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第8話 肌を重ねて *
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暁子が北翔の検査を行っている間、彗は誰もいない会議室に移動してパソコンを開いた。父親に北翔の存在を他言してはならないと言われたので、北翔を迂闊に部屋から出せないのだ。その為、暁子と彗は検査の為の機材をコソコソしながら彗の研究室に運んだのだった。
彗は紅茶を飲みながら、3年前の宇宙船墜落事故について検索した。しかし、そこには乗客についての詳しい情報は殆ど掲載されていなかった。個人情報に当たるということもあるが、宇宙船に乗り込む時の激しい争いで乗客のことを正確に把握することが出来なかったからだ。
彗はため息を吐いた。
「……宇宙船の運行会社に直接問い合わせるしかないか」
何か少しでも手がかりがないかとしばらくの間、検索を続けた。マグカップの紅茶が空になる頃、会議室に暁子が入って来た。
「検査は終わったよ。特に異常は見当たらない。健康的な身体だ。きっと子供も産めるだろうね」
「そうなんですか。良かった……!」
彗は椅子から立ち上がると嬉しそうな笑みを浮かべ、ホッと胸を撫で下ろした。
「ところで、彗。あんたは……」
暁子はそう言いかけて咄嗟に口を閉ざした。
「えっ?何ですか?」
彗とイオの様子を密かに伺っていた人物、それは暁子だった。彼女が偶然、医務室の前を通りがかった時、イオの泣き声と彼女をなだめる彗の声が扉の向こうから聞こえてきたのだ。ただならぬ様子の二人が心配になり、暁子はしばらくの間その場に留まって様子を伺った。しかし、彗がイオに告白をした時、この先を聞いてはいけない、直感的にそう思った。急いでその場を離れたものの、二人がどうなったのか気になって仕方がなかった。
(イオとどうなったのか聞くのはさすがにマズイかねぇ。最後まで聞いた訳じゃないが、盗み聞きしていたことには変わりはないし……)
迷った末、暁子は首を振った。
「……いや、何でもないよ」
そして再び口を開くと言った。
「ああ、そうだ。北翔があんたを待ってるよ。やって欲しいことがあるんだってさ」
「やって欲しいこと……僕にですか?」
「そうさ。だから、早く行ってやりな。それにしてもあんた、あの子に相当好かれてるね。一体どんな風に介抱してあげたのか、気になって仕方ないよ」
「ど、どんな風にって……」
暁子の言葉に彗は思わず、裸になって暖めたことを思い出した。顔が一気に赤くなる。
「彗?顔が赤いじゃないか、どうしたんだい?」
「な、な、何でもありません。えーっと、検査ありがとうございました!また何かあったらよろしくお願いしますね!」
彗は慌ててそう言うと、パソコンとマグカップを持って逃げるように会議室を出た。
「おかしな子だねぇ」
暁子は首を傾げたのだった。研究室に入ると北翔がベッドに座ったまま彗の顔を見た。そして、ぽつりと呟いた。
「……何か、顔赤い」
「えっ?そ、そんなことないよ。そ、それより!宵月先生から聞いたよ。僕にやって欲しいことがあるんだよね?」
必死に冷静さを装って彗は言った。すると突然、北翔は検査着の前ボタンを外しながらとんでもないことを言い出した。
「……彗。また暖めて?」
彗は一瞬、何を言われているのか理解出来なかった。
「……えっ?」
戸惑っている内に北翔は検査着を全て脱ぎ捨て、下着姿になった。そして、ベッドに横たわると彗を見つめながら胸元の下着に手を掛け、ゆっくりと外した。雪のような白い肌、美しい形をした膨らみが露わになった。
彼女の一連の動作には全く迷いがなく、滑らかで微かな色気を醸し出していた。その色気に彗の胸が高鳴り、一気に顔が熱くなった。彗はハッとすると慌てて声を上げた。
「ちょ、ちょっと待って!まだ何も言ってないのに!何で服脱いでるの?!」
「だって、またして欲しいから」
「き、気持ちは分かったけど……っていうか服着たままでも出来るでしょ?!」
すると、北翔は少しだけ口調を強めて言った。
「だって……あの時の彗、とても暖かった。心地良かったから」
そして、彗の方へ体を向けると手を差し伸べて言った。
「ホラ、早く来て」
頬に落ちる白い髪の毛、美しい膨らみと谷間、秘部を覆い隠すレースの付いた純白の下着。そして、彗を真っ直ぐに見つめる純粋な瞳。彗は胸の高鳴りを抑えることができず、思わず白衣の胸元をぎゅっと掴んだ。
(ど、ど、どうしよう……こんな姿で、こんな目で言われたら僕……また理性を保てる自信が……いやいや!彼女はただ、暖めて欲しいって言ってるだけだ!べ、別に……セックスしようとか、そんなこと一言も言ってないじゃないか!)
彗は大きく深呼吸をして言った。
「わ、分かった、分かったよ……!」
震える手で着ているものを脱ぎ、下着姿になった。そして、ベッドに歩み寄ると彼女に尋ねた。
「ほ、本当にいいの……?」
「うん。早く」
彼女は頷くと彗を急かした。珍しく少し苛立っているようにも見える。彗は眼鏡を外し、遠慮がちに彼女に跨るとそっと肌を重ねた。
「……んん……彗……っ」
素肌が膨らみに触れた瞬間、彼女が少しだけ上擦った声を上げたので、彗は体の奥が微かに疼くのを感じた。背中に手を回すと、指先に何がが当たった。
「あんっ……!」
北翔が更に上擦った声を上げた。
「ご、ごめん。これは……もしかして傷?」
「……そう」
北翔は寝返りを打つと、彗に背中を向けた。真ん中には細長い一本の線が斜めに入っていて、縫った後が微かにあった。
(この間は気づかなかったな……体が冷た過ぎたのかもしれない)
彗はその傷跡を優しく指でなぞった。
「んんっ……やぁん……」
(ああ、北翔……こんな声出すんだ……)
不意に愛おしさが込み上げてしまい、彗は思わず彼女の背中にキスをした。
「んっ……」
彗はハッとして慌てて顔を上げた。先程イオと肌を重ねた時の感覚が自分の中にまだ僅かに残っていて、少しの刺激で高揚感が蘇りそうだった。
(ううっ……ダメだ。意識しないようにしないと……!)
「ご、ご、ごめん!つい……」
北翔は再び寝返りを打って仰向けになると首を横に振った。そして、彗の首筋に腕を回しながら言った。
「……謝らなくていい。彗、やっぱりあったかい。こうしてると安心する。わたし、ずっと一人だったから」
「そ、そっか……」
「セックスは何度もしたけど、こんなに心地よいものじゃなかった。好きな人としたら違うのかもしれないけど」
突然のカミングアウトに彗は驚いた。咄嗟に北翔の顔を見ると、彼女は相変わらず顔色ひとつ変えずに、彗のことをじっと見つめていた。
「えっ、い、今……セックスは何度もした、って言った?」
「うん、言った」
「ど、どういうこと?君はずっと一人だったって言ったよね?」
「うん、一人だった。セックスは情報を得る為の駆け引きみたいなもの」
「そ、それじゃあ君はもしかして……自分に関する情報を入手する手段として自分の身体を使ってたってこと?」
北翔は少し考えた後、頷きながら言った。
「そう。色んな人とやった。女の子ともしたことある。背中の傷を治した時も治療費を払う代わりにやった」
「ええっ?それって……医者と?」
北翔は首を横に振りながら言った。
「医者じゃない。民間でアンドロイドを作ってる会社の人。この傷は富士山を下りる時、滑落して出来た。何とか街に辿り着いたけど、動けなくなってしまった。そしたら、その人が偶然通りかかって助けてくれた」
「そっか……それで治療費を払えないって言ったら身体を求められたってこと?」
「そう。それがわたしの初体験。回復するまで家に泊めてくれて優しくしてくれたから怖いとかはなかった。それ以来、身売りすることを覚えた。だから、セックスに抵抗はない。こうして、彗と肌を重ねることも、別に恥ずかしくない」
「それ、宵月先生は……?」
「言ってない。でも、聞かれた。経験はあるのかって。ある、とだけ答えた。性の病気とかは見当たらないから大丈夫って言われた」
彗はショックだった。僅か18歳の少女が既に性の知識や感覚に長けていること、自分が何者かを知る為に身体を使わなければならなかったこと。何より本当の愛を知らないまま性に目覚めてしまったことがショックだった。
「……そっか。君は僕が思っている以上に苦労してきたんだね……」
彗はやっとの思いでそう口にすると、彼女の身体を優しく抱きしめた。同情、哀れみ、そして、微かな愛情……彼の胸の中には様々な感情が込み上げた。酷く切なくて胸が締め付けられた。北翔は彗の背中に腕を回すと、耳元に唇を寄せて優しく囁いた。
「……彗、ありがとう。キミがわたしを救ってくれた。だから、わたしは今ここにいる。わたし、彗に感謝してる」
そして、彗の顔を両手で包み込むと唇に自身の唇をそっと重ねた。
「ほ、北翔……」
恥ずかしさのあまり彗は顔を真っ赤にした。
「また顔、赤くなってる」
「だ、だって……急にそんなこと言うし、キスするから……」
すると、北翔は手をそっと下に滑らせると下着の上から彗自身に触れた。
「ここ、ちょっと大きくなってる」
「えっ?ちょ、ちょっと、何触って……」
彗は顔を真っ赤にして慌てふためいた。彼は自分自身が微かに反応していることに気付かなかったのだ。
(やっぱりまださっきの余韻が……っていうか、北翔に言われるまで気付かなかった……本当に鈍感だな、僕は……)
「彗、苦しそう。不完全燃焼なんでしょ。イオのこと、寸前で拒んだから」
北翔は彗自身を優しく撫で続けながら、彼を見上げて言った。彗は顔を真っ赤にして彼女の手を止めた。
「そ、そんなことないから!北翔、これ以上は……」
そう言って必死に首を横に振った。しかし、北翔は手を止めるどころか下着を一気にずらして、直に彗自身に触れた。細く、暖かな指先で優しく撫でられている内に、彗自身は徐々に硬くなっていった。
「だ、ダメだってば……んあぁっ」
「我慢しなくていい。さっき、キミはよく耐えた。だから、わたしがイカせてあげる。イオの代わりに」
北翔は顔色ひとつ変えずにそう言った。しかし、その声には優しさや彗に対する微かな愛情が込められていた。北翔は彗自身を握ると始めは優しく、徐々に動きを早めた。
「うぁ……はぁっ、もうダメ……っ!」
彗は押し寄せる快感に耐え切れず、吐息混じりに喘いだ。目を瞑り、素直に自分の手に身体を委ねている彼を見上げて、北翔は胸の高鳴りを覚えた。
(彗……可愛い……)
彼が乱れる様をもっと見ようと激しく手を動かすと、彗はあっという間に果てた。イオの中に出せなかった彼の切なさを北翔は身体で受け止めた。クセのある髪の毛から汗が溢れ、北翔の美しい膨らみを濡らした。彗は肩で大きく息をしながらゆっくりと目を開けた。そして、困惑し、申し訳なさそうな表情を浮かべて言った。
「……っ……ご、ごめんね、北翔……っ。君にこんなこと……させてしまうなんて……。さっき……君は……セックスは心地良いものじゃないって……そう言ったよね?それって好きでやってる訳じゃない……ってことでしょ?それなのに、僕は……」
すると、彼の言葉を遮るように北翔が口を開いた。
「……彗とするのは嫌いじゃない、そう思った。それに、必死に理性と闘って耐えてる彗が、可愛かったから。してあげたくなった。それだけ」
「か、かわいい……?って……」
彗は口元に手をやると、顔を真っ赤にした。すかさず北翔がツッコミを入れる。
「また顔、赤くなってる」
「う、うるさいな……」
彗はそう言って恥ずかしそうに頭を掻いたのだった。
彗は紅茶を飲みながら、3年前の宇宙船墜落事故について検索した。しかし、そこには乗客についての詳しい情報は殆ど掲載されていなかった。個人情報に当たるということもあるが、宇宙船に乗り込む時の激しい争いで乗客のことを正確に把握することが出来なかったからだ。
彗はため息を吐いた。
「……宇宙船の運行会社に直接問い合わせるしかないか」
何か少しでも手がかりがないかとしばらくの間、検索を続けた。マグカップの紅茶が空になる頃、会議室に暁子が入って来た。
「検査は終わったよ。特に異常は見当たらない。健康的な身体だ。きっと子供も産めるだろうね」
「そうなんですか。良かった……!」
彗は椅子から立ち上がると嬉しそうな笑みを浮かべ、ホッと胸を撫で下ろした。
「ところで、彗。あんたは……」
暁子はそう言いかけて咄嗟に口を閉ざした。
「えっ?何ですか?」
彗とイオの様子を密かに伺っていた人物、それは暁子だった。彼女が偶然、医務室の前を通りがかった時、イオの泣き声と彼女をなだめる彗の声が扉の向こうから聞こえてきたのだ。ただならぬ様子の二人が心配になり、暁子はしばらくの間その場に留まって様子を伺った。しかし、彗がイオに告白をした時、この先を聞いてはいけない、直感的にそう思った。急いでその場を離れたものの、二人がどうなったのか気になって仕方がなかった。
(イオとどうなったのか聞くのはさすがにマズイかねぇ。最後まで聞いた訳じゃないが、盗み聞きしていたことには変わりはないし……)
迷った末、暁子は首を振った。
「……いや、何でもないよ」
そして再び口を開くと言った。
「ああ、そうだ。北翔があんたを待ってるよ。やって欲しいことがあるんだってさ」
「やって欲しいこと……僕にですか?」
「そうさ。だから、早く行ってやりな。それにしてもあんた、あの子に相当好かれてるね。一体どんな風に介抱してあげたのか、気になって仕方ないよ」
「ど、どんな風にって……」
暁子の言葉に彗は思わず、裸になって暖めたことを思い出した。顔が一気に赤くなる。
「彗?顔が赤いじゃないか、どうしたんだい?」
「な、な、何でもありません。えーっと、検査ありがとうございました!また何かあったらよろしくお願いしますね!」
彗は慌ててそう言うと、パソコンとマグカップを持って逃げるように会議室を出た。
「おかしな子だねぇ」
暁子は首を傾げたのだった。研究室に入ると北翔がベッドに座ったまま彗の顔を見た。そして、ぽつりと呟いた。
「……何か、顔赤い」
「えっ?そ、そんなことないよ。そ、それより!宵月先生から聞いたよ。僕にやって欲しいことがあるんだよね?」
必死に冷静さを装って彗は言った。すると突然、北翔は検査着の前ボタンを外しながらとんでもないことを言い出した。
「……彗。また暖めて?」
彗は一瞬、何を言われているのか理解出来なかった。
「……えっ?」
戸惑っている内に北翔は検査着を全て脱ぎ捨て、下着姿になった。そして、ベッドに横たわると彗を見つめながら胸元の下着に手を掛け、ゆっくりと外した。雪のような白い肌、美しい形をした膨らみが露わになった。
彼女の一連の動作には全く迷いがなく、滑らかで微かな色気を醸し出していた。その色気に彗の胸が高鳴り、一気に顔が熱くなった。彗はハッとすると慌てて声を上げた。
「ちょ、ちょっと待って!まだ何も言ってないのに!何で服脱いでるの?!」
「だって、またして欲しいから」
「き、気持ちは分かったけど……っていうか服着たままでも出来るでしょ?!」
すると、北翔は少しだけ口調を強めて言った。
「だって……あの時の彗、とても暖かった。心地良かったから」
そして、彗の方へ体を向けると手を差し伸べて言った。
「ホラ、早く来て」
頬に落ちる白い髪の毛、美しい膨らみと谷間、秘部を覆い隠すレースの付いた純白の下着。そして、彗を真っ直ぐに見つめる純粋な瞳。彗は胸の高鳴りを抑えることができず、思わず白衣の胸元をぎゅっと掴んだ。
(ど、ど、どうしよう……こんな姿で、こんな目で言われたら僕……また理性を保てる自信が……いやいや!彼女はただ、暖めて欲しいって言ってるだけだ!べ、別に……セックスしようとか、そんなこと一言も言ってないじゃないか!)
彗は大きく深呼吸をして言った。
「わ、分かった、分かったよ……!」
震える手で着ているものを脱ぎ、下着姿になった。そして、ベッドに歩み寄ると彼女に尋ねた。
「ほ、本当にいいの……?」
「うん。早く」
彼女は頷くと彗を急かした。珍しく少し苛立っているようにも見える。彗は眼鏡を外し、遠慮がちに彼女に跨るとそっと肌を重ねた。
「……んん……彗……っ」
素肌が膨らみに触れた瞬間、彼女が少しだけ上擦った声を上げたので、彗は体の奥が微かに疼くのを感じた。背中に手を回すと、指先に何がが当たった。
「あんっ……!」
北翔が更に上擦った声を上げた。
「ご、ごめん。これは……もしかして傷?」
「……そう」
北翔は寝返りを打つと、彗に背中を向けた。真ん中には細長い一本の線が斜めに入っていて、縫った後が微かにあった。
(この間は気づかなかったな……体が冷た過ぎたのかもしれない)
彗はその傷跡を優しく指でなぞった。
「んんっ……やぁん……」
(ああ、北翔……こんな声出すんだ……)
不意に愛おしさが込み上げてしまい、彗は思わず彼女の背中にキスをした。
「んっ……」
彗はハッとして慌てて顔を上げた。先程イオと肌を重ねた時の感覚が自分の中にまだ僅かに残っていて、少しの刺激で高揚感が蘇りそうだった。
(ううっ……ダメだ。意識しないようにしないと……!)
「ご、ご、ごめん!つい……」
北翔は再び寝返りを打って仰向けになると首を横に振った。そして、彗の首筋に腕を回しながら言った。
「……謝らなくていい。彗、やっぱりあったかい。こうしてると安心する。わたし、ずっと一人だったから」
「そ、そっか……」
「セックスは何度もしたけど、こんなに心地よいものじゃなかった。好きな人としたら違うのかもしれないけど」
突然のカミングアウトに彗は驚いた。咄嗟に北翔の顔を見ると、彼女は相変わらず顔色ひとつ変えずに、彗のことをじっと見つめていた。
「えっ、い、今……セックスは何度もした、って言った?」
「うん、言った」
「ど、どういうこと?君はずっと一人だったって言ったよね?」
「うん、一人だった。セックスは情報を得る為の駆け引きみたいなもの」
「そ、それじゃあ君はもしかして……自分に関する情報を入手する手段として自分の身体を使ってたってこと?」
北翔は少し考えた後、頷きながら言った。
「そう。色んな人とやった。女の子ともしたことある。背中の傷を治した時も治療費を払う代わりにやった」
「ええっ?それって……医者と?」
北翔は首を横に振りながら言った。
「医者じゃない。民間でアンドロイドを作ってる会社の人。この傷は富士山を下りる時、滑落して出来た。何とか街に辿り着いたけど、動けなくなってしまった。そしたら、その人が偶然通りかかって助けてくれた」
「そっか……それで治療費を払えないって言ったら身体を求められたってこと?」
「そう。それがわたしの初体験。回復するまで家に泊めてくれて優しくしてくれたから怖いとかはなかった。それ以来、身売りすることを覚えた。だから、セックスに抵抗はない。こうして、彗と肌を重ねることも、別に恥ずかしくない」
「それ、宵月先生は……?」
「言ってない。でも、聞かれた。経験はあるのかって。ある、とだけ答えた。性の病気とかは見当たらないから大丈夫って言われた」
彗はショックだった。僅か18歳の少女が既に性の知識や感覚に長けていること、自分が何者かを知る為に身体を使わなければならなかったこと。何より本当の愛を知らないまま性に目覚めてしまったことがショックだった。
「……そっか。君は僕が思っている以上に苦労してきたんだね……」
彗はやっとの思いでそう口にすると、彼女の身体を優しく抱きしめた。同情、哀れみ、そして、微かな愛情……彼の胸の中には様々な感情が込み上げた。酷く切なくて胸が締め付けられた。北翔は彗の背中に腕を回すと、耳元に唇を寄せて優しく囁いた。
「……彗、ありがとう。キミがわたしを救ってくれた。だから、わたしは今ここにいる。わたし、彗に感謝してる」
そして、彗の顔を両手で包み込むと唇に自身の唇をそっと重ねた。
「ほ、北翔……」
恥ずかしさのあまり彗は顔を真っ赤にした。
「また顔、赤くなってる」
「だ、だって……急にそんなこと言うし、キスするから……」
すると、北翔は手をそっと下に滑らせると下着の上から彗自身に触れた。
「ここ、ちょっと大きくなってる」
「えっ?ちょ、ちょっと、何触って……」
彗は顔を真っ赤にして慌てふためいた。彼は自分自身が微かに反応していることに気付かなかったのだ。
(やっぱりまださっきの余韻が……っていうか、北翔に言われるまで気付かなかった……本当に鈍感だな、僕は……)
「彗、苦しそう。不完全燃焼なんでしょ。イオのこと、寸前で拒んだから」
北翔は彗自身を優しく撫で続けながら、彼を見上げて言った。彗は顔を真っ赤にして彼女の手を止めた。
「そ、そんなことないから!北翔、これ以上は……」
そう言って必死に首を横に振った。しかし、北翔は手を止めるどころか下着を一気にずらして、直に彗自身に触れた。細く、暖かな指先で優しく撫でられている内に、彗自身は徐々に硬くなっていった。
「だ、ダメだってば……んあぁっ」
「我慢しなくていい。さっき、キミはよく耐えた。だから、わたしがイカせてあげる。イオの代わりに」
北翔は顔色ひとつ変えずにそう言った。しかし、その声には優しさや彗に対する微かな愛情が込められていた。北翔は彗自身を握ると始めは優しく、徐々に動きを早めた。
「うぁ……はぁっ、もうダメ……っ!」
彗は押し寄せる快感に耐え切れず、吐息混じりに喘いだ。目を瞑り、素直に自分の手に身体を委ねている彼を見上げて、北翔は胸の高鳴りを覚えた。
(彗……可愛い……)
彼が乱れる様をもっと見ようと激しく手を動かすと、彗はあっという間に果てた。イオの中に出せなかった彼の切なさを北翔は身体で受け止めた。クセのある髪の毛から汗が溢れ、北翔の美しい膨らみを濡らした。彗は肩で大きく息をしながらゆっくりと目を開けた。そして、困惑し、申し訳なさそうな表情を浮かべて言った。
「……っ……ご、ごめんね、北翔……っ。君にこんなこと……させてしまうなんて……。さっき……君は……セックスは心地良いものじゃないって……そう言ったよね?それって好きでやってる訳じゃない……ってことでしょ?それなのに、僕は……」
すると、彼の言葉を遮るように北翔が口を開いた。
「……彗とするのは嫌いじゃない、そう思った。それに、必死に理性と闘って耐えてる彗が、可愛かったから。してあげたくなった。それだけ」
「か、かわいい……?って……」
彗は口元に手をやると、顔を真っ赤にした。すかさず北翔がツッコミを入れる。
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