低く呟いた横でアキラが口を開く。

 「レイ様のその服、素敵ですね。弟さんとタイの色合いも合っていて、仲が良いご兄弟ですね」

 「あっ、これルーファスが用意してくれた衣装の中から選んだんです。俺にはこういったものはよく分からなくて……」

 俺がアキラに返した言葉にトマスの顔がルーファスの方へ向けられる。鋭い目線だった。トマスの笑顔がピキピキと音を立てて崩壊している。

 「君は自分の“象徴色”をレイ様に着せていると理解しているんですよね?………確認しますが、レイ様も同意の上で?」

 「象徴色?」

 俺の心の声と被るようにアキラが言った。
 トマスの様子に、その“象徴色”が穏やかなものではないのかと不安になる。

  「兄上がご自身でお選びになった物をお召しになってます。たまたま……ですが、兄上によく似合ってますよね?たまたまでも、この色を無意識にお選びになるって事です」

 俺はルーファスの袖を引いて、疑問をぶつける。

 「なんのこと?」

 俺の問いにルーファスではなく、トマスが答えた。

 「“象徴色”は“自分の色を誰かに纏わせる”といった意味を持ち、婚約宣言と同義に受け取られます」

 「自分の色?」

 アキラも俺とルーファスの服を交互に見て最後に顔を見て「あっ」と呟いた。
 「レイ様の服の茶色は弟さんの髪の色?タイは目の色?弟さんは、シャツがレイ様の髪の色でレイ様の目の色に寄せたネイビーのジャケットとポケットチーフが青色。……タイの色でお揃いコーデ……」

 アキラに言われて自分の服とルーファスの服や顔を見ると確かに相手の髪の色と目の色の配色だった。

 「レイ様はたまたま選んだとしても、あなたのは確信犯じゃないですか」

 トマスに対してルーファスは不敵に笑う。

 「兄上に俺の色がよく似合ってますよね。兄上の色も俺によく馴染みます」

 婚約宣言って言っても、婚約者候補なんだし問題なくない?
 トマスも3人でお揃いコーデにしたかったってことかな。トマスも同じ婚約者候補なんだし。
 なるほど、怒ってるのはそのせいか。
 のけ者みたいに勝手に2人だけでやるのはやっぱり良くない。

 「ルーファス、ダメだよ。仲間外れとか……かっこ悪いし。ちゃんとトマス様にお伺いしないとでしょ」

 俺は、思わずルーファスを窘める。やっぱり、爪弾きは良くない。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

【8話完結】効率厨の転生魔導師は、あふれ出る魔力を持て余す騎士団長を「自律型・魔力炉」として利用したいだけ

キノア9g
BL
「貴方は私の『生命維持基盤』です。壊れたら困ります」 「ああ、俺もお前なしでは生きていけない……愛している」 (※会話は噛み合っていません) あらすじ 王宮魔導師レイ・オルコットには、前世の記憶がある。 彼の目的はただ一つ。前世の知識(エアコン・冷蔵庫・温水洗浄便座)を再現し、快適な引きこもりライフを送ること。 しかし、それらを動かすには自身の魔力が絶望的に足りなかった。 そんなある日、レイは出会う。 王国の騎士団長にして「歩く天変地異」と恐れられる男、ジークハルトを。 常に魔力暴走の激痛に苦しむ彼を見て、レイは歓喜した。 「なんて燃費の悪い……いや、素晴らしい『自律型・高濃度魔力炉(バッテリー)』だ!」 レイは「治療」と称して彼に触れ、溢れ出る魔力を吸い取って家電を動かすことに成功する。 一方、長年の痛みから解放されたジークハルトは、レイの事務的な接触を「熱烈な求愛」と勘違いし、重すぎる執着を向け始めて――? 【ドライな効率厨魔導師(受) × 愛が重たい魔力過多な騎士団長(攻)】 利害の一致から始まる、勘違いと共依存のハッピーエンドBL。 ※主人公は攻めを「発電所」だと思っていますが、攻めは結婚する気満々です。

王子に彼女を奪われましたが、俺は異世界で竜人に愛されるみたいです?

キノア9g
BL
高校生カップル、突然の異世界召喚――…でも待っていたのは、まさかの「おまけ」扱い!? 平凡な高校生・日当悠真は、人生初の彼女・美咲とともに、ある日いきなり異世界へと召喚される。 しかし「聖女」として歓迎されたのは美咲だけで、悠真はただの「付属品」扱い。あっさりと王宮を追い出されてしまう。 「君、私のコレクションにならないかい?」 そんな声をかけてきたのは、妙にキザで掴みどころのない男――竜人・セレスティンだった。 勢いに巻き込まれるまま、悠真は彼に連れられ、竜人の国へと旅立つことになる。 「コレクション」。その奇妙な言葉の裏にあったのは、セレスティンの不器用で、けれどまっすぐな想い。 触れるたび、悠真の中で何かが静かに、確かに変わり始めていく。 裏切られ、置き去りにされた少年が、異世界で見つける――本当の居場所と、愛のかたち。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

生まれ変わったら俺のことを嫌いなはずの元生徒からの溺愛がとまらない

いいはな
BL
 田舎にある小さな町で魔術を教えている平民のサン。  ひょんなことから貴族の子供に魔術を教えることとなったサンは魔術の天才でありながらも人間味の薄い生徒であるルナに嫌われながらも少しづつ信頼を築いていた。  そんなある日、ルナを狙った暗殺者から身を挺して庇ったサンはそのまま死んでしまうが、目を覚ますと全く違う人物へと生まれ変わっていた。  月日は流れ、15歳となったサンは前世からの夢であった魔術学園へと入学を果たし、そこで国でも随一の魔術師となった元生徒であるルナと再会する。  ルナとは関わらないことを選び、学園生活を謳歌していたサンだったが、次第に人嫌いだと言われていたルナが何故かサンにだけ構ってくるようになりーーー? 魔術の天才だが、受け以外に興味がない攻めと魔術の才能は無いが、人たらしな受けのお話。 ※お話の展開上、一度人が死ぬ描写が含まれます。 ※ハッピーエンドです。 ※基本的に2日に一回のペースで更新予定です。 今連載中の作品が完結したら更新ペースを見直す予定ではありますが、気長に付き合っていただけますと嬉しいです。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

処理中です...