パラレルワールドで愛を問う

松本ダリア

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第13章 Side 珠喜

第22話 恐怖 前編 *

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※過激な性描写アリ。苦手な方はご注意ください。




深夜0時を回った頃。アタシは横浜駅の近くの路上に座り込んで途方に暮れていた。

(まさか賢弥さんがこの世界に来てしまった理由が奥さんの不倫だなんて……。結婚してたことにもびっくりしたけど……。アタシがこの世界に来た理由を聞いて良い顔はしないだろうと思っていたけどまさか追い出されるなんて……)

「お前の顔はもう見たくない」そう言った時の、怒りに満ちた彼の表情が頭にこびりついて離れない。ただただ、悲しくて胸が苦しくて仕方がなかった。気づいたら涙が溢れていた。

「ううっ……顔も見たくないなんて……ヒドイよ……ううっ」

まるで子供みたいにグズグズと泣き続けた。これからのことなんて何も考えられなかった。今はただ、賢弥さんに嫌われてしまったことが悲しくて辛かった。両手で涙をぬぐいながら顔をぐしゃぐしゃにして泣いているアタシの姿を、通り過ぎて行く人達が不審ふしんな目で見る。

と、その時。目の前で誰かが立ち止まった。男物の大きなスニーカーがふたつ。顔を上げようとすると、二人はしゃがみ込んで声を掛けて来た。

「君、どうしたの?」

「すげぇ泣いてる。引くぐらいな」

アイドル系イケメンの長い金髪の男と、バンド系イケメンの黒髪で癖っ毛の男だった。二人とも20代半ばぐらいで黒いTシャツにデニムというラフな格好。癖っ毛イケメンはギターケースを背負っている。

「えっ……その日本語……?!」

「あ、そうそう。オレ達、元々はあっちの世界の人間だから」

「マジ?!で、でも、何でアタシがあっちの世界の人間だって分かったの?」

「そりゃあ、君があっちの言葉でずっとひとりごと言ってたからね。『もう顔なんて見たくないってヒドイよ~』ってね」

「あっ、そっか……」

すると、癖っ毛イケメンが言った。

「もしかして、彼氏に振られたとか?」

「うん、そんな感じ……」

返事をした途端にまた思い出してしまい、アタシは再び泣き始めた。

「あ~あ!中也ちゅうや、泣かせちゃダメだよ」

「俺のせいじゃねぇし」

「とりあえずさ、あの店に入らない?飲んだらちょっと元気出るかもよ。オレ達がおごるし。良ければ君の話聞くよ」

「あ、ありがとう~!!」

――――――

アタシは泣きじゃくりながらこれまでのことを洗いざらい話し、賢弥さんの愚痴を一気にぶちまけた。初対面の人にこんなに自分をさらけ出したのは生まれて初めてかもしれない。それだけアタシは切羽詰まっていた。二人は真剣に話を聞いてなぐさめてくれた。おかげでだいぶ落ち着きを取り戻した。

「そのおっさん、マジ酷くね?ブン殴りてぇ」

「事情も聞かずに一方的に怒るなんて……ホント付き合わなくて正解だよ、珠喜ちゃん」

「だよね?!奥さんと友達のことクズとか言うけど他人ひとのこと言えんのか!ってね!」

そう言いながらビールを飲み、改めて二人の顔を見た。そこでアタシは首を傾げた。

「あれ……?二人ともなんか見たことあるんだけど。どっかで会ったっけ?」

二人は顔を見合わせると得意げな表情を浮かべた。

「オレ達バンドやってるんだよ。まだインディーズなんだけどね。もしかして珠喜ちゃん、オレ達のライブ観たことあったりする?」

「えっ?バンド……?」

必死に考えを巡らせ、賢弥さんに見せてもらったバンドのライブ映像を思い出した。

「ああー!もしかしてウルフロック?!」

「当たり。やっぱり見たことあったんだね」

「うん。賢弥さんにライブ映像を見せてもらったんだ。言葉はわかんないけどかっこいいなぁって思ってたよ」

「おっさん、ウゼエ奴かと思ってたけどなかなかやるじゃねぇか」

「確かにね。あっ、オレはボーカルの安吾あんご。こっちの癖っ毛は中也ちゃうや。ギターね」

「そっかー!号泣してて気づかなかったよ。他の人は?確か4人だったよね?」

「うん。ベースとドラムはもう帰ったよ。オレ達さっきまでスタジオで練習してたんだ。帰りに中也とご飯食べようかってこの辺りウロウロしてて」

「そうしたらお前が引くぐらい泣きじゃくってたから気になって声かけたってワケ」

中也がタバコを吸いながら半笑いで言った。途端に申し訳ない気持ちが込み上げて来て、手に持っていたジョッキをテーブルに置いて言った。

「そ、そうだったんだ……邪魔してごめんなさい」

「大丈夫だよ。どうせ暇してたしね」

「二人はこの世界に来て長いの?」

「う~ん。5年ぐらいかな?ねぇ、中也?」

「ああ」

「5年か~!長いね!賢弥さんには負けるけど」

アタシはそう言いながらビールを飲み干した。

「おいおい。お前、そんなに飲んで平気なのかよ?もう6杯目だろ?」

「大丈夫、大丈夫~!だってアタシ、お酒には強いから!」

と、言いながらも体に少しの違和感を覚えていた。眠気がジワジワと忍び寄って来る感じがして、いつもより酔いが回るのが早い気がした。

「そっか。じゃあ、もう少し飲んだらいいじゃん」

安吾はニコニコ笑いながらレモンサワーを飲み、ビールジョッキをもうひとつ注文した。その時、中也の手元にコーラが置いてあることに気づいた。

「あれ?中也は飲まないの?」

「ああ、俺は車の運転があるから。コーラでいい」

「へぇ~エラいね!」

中也は殆ど表情が変わらない。安吾は常にニコニコしている。何とも両極端りょうきょくたんな二人だった。

「お待たせ致しました、ビールです」

「はいはーい!」

アタシは店員からジョッキを受け取ると、グイグイと飲み始めた。

「珠喜ちゃん、良い飲みっぷりだね!どんどん飲みなよ!」

安吾は嬉しそうにアタシの背中を優しく叩いた。その時、安吾と中也が何も言わずに目配せをした。少し不思議に思いながらも気にせずビールを口に運び、あっという間に7杯目を飲み干した。体が熱くて頭がクラクラする。けど、とても良い気持ち。気がついたらさっきまでのの感情はすっかり消え去っていた。隣の安吾、目の前に座っている中也に向かってアタシは頭を下げた。

「あんご、ちゅーや、ふらりとも、ほんろーにありがろう!」

「何言ってんのかわかんねぇ」

「珠喜ちゃん、呂律ろれつが回ってないよ!もう酔っちゃったの?」

「ええ?そんらことらいよ~!まらいけるお~!」

アタシはガッツポーズを作ってみせた。その時、ジワジワと忍び寄っていた眠気が一気に襲って来た。

「あれ?ふらりのかお、ぼやけてみえる……」

「おいおい、ここで寝んなよ」

「えっちょっと!珠喜ちゃん!しっかり!」

そこでアタシの記憶は途絶とだえた。

――――――

全身に違和感を覚えて目を覚ました直後、目の前に広がる信じられない光景にアタシは大きなショックを受けた。

Tシャツをたくし上げ、下着をずらし、両の膨らみに顔を埋める安吾。アタシの両手を頭の上で固定し、物欲しそうな表情を浮かべてこちらを見下ろしている中也。二人とも上半身裸だった。すぐに自分が置かれている状況を把握して絶望的な気持ちになった。

「い、いや、やめて!」

力の限り抵抗しようとするも体が動かない。中也に両手を固定され、安吾が跨っているからだ。それだけじゃない。体がとてもダルい。頭がクラクラする。

(いつもはビール7杯なんて全然平気なのに……)

そこでアタシは気づいた。意識がなくなる直前に急に押し寄せて来た眠気の正体に。

「まさか……睡眠薬?ビールに入れたの?」

中也がニヤリと笑った。

「ようやく気づいたか」

「遅いよ、珠喜ちゃん。もっと用心しなきゃ」

アタシの胸元から顔を上げ、安吾が言った。相変わらずニコニコしているけど、その目はまるで獲物を前にした獣のようにギラついていた。それに、二人とも凄く手慣れている感じがする。初対面の女を襲うことに全く迷いがない。そこで賢弥さんの言葉を思い出した。一気に不安が押し寄せる。

「もしかして、連続暴行事件の犯人って……」

すると、安吾がアタシの唇を人差し指で制した。

「おっと。それ以上の詮索せんさくはなしだよ」

ニコリと笑ってアタシの唇を自身の唇で塞いだ。舌先をじ込み、むさぼるように口の中を荒らされた。息ができなくて、彼の唇から逃れようと必死に足掻あがいた。

「んんっ、はぁっ」

「抵抗しても無駄だぜ」

中也がクックックっと楽しそうに笑った。さっきまでほとんど表情を変えなかったのに。これが彼の本性ほんしょうなのかもしれない。安吾はアタシの頬を優しく両手で包み込みながら何度も濃厚なキスを繰り返すと、次にその両手を胸元に伸ばした。ゆっくりと膨らみを揉みしだき、アタシの耳元にそっと息を吹きかけた。

「あぁん……っ」

「珠喜ちゃん、良い顔してるね……」

安吾はうっとりした顔でアタシの頬を撫でながら言った。きたえているのか二人とも筋肉質な体をしていて、腕や肩にタトゥーが沢山入っていた。ファンの子ならかっこいいと思ったり、ドキドキするのかもしれない。でも、アタシは何も感じなかった。ただ悲しくて悔しかった。

好きでもない人に体を触られ、反応して、喘いでしまうなんて……。体に触れて欲しいのは奴らじゃない。途端に涙が込み上げて来た。同時にあまりにも無防備で不用心だった自分に腹が立った。

「お願いもうやめて……っ!」

「何で?お楽しみはこれからなのに。珠喜ちゃんだって、今気持ち良さそうにしてたじゃない」

安吾は笑顔でそう言いながらアタシの膨らみの先端をキュッと摘んだ。

「やぁん!」

「ほら、ここ、気持ちいいんでしょ?」

安吾はアタシの首筋にキスをしながら両手で突起を愛撫した。心の中は嫌悪感と悲しみ、悔しさでいっぱいなのに体はますます敏感になる。

「い、いやぁ……はぁん、い、いや……いやぁ」

アタシは必死に首を横に振って抵抗した。涙が次から次に溢れて来る。

「安吾、お前だけズルいぞ。そろそろ俺にもやらせろ」

「分かった、分かった。じゃ、交代な」

安吾と中也は場所を交代し、安吾がアタシの両手を掴んだ。中也はスカートをめくると両足をくの字に曲げて開かせた。

「すげえ濡れてんぞ。嫌がってたんじゃねぇのかよ」

ニヤリと笑ってアタシの敏感な場所を下着の上から指でなぞった。途端にゾクゾクするような快感が押し寄せる。

「あぁんっ!」

中也は楽しそうに舌をペロッと舐めると、下着を一気にぎ取った。

「ちょ、何すんの?!」

「俺、舐めんの好きなんだよな」

その瞬間、敏感な場所にザラついた舌の感触を感じた。疼くような甘い刺激が体中に広がる。声を必死に押し殺して、何とか押し寄せる快感に耐えようとした。

「あっ、んんっ……くっ……はぁっ」

あまりの快感に閉じた唇の隙間からどうしても声が漏れてしまう。そんなアタシの顔を、うっとりした表情を浮かべながら安吾が上から見下ろしていた。

「顔真っ赤にして……そんなに気持ちいいなら声出しなよ」

安吾は片手でアタシの両手を固定したまま、もう片方の手でアタシの膨らみを愛撫した。先端を摘まれ、挟み込まれ、くりくりと弄り回される。両腿の間の敏感な場所は、溢れ出る蜜を絡めながら舌先で濃厚に舐め回される。二人の違う男の手で同時に二箇所を攻められ、アタシの体はみるみる内に熱と疼きを増していった。身をよじり、何とかあらがおうとするも全く歯が立たない。それどころか、唇の隙間から声にならない声が漏れてしまう。

「あぁっ、ダ、ダメ……うぅん、はぁっ、いやぁ」

こんな卑怯な手口に屈するものかと思ったけど、押し寄せる激しい波のような快感にとうとう耐え切れなくなってしまった。

「いやぁ、ダ、ダメ……あぁんんん~~!!」

アタシが身をよじりながら果てるのを安吾と中也は楽しそうな表情で見ていた。

「珠喜ちゃん、最高だよ……」

「すげぇエロかったな」

アタシは肩で息をしながら二人をにらみ付け、力の限り叫んだ。

「クズなのは賢弥さんじゃない……あんた達だ!」

すると、中也が吐き捨てるように言った。

「不倫してるお前に言われたくねぇよ」

「な……わ、分かってくれたんじゃなかったの?」

「悪いけど、君の気持ちなんて分からないな。っていうか、君の事情なんてどうでもいい」

「いいカモがいる、そう思っただけ。だろ?安吾」

中也は賛同するようにそう言った。安吾はアタシの唇にキスをすると、アタシの頬や髪を撫でながら言った。

「そうだね。珠喜ちゃん、君は可愛い。それに……凄くエロい」

「そそるよな」

中也がそう言って、アタシの両足から両腿にかけて手を滑らせた。体がピクンと跳ねる。

「オレ達を惑わせた君がいけないんだからね」

安吾は強気な表情でそう言うと、足元にいる中也に目配せをした。その時、とてつもなく嫌な予感がした。
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