転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ

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20.やっぱり弟って可愛い

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 家に帰るとルーファスに別室へ呼ばれ、向かうと、そこには色とりどりの衣装が置いてあった。

 「えっ!?なにこれ」

 ルーファスの方へ顔を見やると、ワクワクした顔で幻の尻尾をブンブンさせている。
 
 「兄上のお茶会の衣装を作りましたよ!」
 
 「いやこんなに数いらないでしょ!?それに俺は制服で充分なんだけど」
 
 制服で出席する気満々だったので、着替えるの面倒くさいし、いらないよのアピール顔をルーファスに向けてみる。
 
 「駄目です!兄上は立派に着飾っていただきたいです!着飾ることにより更に兄上の魅力が上がりますよ!着なくても魅力が漏れ出ていて危険ですけどね!でも俺は何でも似合う兄上に色々着ていただいて色々な兄上を見たいんです!」
 
 「なに言ってんだお前は……進級パーティーの時と同じのでいいんじゃないの?」
 
 「駄目ですよ。公爵家がパーティーで同じ服を使い回しなんて。はい、これ着てみてください。俺が手伝いましょうか?」
 
 渡してきた服をひったくってパーテーションの方へ回り着替え始める。
 
 制服はみんな同じの着てますけど……!
 SDGsに反する貴族社会。
 
 「自分で出来るし。……採寸もしなくてピッタリって……俺って成長全然してないのかな?」
 
 何の狂いもないサイズ感にオーダーメイドの凄さを実感する。肩幅もそうだけど、腰回りとか反り具合まで、形が綺麗にぴったりフィット。まるで動きに合わせてくれているみたいだ。生地もお高いからだろうか。
 
 服を着てルーファスの前に出ると、孔雀の羽が広がるがごとく、ルーファスの表情のすべてが弧を描いた。
 
 「何度も兄上に抱きついて兄上の形を覚えました!その衣装良いですね!やっぱり白色は純真無垢な兄上にぴったりです!ところどころに散りばめたサファイアが兄上の目の色と合って最高です!」

 最近、ハグが多いと思っていたのはこの為だったのか……。形を覚えるって……覚えたあと、どうやって伝えるんだ?形を体で作って測ってもらうのか?純真無垢って俺のこと?
 もはや突っ込むところが多すぎて心の中でしか突っ込めない。
 
 次の衣装を持って待機しているルーファスの顔は未だかつてないほどにランランとしている。
 
 「俺この衣装でいいよ」
 
 着替えるのが面倒なので、真っ白な衣装は落ち着かない気もするが、着てしまえば言わばただの服。何でもいいと思っている俺は適当に答えた。
 
 「兄上!頼みます!こっちの衣装も着てください!」
 
 今度の衣装は黒に近い茶色でよく見るとチェック模様が入っているズボンとジャケットに、シャツは青、ネクタイのリボンは朱色といった俺にとっては奇抜なコーデに見える。
 
 さっきからアイドルとか(イケメンに限る)にしか許されないような服ばっかじゃない?
 
 思いのほか着てみるとどの色も落ち着いた上品な色味だからまとまって洗練されたように見える。 
 俺にはできない組み合わせだ。
 
 ルーファスを見ると、弧を描くどころか目の端の方からデロッと溶けていってしまいそうな表情をしている。
 
 「だっ大丈夫か?ルーファス」
 
 「ああああ兄上えええ素敵すぎて目が溶けそうですう」
 
 あまりの感嘆ぶりにくしゃみと笑いが同時に来てしまった。
 
 そのまま容赦なくルーファスに全てかかった。

 「「………………」」

 「ありがとうございます!兄上!」
 
 「なんの礼だよ!!」
 
 ポケットに手を入れてハンカチを出そうとするものの制服を脱いでいたので、当然ながら入っていなかった。
 すかさず、有能なメイドさんがタオルを持ってきたのでそれを受け取りルーファスの顔を拭く。
 
 「ふっふふ……お前……キャラブレすぎ……ははっ」
 
 つい笑いが込み上げてしまって腹筋にも力が入る。
 
 「……俺は兄上とお茶会に出られることに浮かれてるんだと思います」
 
 「へ?ルーファス浮かれてるの?お茶会がそんなに嬉しいの?」
 
 「周りのことはどうでもいいんです。ただ兄上と共に居られるのが嬉しいんです」
 
 「あははっ!それでそんな顔がいつもより垂れ下がってるの?」
 
 ただ手が掛かるだけの兄貴にこんなに懐いてくれるんだな。
 
 「ルーファスは本当に可愛いな」
 
 ルーファスの顔を拭いていたので顔がとても近くて、目が見開いて瞳が揺れたのを見逃さなかった。
 
 「っ……兄上の方が可愛いです!!」
 
 「いや、俺はお兄ちゃんだから弟に可愛いって言われてもなあ」
 
 拭ききれたかな?と思い、タオルを下げようとした時ルーファスに腕を掴まれた。
 先ほどよりも近くに顔を寄せてくる。
 
 「でも今は婚約者候補ですよ。兄上」
 
 「兄弟ってことは変わらないだろ?まだ拭き足りなかったのか?」
 
 ルーファスの眉がガクッと下がったように見えた。
 
 「……無慈悲な兄上も好きですぅ」
 
 「え!?俺が薄情ってこと!?」
 
 「いえ!そんなことないです!好きです兄上!」
 
 勢いよくハグされる。大きい体だから包みこまれたみたいに感じる。
 
 まだ形、覚え足りないのか?
 
 「お前が言ったんだろ。はいはい、ありがとう。俺もルーファスが好きだよ。これお茶会に着るんだろ?汚したら困るよ」
 
 「兄上、これにするんですか?」
 
 「うん」
 
 一着目の真っ白な上下は俺の中でウエディングで着るイメージだし、後はアイドルとかが着るイメージで落ち着かないし。二着目の今のは奇抜な色の組み合わせだとは思うけど、まだ落ち着いていていい。
 
 「他のもありますが!」
 
 「これでいい」
 
 「では、やはり“これがいい”一着を決めましょう!」
 
 「いや!これがいいです!」
 
 思わず挙手をしてしまう。
 
 ルーファスが次の衣装を手に取るから。
 
 「……もっと色々な兄上も拝見したいところですが分かりました。ではこちらで……これで本当に良いんですか?」
 
 「ん?うん。なんで?」
 
 「あっいえ……これは俺の……何でもないです」
 
 何でもないと言いながらもどこか嬉しそうな表情をしている。
 
 そんなに嬉しいのか。俺と出るお茶会が。
 こんな一面初めて見た。可愛いとこあるな。
 
 転生してきた日から一番ルーファスを弟らしくて可愛いと思った日だった。 
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