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21.圧倒されすぎてVR気分
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嫌な時間というものは、あっという間にやってくる。これが相対性理論でしょうか?知らんけど。
午前の授業が終わり、午後のお茶会の仕度をする。仕度って言ってもお着替えだけど。学校の一室、きらびやかで豪華なお部屋、ただの着替えにしては広すぎるのではないかと思う。
「みんな、こんな広い部屋で一人ひとり着替えてるの?」
「まさか、様々なタイプの部屋がありますよ。家格によって同じ部屋の方たちもいます。うちは公爵家ですからね。兄上が他の人達と一緒に着替えるなんて…………そんなこと、万が一にでも、兄上の肌を見られたりなんてことは絶対にあってはなりません!」
ルーファスの熱意に、素直にびっくりした。
警護も兼ねているから、他の人と一緒だと、それなりに気をつけなければならないことが増える。ルーファスの手間的にも、専用部屋のほうが楽なのだろう。
「着替えくらい、そんなに空間使わないんだし、勿体ない気がしちゃうな」
そんな考えとは裏腹に本音が飛び出る。
なんでこっちの言葉が飛び出るかな、俺。
ルーファスが何か言おうと口を開いたところに、すかさず「俺、着替える!」と遮っておいた。
公爵家から俺のお仕度用のメイドも連れてきていて、着替える宣言をしたくせにお世話される。介助され慣れてますけどね。
着替え終わると椅子に座らされ、バサッと首周りに布をかぶせられる。パタパタとお粉が顔の上を舞い、髪の毛をとかれ、何やらグイグイと髪の毛を引っ張られる……介助をされるのは慣れているけど、これは慣れない。目を開けていていいのやら、瞑ったほうがいいのやら。メイドさんを見つめるのも恥ずかしければ、自分の顔を見るのもナルシストみたいで恥ずかしい。結局、ギュッと瞑っていた。
「兄上、そんなに緊張されなくてもいいんですよ」
先に仕度を終えていたルーファスが、壁に寄りかかりながら俺に言う。寄りかかり方は腕を組み、少し足をラフにしていて……なんていうか……かっこいい! ズルい!!
いつもの騎士服とは違う服。お茶会のために、ルーファスもおめかししていた。
ルーファスは黒に近いネイビーのスーツに、上品で優しい黄色のシャツ。ワインレッドのタイ、ポケットからは青い布がチョンと出ている。そして貴族らしいキラキラしたブローチの装飾。服に負けない存在感で、とても似合っている。
スパダリの具現化かと思うほど様になっていて……なんか……腹が立つ。いつもと違う格好のルーファスってだけで、精神が落ち着かない。
そうこうしているうちに俺の準備はメイドさんの手によって終わったようだ。グイグイ引っ張られていた髪は左側が編み込まれて耳にかけられ、顔がご開帳!って感じだ。女の子のように長くはない髪を、上手に結っていて、メイドさんの腕前ブラボーと心の中で拍手した。
そして俺も貴族らしいキラキラのブローチとそこからジャラっと鎖がぶら下がっているものを付けられて完成だ。
「では、兄上」
笑みを浮かべて手を差し出すルーファス。
そこまではかっこよかった。
「凄く……凄く……凄く……お似合いです……素敵です……最高です……」
感無量とばかりに手で顔を覆いながらルーファスは呟いた。
お茶会の会場へ足を踏み入れると、庭園の美しさを損なわないように整えられたテーブルに、色とりどりの服を纏った人々が並んでいた。以前の夜に行われた進級パーティーほど華やかではないものの、落ち着いた装いの中に圧倒的な華やかさがある。まるで映画や美術作品を眺めているかのようだ。
「お茶会」って可愛い響きなのに、こんなに大々的で、第二王子殿下が準備に追われていたのも頷ける。
まるでVRゲームで世界を俯瞰しているような、不思議な感覚。
俺は呆気に取られていた。VRゲームはやったことないけどね。
ルーファスに手を引かれて我に返った。
呆気に取られている間にルーファスは係の人にテーブルの位置を確認していたようだ。
落ち着かない気持ちを紛らわせるように、ルーファスに話しかけた。
「公爵家の庭園も立派だけど、こうやってセッティングされてると圧巻だね」
「……え?そうですか?兄上、綺麗だと感じてますか?」
思いもよらぬ返しだった。
どーゆーこと?
「兄上がそう仰るなら、きっと綺麗なのでしょうね」
ふわりと甘い笑顔でルーファスは言う。
ルーファスは綺麗だと思わないのか。感性は人それぞれだから『そう』と言われたらそうなんだろう。
でも……綺麗なのに綺麗と感じないのは勿体ないとも思う。
あっ、慣れてるのか。
ルーファスの感覚の答えが浮かぶ。
俺だって病室の白い壁や天井を『白くて綺麗だね』と言われたら『え?綺麗だと思う?』ってなると思う。
なるほど、と一人合点がいく。
「あちらですよ」
頭の中で一人解決しているといつの間にか到着した。
「……もう少し、歩いて堪能したかったな……」
つい、本音が出る。
「兄上っ!お茶会なんぞ、いつでも構わないですから俺と散歩をいたしましょう!」
「いや、お前がお茶会出るって言ったんだろ。散歩こそ、いつでもいいだろ」
「兄上のお気持ちが最優先ですので」
そんなわけにもいかないだろ!
俺のつい出てしまった言葉をそこまで拾ってもらうのは気が引ける。どうにか宥めようとしていると、軽やかな声がかかった。
「レイ様!同じくらいの時間でしたね」
アキラだった。そして同時にトマスもやってきた。
「レイさ……」
俺の名前を言いかけて爽やかな笑顔のまま、トマスの動きが止まる。
トマスの目が俺とルーファスの服を交互に見だした。
「……それ……まさか」
低く呟いた横でアキラが口を開く。
「レイ様のその服、素敵ですね。弟さんとタイの色合いも合っていて、仲が良いご兄弟ですね」
「あっ、これルーファスが用意してくれた衣装の中から選んだんです。俺にはこういったものはよく分からなくて……」
俺がアキラに返した言葉にトマスの顔がルーファスの方へ向けられる。鋭い目線だった。トマスの笑顔がピキピキと音を立てて崩壊している。
「君は自分の“象徴色”をレイ様に着せていると理解しているんですよね?………確認しますが、レイ様も同意の上で?」
「象徴色?」
俺の心の声と被るようにアキラが言った。
トマスの様子に、その“象徴色”が穏やかなものではないのかと不安になる。
「兄上がご自身でお選びになった物をお召しになってます。たまたま……ですが、兄上によく似合ってますよね?たまたまでも、この色を無意識にお選びになるって事です」
俺はルーファスの袖を引いて、疑問をぶつける。
「なんのこと?」
俺の問いにルーファスではなく、トマスが答えた。
「“象徴色”は“自分の色を誰かに纏わせる”といった意味を持ち、婚約宣言と同義に受け取られます」
「自分の色?」
アキラも俺とルーファスの服を交互に見て最後に顔を見て「あっ」と呟いた。
「レイ様の服の茶色は弟さんの髪の色?タイは目の色?弟さんは、シャツがレイ様の髪の色でレイ様の目の色に寄せたネイビーのジャケットとポケットチーフが青色。……タイの色でお揃いコーデ……」
アキラに言われて自分の服とルーファスの服や顔を見ると確かに相手の髪の色と目の色の配色だった。
「レイ様はたまたま選んだとしても、あなたのは確信犯じゃないですか」
トマスに対してルーファスは不敵に笑う。
「兄上に俺の色がよく似合ってますよね。兄上の色も俺によく馴染みます」
婚約宣言って言っても、婚約者候補なんだし問題なくない?
トマスも3人でお揃いコーデにしたかったってことかな。トマスも同じ婚約者候補なんだし。
なるほど、怒ってるのはそのせいか。
のけ者みたいに勝手に2人だけでやるのはやっぱり良くない。
「ルーファス、ダメだよ。仲間外れとか……かっこ悪いし。ちゃんとトマス様にお伺いしないとでしょ」
俺は、思わずルーファスを窘める。やっぱり、爪弾きは良くない。
午前の授業が終わり、午後のお茶会の仕度をする。仕度って言ってもお着替えだけど。学校の一室、きらびやかで豪華なお部屋、ただの着替えにしては広すぎるのではないかと思う。
「みんな、こんな広い部屋で一人ひとり着替えてるの?」
「まさか、様々なタイプの部屋がありますよ。家格によって同じ部屋の方たちもいます。うちは公爵家ですからね。兄上が他の人達と一緒に着替えるなんて…………そんなこと、万が一にでも、兄上の肌を見られたりなんてことは絶対にあってはなりません!」
ルーファスの熱意に、素直にびっくりした。
警護も兼ねているから、他の人と一緒だと、それなりに気をつけなければならないことが増える。ルーファスの手間的にも、専用部屋のほうが楽なのだろう。
「着替えくらい、そんなに空間使わないんだし、勿体ない気がしちゃうな」
そんな考えとは裏腹に本音が飛び出る。
なんでこっちの言葉が飛び出るかな、俺。
ルーファスが何か言おうと口を開いたところに、すかさず「俺、着替える!」と遮っておいた。
公爵家から俺のお仕度用のメイドも連れてきていて、着替える宣言をしたくせにお世話される。介助され慣れてますけどね。
着替え終わると椅子に座らされ、バサッと首周りに布をかぶせられる。パタパタとお粉が顔の上を舞い、髪の毛をとかれ、何やらグイグイと髪の毛を引っ張られる……介助をされるのは慣れているけど、これは慣れない。目を開けていていいのやら、瞑ったほうがいいのやら。メイドさんを見つめるのも恥ずかしければ、自分の顔を見るのもナルシストみたいで恥ずかしい。結局、ギュッと瞑っていた。
「兄上、そんなに緊張されなくてもいいんですよ」
先に仕度を終えていたルーファスが、壁に寄りかかりながら俺に言う。寄りかかり方は腕を組み、少し足をラフにしていて……なんていうか……かっこいい! ズルい!!
いつもの騎士服とは違う服。お茶会のために、ルーファスもおめかししていた。
ルーファスは黒に近いネイビーのスーツに、上品で優しい黄色のシャツ。ワインレッドのタイ、ポケットからは青い布がチョンと出ている。そして貴族らしいキラキラしたブローチの装飾。服に負けない存在感で、とても似合っている。
スパダリの具現化かと思うほど様になっていて……なんか……腹が立つ。いつもと違う格好のルーファスってだけで、精神が落ち着かない。
そうこうしているうちに俺の準備はメイドさんの手によって終わったようだ。グイグイ引っ張られていた髪は左側が編み込まれて耳にかけられ、顔がご開帳!って感じだ。女の子のように長くはない髪を、上手に結っていて、メイドさんの腕前ブラボーと心の中で拍手した。
そして俺も貴族らしいキラキラのブローチとそこからジャラっと鎖がぶら下がっているものを付けられて完成だ。
「では、兄上」
笑みを浮かべて手を差し出すルーファス。
そこまではかっこよかった。
「凄く……凄く……凄く……お似合いです……素敵です……最高です……」
感無量とばかりに手で顔を覆いながらルーファスは呟いた。
お茶会の会場へ足を踏み入れると、庭園の美しさを損なわないように整えられたテーブルに、色とりどりの服を纏った人々が並んでいた。以前の夜に行われた進級パーティーほど華やかではないものの、落ち着いた装いの中に圧倒的な華やかさがある。まるで映画や美術作品を眺めているかのようだ。
「お茶会」って可愛い響きなのに、こんなに大々的で、第二王子殿下が準備に追われていたのも頷ける。
まるでVRゲームで世界を俯瞰しているような、不思議な感覚。
俺は呆気に取られていた。VRゲームはやったことないけどね。
ルーファスに手を引かれて我に返った。
呆気に取られている間にルーファスは係の人にテーブルの位置を確認していたようだ。
落ち着かない気持ちを紛らわせるように、ルーファスに話しかけた。
「公爵家の庭園も立派だけど、こうやってセッティングされてると圧巻だね」
「……え?そうですか?兄上、綺麗だと感じてますか?」
思いもよらぬ返しだった。
どーゆーこと?
「兄上がそう仰るなら、きっと綺麗なのでしょうね」
ふわりと甘い笑顔でルーファスは言う。
ルーファスは綺麗だと思わないのか。感性は人それぞれだから『そう』と言われたらそうなんだろう。
でも……綺麗なのに綺麗と感じないのは勿体ないとも思う。
あっ、慣れてるのか。
ルーファスの感覚の答えが浮かぶ。
俺だって病室の白い壁や天井を『白くて綺麗だね』と言われたら『え?綺麗だと思う?』ってなると思う。
なるほど、と一人合点がいく。
「あちらですよ」
頭の中で一人解決しているといつの間にか到着した。
「……もう少し、歩いて堪能したかったな……」
つい、本音が出る。
「兄上っ!お茶会なんぞ、いつでも構わないですから俺と散歩をいたしましょう!」
「いや、お前がお茶会出るって言ったんだろ。散歩こそ、いつでもいいだろ」
「兄上のお気持ちが最優先ですので」
そんなわけにもいかないだろ!
俺のつい出てしまった言葉をそこまで拾ってもらうのは気が引ける。どうにか宥めようとしていると、軽やかな声がかかった。
「レイ様!同じくらいの時間でしたね」
アキラだった。そして同時にトマスもやってきた。
「レイさ……」
俺の名前を言いかけて爽やかな笑顔のまま、トマスの動きが止まる。
トマスの目が俺とルーファスの服を交互に見だした。
「……それ……まさか」
低く呟いた横でアキラが口を開く。
「レイ様のその服、素敵ですね。弟さんとタイの色合いも合っていて、仲が良いご兄弟ですね」
「あっ、これルーファスが用意してくれた衣装の中から選んだんです。俺にはこういったものはよく分からなくて……」
俺がアキラに返した言葉にトマスの顔がルーファスの方へ向けられる。鋭い目線だった。トマスの笑顔がピキピキと音を立てて崩壊している。
「君は自分の“象徴色”をレイ様に着せていると理解しているんですよね?………確認しますが、レイ様も同意の上で?」
「象徴色?」
俺の心の声と被るようにアキラが言った。
トマスの様子に、その“象徴色”が穏やかなものではないのかと不安になる。
「兄上がご自身でお選びになった物をお召しになってます。たまたま……ですが、兄上によく似合ってますよね?たまたまでも、この色を無意識にお選びになるって事です」
俺はルーファスの袖を引いて、疑問をぶつける。
「なんのこと?」
俺の問いにルーファスではなく、トマスが答えた。
「“象徴色”は“自分の色を誰かに纏わせる”といった意味を持ち、婚約宣言と同義に受け取られます」
「自分の色?」
アキラも俺とルーファスの服を交互に見て最後に顔を見て「あっ」と呟いた。
「レイ様の服の茶色は弟さんの髪の色?タイは目の色?弟さんは、シャツがレイ様の髪の色でレイ様の目の色に寄せたネイビーのジャケットとポケットチーフが青色。……タイの色でお揃いコーデ……」
アキラに言われて自分の服とルーファスの服や顔を見ると確かに相手の髪の色と目の色の配色だった。
「レイ様はたまたま選んだとしても、あなたのは確信犯じゃないですか」
トマスに対してルーファスは不敵に笑う。
「兄上に俺の色がよく似合ってますよね。兄上の色も俺によく馴染みます」
婚約宣言って言っても、婚約者候補なんだし問題なくない?
トマスも3人でお揃いコーデにしたかったってことかな。トマスも同じ婚約者候補なんだし。
なるほど、怒ってるのはそのせいか。
のけ者みたいに勝手に2人だけでやるのはやっぱり良くない。
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