遊佐賀奈子と八人の鬼婦人

５話

煌びやかな装飾が取り付けられたドレス、それを着るに相応しいほどの豊満な胸部、細いウエスト、絹のような肌とすらりと伸びた手。長い髪の毛は黄金よりも輝く金色の髪。誰もが一目見てその美しさに立ち止まるであろう。が、違う。

（顔が、、）

その顔には面のようなものがされている。いや面なのか。顔と面の境目がない。どこからが皮膚でどこからが面なのかわからない。その面と思われる部分の真ん中にはイカやタコのような吸盤がひとつ付いている。その部分が時おり収縮している。

（人？じゃない、、）

目の前で民衆に軽く手を振っている、人のようで人ではない何かを初めてみた遊佐は背筋に寒気を感じた。その遊佐の反応とは正反対に、民衆はこの都市の主の登場に一番の盛り上がりを見せている。

「我らが主！オクタゴン姉妹！長女リンボ様！」


と何度も復唱している。

遊佐はその様子に驚きながらも観察を続ける。
（と、とりあえずあれが八人の鬼婦人と言われているのね。気味悪いけど調査しなきゃな、、！？）

遊佐がそう思った瞬間、リンボと呼ばれるものの顔が、遊佐がいる屋根の方を見た。目は無いように見えるが何故か目が合ったように遊佐は感じた。遊佐はその不気味な吸盤がついた顔と思われる部分からなぜか目が離せない。

（目線がずらせない！き、気づかれた！？）

全身が緊張のせいか強張り、嫌な汗がにじみ出る。

（早く！この場から逃げなきゃ！）

遊佐がそう判断して背を向けようとした時、リンボは首を傾げ、またパレードの民衆に手を振り始めた。それに見た遊佐はふぅっと今まで溜めてた息を吐いて安堵の表情になる。

（びっくりした～。偶然か。ひやひやした。）

と屋根に腰を下ろして空を見上げる。
そのあとリンボが向かっていった方向を見る。もうすっかり遠くだ。

それを確認した遊佐は今度は大きなため息を吐く。

「はぁ～～。あれを調査しなきゃだよ。嫌だな～不気味で。」

そう愚痴をこぼした時、また大きな歓声が迫ってくるのを感じた。

「確か八人の鬼婦人だからあと七人いるのか。それも見ておかなきゃ。」

少し待つと、先程リンボが乗っていたものと同じ台座が見えた。そこに乗っていたのもやはりリンボと似たような様相の人ではない何かだった。

今度は黒髪のショートカット、スタイルは先ほどのリンボほどではないがいい。顔の吸盤は二個になっている。また民衆が主人の登場に歓声を上げる。

「我らが主！オクタゴン姉妹！次女イェティ様！」


遊佐は外見と民衆の発言からある事に気づく。

（顔の吸盤の数は姉妹の順番かな？たぶん次は三女が来るはずだから確かめてみよう。）

イェティが通り過ぎた後、遊佐の予想通り次の姉妹が登場する。

今度は赤い髪の毛、前髪は上げて横に流して胸のあたりまで伸びている。胸は、、まぁって感じである。くびれはないが細身である。遊佐の予想どおり吸盤の数は三つ。

「我らが主！オクタゴン姉妹！三女ピーカ様！」


民衆の歓声を聞いて遊佐は確信した。

（やっぱりそうだった。とりあえず八女まで確認を。）

遊佐は次の姉妹を待つ。

髪はピンク色、豊満な胸、腰あたりまで真っ直ぐ伸びた髪、アホ毛がある。吸盤は四つ。

「我らが主！オクタゴン姉妹！四女ピニー・ペリー様！」


髪はワインレッド。ツインテールに前髪パッツン。胸はまずまずである。吸盤は五つ。

「我らが主！オクタゴン姉妹！五女エリザベス様！」


髪は明るい緑。ショートカット。前髪の片側にリボンが巻かれている。胸は体型に似合わないくらい大きい。なぜかモジモジしている。吸盤は六つ。

「我らが主！オクタゴン姉妹！六女ワイズ様！」


髪は水色。ショートカット。髪のいたるところに星の装飾がついているようでキラキラしている。平均的な体型をしている。吸盤は七つ。

「我らが主！オクタゴン姉妹！七女ラッキー様！」


髪は銀色。腰まで伸びた髪。前髪パッツン。他の姉妹に比べて幼いのかチンマリした体型をしている。台座の上で飛び跳ねている。吸盤は八つ。

「我らが主！オクタゴン姉妹！八女アナスタシア様！」