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第13章 Side 珠喜
第23話 恐怖 後編 *
しおりを挟む※過激な性描写アリ。苦手な方はご注意ください。
中也は再びアタシの両足をくの字に曲げて開かせると、安吾と場所を交代した。安吾はベルトに手を掛け、デニムを脱ぎ始めた。それまでの優しい笑顔からは打って変わってニヤニヤと下品な笑みを浮かべる安吾。血の気が引き、恐怖で全身が震える。アタシは首を横に振って叫んだ。
「……い、いや!お願いやめて!」
力の限り手足を動かしたけど、二人にがっしりと掴まれ、全く動けない。
「騒ぐんじゃねぇよ。外に聞こえんだろ」
中也が片手でアタシの口を塞いだ。息苦しさを感じ、目を瞑って首を横に振った。
「ここ、中也の家なんだよ。騒がれて警察呼ばれると困るんだよね。頼むから静かにしててくれる?」
今まで常に笑顔だった安吾が顔を歪め、アタシを見下ろしながら鋭い口調で言った。
(これが安吾の本性……主犯格はたぶんこいつ、中也は従ってるだけ。優しい笑顔で女の子を誘って騙して、自分が一番楽しむつもりだ)
絶望的な気持ちになった。今この瞬間に巨大な地震でも起きない限り、間違いなく奴らに犯される。時間を巻き戻したいと強く思った。アタシがこいつらに騙されなければこんな事にはならなかったのだ。その前にアタシが賢弥さんを怒らせなければ……。どんなに悔やんでももう遅い。悔しくて悲しくて大粒の涙が溢れた。
(何これ、不倫した罰?アタシはただ寂しかっただけ……)
その時、両腿の付け根に物凄い圧迫感を感じた。硬くて大きな何かを無理矢理、捩じ込まれている感覚。しかも、それは妙に生暖かい。自分の中に入って来たそれが一体何なのか、アタシはすぐに理解した。心の中が絶望感でいっぱいになった。上手く息が出来ず、涙が止まらなかった。
「んんっ!うぅっ……!」
中也の手で口を塞がれているせいで、嫌だ!やめて!抜いて!と、必死に訴えっても全く言葉にならない。
「あぁ……珠喜ちゃんの中、あったかくて気持ちいいよ……やっぱり生でするのは良いな……っ」
涙を流して自分を睨み付けるアタシの顔を安吾は楽しそうに見下ろし、うっとりした表情を浮かべた。彼が腰の動きを速めると、痛みにも似た快感が大きくなり、アタシは首を横に振った。
(こんなに悲しくて悔しいのに体は反応してる……もう嫌……いっそのこと誰か殺して……避妊しなさいっていうお母さんとの約束守れなかった……こんな奴らに簡単に騙されたアタシが悪い……ごめんね、お母さん……)
その時、ふと脳裏に賢弥さんの姿が浮かんだ。途端に胸が苦しくて、とても切ない気持ちになった。
(ああ、これが賢弥さんだったら……アタシを思い切り抱いて、愛してるって言ってくれたらどんなに……。今更もう遅い……もう彼はアタシのことなんて……)
「うぅっ、けんや……さん……」
中也の手に塞がれた唇の隙間から微かに漏れたその言葉に、中也と安吾はニヤリと笑った。
「今更?さっきは散々悪口言ってたのにね」
「諦め悪いな、お前」
と、その時だった。ピンポーン、と突然間の抜けたインターホンの音が響いた。安吾はびっくりして動きを止めた。
「……チッ。誰だよこんな時間に。しかも、いいとこだってのに。中也、見て来てくれる?」
安吾がアタシの両手を掴みながら言った。中也は手を離しながら面倒臭そうに「ああ」と言って、玄関へ駆けて行った。アタシの位置からは曇りガラスの扉を隔てて玄関口が見える。シルエットだけじゃ誰が来たのかまでは分からない。けど、とにかく助けを求めなきゃ、そう思った。首を横にして、曇りガラスの向こう側をじっと見つめると安吾がアタシの顎を掴んで戻した。
「助けを求めようって考えても無駄だよ」
ニヤリと笑ってアタシの唇を自身の唇で塞いだ。
「んんっ!」
濃厚なキスを受けながら聴覚を研ぎ澄ませていると、中也が玄関の扉を開ける音がした。
中也がこの世界の言葉で何か話しかけている。中也の言葉に訪問者が答えた。その声に思わず鳥肌が立った。低くてちょっとだけぶっきらぼうなその声……。聞き間違うはずがない。それは、この13日間アタシが恋した、今一番聞きたかった人の声だった。アタシは思い切り安吾の舌を噛んだ。
「痛っ!」
安吾はびっくりして口から血を流し、睨んだ。アタシは力の限り叫んだ。曇りガラスの向こう側のその人に届くように。
「賢弥さん!助けて!」
その瞬間、玄関口で鈍い音がした。曇りガラスの向こうのシルエットがこちらに背を向けている中也を殴り付けたのだ。衝撃で中也が声を上げ、床に倒れ込んだ。
「ぐはっ!」
ガラス扉が勢いよく開けられた。
「……珠喜!」
賢弥さんは驚きと衝撃が入り混じったような表情を浮かべた後、アタシの上に跨っている安吾の顔面を思い切り殴った。安吾はその衝撃でベッドから落下した。
「珠喜……俺の所為だ。本当にすまない……」
アタシの体を強く抱き締め、そう言った賢弥さんの声は今にも泣き出しそうだった。彼のこんな声を聞いたのは初めてだった。すると、いつの間に下着を履いたのか、唇から滴る血を拭いながら安吾が言った。
「あんたが『賢弥さん』か。話は全部聞いたよ。あんた、クズ男なんだってね」
バカにしたように安吾はフハハと笑った。
「うるせぇ。お前らの方がよほどクズだろ。珠喜にこんなことしやがって……!」
その時、改めて安吾の顔を見た賢弥さんがハッとした。
「お前、どこかで見たことあると思ったら……ウルフロックのボーカルか?」
「当たり。おじさん、結構オレらのライブ見てくれてるんだね」
安吾はニコニコと笑いながらガラス扉の方に目をやった。そこには中也が立っていた。賢弥さんに殴られた頬は腫れ、唇から血を流し、手には包丁を持っていた。
「きゃあっ!」
賢弥さんは咄嗟に自分の後ろ手にアタシを隠した。
「おっさん、よくも殴ってくれたな」
「……手に持つもの間違えてねぇか?お前はギターだろ?」
「……チッ。うっせえな」
「中也、早くやれよ」
いつまでも動かない中也に腹が立ったのか安吾がイライラしながら言った。
「ったく、しゃーねぇ。んじゃ、覚悟しろよ、おっさん」
中也は包丁を両手に持ち、顔を歪めて賢弥さんとアタシ目掛けて襲いかかってきた。と、その時だった。
勢いよく玄関の扉が開いた。朝の眩しい光と共にスーツにネクタイをしめた大勢の男性が、銃を構えながらドヤドヤと中に入って来た。この世界の言葉で何かを叫んだ瞬間、安吾は唖然とした顔をして固まり、中也はすぐに包丁を手放して、両手を上げた。包丁が床に落下した瞬間、緊迫した部屋の中に鈍い音が響き渡った。
「警察……?何で……?」
手錠をはめられながら、信じられない、という顔で安吾がアタシと賢弥さんを交互に見た。賢弥さんはフッと鼻で笑うと言った。
「俺が通報したんだよ」
「……何でここが分かったんだ?」
「珠喜のスマホのGPSだ。俺がスマホの位置を確認した時、GPSは横浜駅前の飲み屋を指してた。で、急いで店に行ったら泥酔して眠り込んだお前を二人組の男が連れてったって店員が言うからおかしいと思ってな。GPSを追ってここまで来たって訳だ」
安吾は舌打ちをすると目を逸らした。その後、安吾と中也は警察に連行された。アタシと賢弥さんも事情聴取を受けるため、警察に連れて行かれた。
その間、何度も賢弥さんから視線を感じた。アタシを気遣ってくれているのだ。でも、声を掛けられることはなかった。たぶん、アタシがずっと賢弥さんから顔を背けているからだ。目を合わせたら、彼はきっとまた「すまなかった」と言うに違いない。今のアタシにとってそれが何よりも辛かった。
(違う……賢弥さんは何も悪くない……こうなったのは全部、全部……アタシのせいなんだから……)
パトカーの窓から見える観覧車が朝陽に染まる。それはいつもよりも眩しく見えた。悲しくて悔しくて腹立たしくて泣きたい気持ちだった。でも、涙は一滴も出なかった。
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