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第4話 子供アンドロイド
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ある日、トレーニングルームで運動したベネラは額から流れ落ちる汗をタオルで拭いながら、シャワールームへ向かっていた。身につけているスポーツウエアは汗で酷く湿っており、一刻も早く着替えるために早足で歩いていた。
(もっと筋力と体力をつけないと。ハレーに負けないように……)
そんなことをぼんやりと考えながら歩いていると、長い渡り廊下の向こうから何かがこちらに向かって駆けて来ることに気付いた。それは明らかに人間ではない。ベネラは足を止め、その何かをじっと見つめた。
「あれは……犬?」
姿が徐々に大きくなり、それはハスキー犬だということが分かった。
「センターに犬なんていたかしら……」
首を傾げながらベネラは自分に向かって来るその犬を受け止めようと、そっとしゃがみ込んだ。そして、両手を開いた。
「ワン!」
犬は嬉しそうにベネラの腕に飛び込んだ。すると、その後ろから見覚えのある小柄な女性が必死に犬の後を追って来た。
「コラー!シリウス!また勝手にいなくなって!」
「……イオ?!」
ベネラは驚いて声を上げた。ブルーのニットにチェックのスカート、その上から白衣を羽織ったイオが息を弾ませながらベネラに言った。
「ベネラ姉さん、ごめんなさい。シリウスが勝手に……」
「しりうすって……もしかして、この犬のことかしら?」
ベネラはそう言って綺麗に手入れされた滑らかな犬の頭を撫でた。犬は舌を出して嬉しそうに尻尾を振った。
「うん、そう!つい先日、ようやく完成した新しいアンドロイドなの」
「……犬のアンドロイド?雄飛は確か、子供のアンドロイドを作ってたわよね?」
イオはベネラの言葉に苦笑いしながら頷くと、シリウスに向かって強い口調で言った。
「シリウス!ほら、戻りなさい!」
その瞬間、シリウスの体が白いモヤに包まれ、やがて少年が姿を現した。フードにブルーのファーがついたパーカーを着ており、黒と白のまだらな髪の毛の上にはふたつの黒い犬耳が付いている。悪戯っぽい笑みが浮かんでいるヤンチャな口元からは八重歯が覗いていた。
「いいじゃん!こっちの方がうごきやすいんだもん。それにはやく走れるしね!」
「むやみに変身しちゃダメって言ったでしょ?!」
イオは腰に両手を当て、シリウスを叱った。しかし、シリウスは全く動じていない。わざとらしく怯えて震える素振りをしながら言った。
「あいかわらずコワいな~イオは」
二人の様子を黙って見ていたベネラはイオに尋ねた。
「……イオ、この子があなたと雄飛の子供アンドロイドってことなのかしら?」
「そうなの!もうヤンチャで大変なんだよ!アタシのこと名前で呼ぶし……ママとかお母さんって呼ぶのって教えたんだけどね」
イオは困惑したような顔でそう言うと、頬に手を当ててため息を吐いた。
「犬に変身できるのは何故?」
ベネラの問いにイオは困惑した表情のまま再び口を開いた。
「雄飛が子供アンドロイドの製作許可を水端教授にもらおうとしたんだけど、方針が違う個体を正式に認める訳にはいかないって言われてなかなか許可が降りなくて……でも、雄飛は諦めなかった。そのうち教授が折れたんだけど、認める代わりに条件を提示されたの」
「条件……?」
「そう。それが要注意人物のコアから使うことだった。もちろん雄飛は反対したの。またハレーみたいな奴が出来てもいいのかって。でも、教授は結果的にハレーは大人しくなったのだからいいじゃないかと頑として譲らなかった。それはベネラ姉さんがハレーを止めてくれたおかげなのにね……」
イオはそう言って申し訳なさそうに微笑んだ。ベネラはそれには返事をせずに言った。
「……それから?」
「あっ、うん。雄飛は散々悩んだの。だって、要注意人物はどれも犯罪者だったから。でも、その中にひとつだけ動物のコアがあった。基本的には動物のコアは受け付けていなかったから、避けておいたのね。提供者からの書類を見たら『大切な愛犬が移住先でも生きられるように』って書いてあったの。きっと家族にとても愛されていたのね。雄飛はそれにとても感動して……人間型のアンドロイドに動物のコアを使ったらどうなるかっていう興味もあって、それを使うことにしたわ」
イオはそう言うと床の上でゴロゴロと、文字通り寝転がっているシリウスの頭をそっと撫でた。その顔は愛おしい我が子を見つめる母親そのものだった。少し前まで頼りない小さな女の子だったイオの大きな変化にベネラは感心した。腕を組むと納得したように言った。
「……それで出来たのが犬と人間の特徴を併せ持つアンドロイドだったって訳ね。でも、アンドロイドが犬に変身するなんて、科学的に考えてあり得ないわよね?この子の体内は一体どうなってるのかしら?」
「それが突然変異ってこと以外まだ何も分かってないんだよね……雄飛が調べてくれてるんだけど、ヤンチャ過ぎてなかなか検査が進まないの。ちっとも大人しくしてないんだから」
イオはそう言って肩をすくめた。ベネラは優しく微笑んで言った。
「イオ、あなた木星の研究もしてるんでしょう?大変ね」
「そうなの。研究と子育ての両立は思った以上に大変だよ!」
苦笑いしながらそう言った後、イオはすぐに嬉しそうに微笑んで、言葉を続けた。
「……でも、アタシは今凄く幸せなんだ。大切な人が二人もいるから」
その言葉の裏に隠されたイオの気持ちをベネラは感じ取り、微かに目を細めた。心を読んだのではない。イオがこれまで立ち向かってきた出来事をベネラは既に知っており、尚且つ深く理解しているからだ。アンドロイドの中で最年長のベネラにとってイオは、同じ女性アンドロイドというだけではなく可愛い妹のような存在だった。また、イオにとってもベネラは頼りになる姉のような存在で心の底から慕っていた。
「そう。それなら良かったわ。でも、何か困ったことがあったらいつでも言ってね。私で良ければ力になるわ」
「ありがとう、ベネラ姉さん」
心の底から幸せそうな微笑みを浮かべるイオを見て、ベネラはふと想像した。
(子供が産まれたら、私もこんな風に思うのかしら……)
赤ちゃんを抱いている自分の隣にはハレーがいた。柄にもなく嬉しそうな顔をして、赤ちゃんに笑いかけるハレーの姿を想像して、ベネラは思わず首を横に振った。
ベネラは自分の体内に生殖器官があり、子供を産める能力を持っていることを理解していた。そして、水端教授が自分にハレーの子供を産むことを期待していることも理解していた。しかし、暁子からは「水端教授の言うことは気にしなくていい」と言われていたし、ベネラ自身もハレーに恋愛感情を抱いたことがなかった。何より、もう二度と恋なんてしない、と誓ったのだ。
(……あり得ないわ。私があんな男の子供を産むなんて。だから、暁子の言葉を借りれば『メトロポリス星がひっくり返っても絶対にない』だわ)
ベネラは思わず、クスッと口元を緩めた。
「……ベネラ姉さん?」
「ああ、なんでもないわ」
ベネラはしゃがみ込むと、シリウスに向かって手を差し出した。
「シリウス、私はベネラって言うの。私もあなたと同じアンドロイドよ。よろしくね」
床でゴロゴロしていたシリウスは飛び起き、ベネラの手を取って嬉しそうに言った。
「ベネラもアンドロイドなの?!ボクとイオと同じだね!」
「ふふっ、仲良くしてね。それじゃあ、私はシャワーを浴びに行くわ。シリウス、イオ、またね」
ベネラは立ち上がり、二人に手を振った。
「はい、ベネラ姉さん。また!」
「ベネラー!バイバーイ!」
イオの幸せそうな声と、シリウスの無邪気な声を背中に受け、自身の心がほんのりと温かくなるのをベネラは感じたのだった。
一方、その頃。水端流はある人物に連絡を入れていた。彼のウォッチから投影された人物は鮮やかな茶色の短髪、豹柄のシャツの上に白衣を着ている。筋肉質、大柄な体型で、年齢は水端流と同じぐらいだ。
「よう、水端。久しぶりやん。お前さんの方から連絡してくるんて珍しいやん。どないしたん?」
「道円、実は頼みがある」
「頼み?なんや、儲け話かいな?」
西洋インテリアのような派手な椅子の背もたれに体を預け、ゆったりと葉巻をふかしながら男は興味深そうな笑みを浮かべた。
「儲けになるかどうかは分からんが、金はきっちり払う」
「よっしゃ。ほな、聞こか」
「実は先日、我がセンターに子供のアンドロイドが誕生した。そのアンドロイドは突然変異で犬に変身する個体でな」
すると、目を丸くして男が身を乗り出した。
「犬やて?!どういうメカニズムなん?!」
「それがまだ分からんのだよ。開発した者が調査をしてるんだが、進まないのだ。なかなかヤンチャなアンドロイドでな。それにこちらが進めているプロジェクトの方針とは異なるので、扱いに困っておるのだ。しかし、せっかく完成した個体を無碍にはできん。もったいないのでな。仕方なく政府に報告すると、メカニズムを解明して報告しろとのことでな」
「なるほど。ほんで困って、動物学者のワイに連絡したっちゅーわけか。せやけど、もったいないて……水端、お前さん、大学時代からちっとも変わっとらんな」
そう言うと男は豪快にガハハと笑った。
「……ふん、放っておいてくれ」
水端流は恥ずかしそうに男から目を逸らした。男は拳で胸を叩くと得意げに言った。
「よっしゃ!ほんなら、ワイに任せとき。動物のことならワイの方が詳しい。そちらさんで調査するより早く解明できるはずや」
水端流は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「君ならそう言ってくれるだろうと思っていた」
「よっしゃ。決まりや。で、報酬はいくらや?」
水端流は言葉の代わりに指を何本か立て、金額を提示した。すると、男は口元に笑みを浮かべ、葉巻の煙を一気に吐くと言った。
「ほう。十分過ぎる金額や。さすが水端、ワイのことよう分かっとるな」
「お前とは長い付き合いだからな」
「ああ、ほんまそれやな。ほな、また連絡するわ」
「ああ、またな」
水端流はウォッチを切った。そして、顎に手を当てて満足そうに呟いた。
「これでしばらくは厄介払いできるな……」
(もっと筋力と体力をつけないと。ハレーに負けないように……)
そんなことをぼんやりと考えながら歩いていると、長い渡り廊下の向こうから何かがこちらに向かって駆けて来ることに気付いた。それは明らかに人間ではない。ベネラは足を止め、その何かをじっと見つめた。
「あれは……犬?」
姿が徐々に大きくなり、それはハスキー犬だということが分かった。
「センターに犬なんていたかしら……」
首を傾げながらベネラは自分に向かって来るその犬を受け止めようと、そっとしゃがみ込んだ。そして、両手を開いた。
「ワン!」
犬は嬉しそうにベネラの腕に飛び込んだ。すると、その後ろから見覚えのある小柄な女性が必死に犬の後を追って来た。
「コラー!シリウス!また勝手にいなくなって!」
「……イオ?!」
ベネラは驚いて声を上げた。ブルーのニットにチェックのスカート、その上から白衣を羽織ったイオが息を弾ませながらベネラに言った。
「ベネラ姉さん、ごめんなさい。シリウスが勝手に……」
「しりうすって……もしかして、この犬のことかしら?」
ベネラはそう言って綺麗に手入れされた滑らかな犬の頭を撫でた。犬は舌を出して嬉しそうに尻尾を振った。
「うん、そう!つい先日、ようやく完成した新しいアンドロイドなの」
「……犬のアンドロイド?雄飛は確か、子供のアンドロイドを作ってたわよね?」
イオはベネラの言葉に苦笑いしながら頷くと、シリウスに向かって強い口調で言った。
「シリウス!ほら、戻りなさい!」
その瞬間、シリウスの体が白いモヤに包まれ、やがて少年が姿を現した。フードにブルーのファーがついたパーカーを着ており、黒と白のまだらな髪の毛の上にはふたつの黒い犬耳が付いている。悪戯っぽい笑みが浮かんでいるヤンチャな口元からは八重歯が覗いていた。
「いいじゃん!こっちの方がうごきやすいんだもん。それにはやく走れるしね!」
「むやみに変身しちゃダメって言ったでしょ?!」
イオは腰に両手を当て、シリウスを叱った。しかし、シリウスは全く動じていない。わざとらしく怯えて震える素振りをしながら言った。
「あいかわらずコワいな~イオは」
二人の様子を黙って見ていたベネラはイオに尋ねた。
「……イオ、この子があなたと雄飛の子供アンドロイドってことなのかしら?」
「そうなの!もうヤンチャで大変なんだよ!アタシのこと名前で呼ぶし……ママとかお母さんって呼ぶのって教えたんだけどね」
イオは困惑したような顔でそう言うと、頬に手を当ててため息を吐いた。
「犬に変身できるのは何故?」
ベネラの問いにイオは困惑した表情のまま再び口を開いた。
「雄飛が子供アンドロイドの製作許可を水端教授にもらおうとしたんだけど、方針が違う個体を正式に認める訳にはいかないって言われてなかなか許可が降りなくて……でも、雄飛は諦めなかった。そのうち教授が折れたんだけど、認める代わりに条件を提示されたの」
「条件……?」
「そう。それが要注意人物のコアから使うことだった。もちろん雄飛は反対したの。またハレーみたいな奴が出来てもいいのかって。でも、教授は結果的にハレーは大人しくなったのだからいいじゃないかと頑として譲らなかった。それはベネラ姉さんがハレーを止めてくれたおかげなのにね……」
イオはそう言って申し訳なさそうに微笑んだ。ベネラはそれには返事をせずに言った。
「……それから?」
「あっ、うん。雄飛は散々悩んだの。だって、要注意人物はどれも犯罪者だったから。でも、その中にひとつだけ動物のコアがあった。基本的には動物のコアは受け付けていなかったから、避けておいたのね。提供者からの書類を見たら『大切な愛犬が移住先でも生きられるように』って書いてあったの。きっと家族にとても愛されていたのね。雄飛はそれにとても感動して……人間型のアンドロイドに動物のコアを使ったらどうなるかっていう興味もあって、それを使うことにしたわ」
イオはそう言うと床の上でゴロゴロと、文字通り寝転がっているシリウスの頭をそっと撫でた。その顔は愛おしい我が子を見つめる母親そのものだった。少し前まで頼りない小さな女の子だったイオの大きな変化にベネラは感心した。腕を組むと納得したように言った。
「……それで出来たのが犬と人間の特徴を併せ持つアンドロイドだったって訳ね。でも、アンドロイドが犬に変身するなんて、科学的に考えてあり得ないわよね?この子の体内は一体どうなってるのかしら?」
「それが突然変異ってこと以外まだ何も分かってないんだよね……雄飛が調べてくれてるんだけど、ヤンチャ過ぎてなかなか検査が進まないの。ちっとも大人しくしてないんだから」
イオはそう言って肩をすくめた。ベネラは優しく微笑んで言った。
「イオ、あなた木星の研究もしてるんでしょう?大変ね」
「そうなの。研究と子育ての両立は思った以上に大変だよ!」
苦笑いしながらそう言った後、イオはすぐに嬉しそうに微笑んで、言葉を続けた。
「……でも、アタシは今凄く幸せなんだ。大切な人が二人もいるから」
その言葉の裏に隠されたイオの気持ちをベネラは感じ取り、微かに目を細めた。心を読んだのではない。イオがこれまで立ち向かってきた出来事をベネラは既に知っており、尚且つ深く理解しているからだ。アンドロイドの中で最年長のベネラにとってイオは、同じ女性アンドロイドというだけではなく可愛い妹のような存在だった。また、イオにとってもベネラは頼りになる姉のような存在で心の底から慕っていた。
「そう。それなら良かったわ。でも、何か困ったことがあったらいつでも言ってね。私で良ければ力になるわ」
「ありがとう、ベネラ姉さん」
心の底から幸せそうな微笑みを浮かべるイオを見て、ベネラはふと想像した。
(子供が産まれたら、私もこんな風に思うのかしら……)
赤ちゃんを抱いている自分の隣にはハレーがいた。柄にもなく嬉しそうな顔をして、赤ちゃんに笑いかけるハレーの姿を想像して、ベネラは思わず首を横に振った。
ベネラは自分の体内に生殖器官があり、子供を産める能力を持っていることを理解していた。そして、水端教授が自分にハレーの子供を産むことを期待していることも理解していた。しかし、暁子からは「水端教授の言うことは気にしなくていい」と言われていたし、ベネラ自身もハレーに恋愛感情を抱いたことがなかった。何より、もう二度と恋なんてしない、と誓ったのだ。
(……あり得ないわ。私があんな男の子供を産むなんて。だから、暁子の言葉を借りれば『メトロポリス星がひっくり返っても絶対にない』だわ)
ベネラは思わず、クスッと口元を緩めた。
「……ベネラ姉さん?」
「ああ、なんでもないわ」
ベネラはしゃがみ込むと、シリウスに向かって手を差し出した。
「シリウス、私はベネラって言うの。私もあなたと同じアンドロイドよ。よろしくね」
床でゴロゴロしていたシリウスは飛び起き、ベネラの手を取って嬉しそうに言った。
「ベネラもアンドロイドなの?!ボクとイオと同じだね!」
「ふふっ、仲良くしてね。それじゃあ、私はシャワーを浴びに行くわ。シリウス、イオ、またね」
ベネラは立ち上がり、二人に手を振った。
「はい、ベネラ姉さん。また!」
「ベネラー!バイバーイ!」
イオの幸せそうな声と、シリウスの無邪気な声を背中に受け、自身の心がほんのりと温かくなるのをベネラは感じたのだった。
一方、その頃。水端流はある人物に連絡を入れていた。彼のウォッチから投影された人物は鮮やかな茶色の短髪、豹柄のシャツの上に白衣を着ている。筋肉質、大柄な体型で、年齢は水端流と同じぐらいだ。
「よう、水端。久しぶりやん。お前さんの方から連絡してくるんて珍しいやん。どないしたん?」
「道円、実は頼みがある」
「頼み?なんや、儲け話かいな?」
西洋インテリアのような派手な椅子の背もたれに体を預け、ゆったりと葉巻をふかしながら男は興味深そうな笑みを浮かべた。
「儲けになるかどうかは分からんが、金はきっちり払う」
「よっしゃ。ほな、聞こか」
「実は先日、我がセンターに子供のアンドロイドが誕生した。そのアンドロイドは突然変異で犬に変身する個体でな」
すると、目を丸くして男が身を乗り出した。
「犬やて?!どういうメカニズムなん?!」
「それがまだ分からんのだよ。開発した者が調査をしてるんだが、進まないのだ。なかなかヤンチャなアンドロイドでな。それにこちらが進めているプロジェクトの方針とは異なるので、扱いに困っておるのだ。しかし、せっかく完成した個体を無碍にはできん。もったいないのでな。仕方なく政府に報告すると、メカニズムを解明して報告しろとのことでな」
「なるほど。ほんで困って、動物学者のワイに連絡したっちゅーわけか。せやけど、もったいないて……水端、お前さん、大学時代からちっとも変わっとらんな」
そう言うと男は豪快にガハハと笑った。
「……ふん、放っておいてくれ」
水端流は恥ずかしそうに男から目を逸らした。男は拳で胸を叩くと得意げに言った。
「よっしゃ!ほんなら、ワイに任せとき。動物のことならワイの方が詳しい。そちらさんで調査するより早く解明できるはずや」
水端流は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「君ならそう言ってくれるだろうと思っていた」
「よっしゃ。決まりや。で、報酬はいくらや?」
水端流は言葉の代わりに指を何本か立て、金額を提示した。すると、男は口元に笑みを浮かべ、葉巻の煙を一気に吐くと言った。
「ほう。十分過ぎる金額や。さすが水端、ワイのことよう分かっとるな」
「お前とは長い付き合いだからな」
「ああ、ほんまそれやな。ほな、また連絡するわ」
「ああ、またな」
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