その悪魔、優しいけれど、恋を知りません

雨宮澪

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第15話 地獄の四者面談かな

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「ふあああ、本当にイケメン……というか美男子ぃ」

 香菜が大興奮している。
慎太郎はそれを少し面白くなさそうな顔で見ており、千夏は嫉妬してるなこりゃとため息が出そうになった。
千夏は今、慎太郎、香奈、そして紫紋と一緒にお茶をしていた。
なぜ、このメンツが集まっているのか……そう思い出すだけで、頭が痛くなってくる。
 紫紋は香奈に見つめられ、余裕そうな顔で

「千夏さんのご友人に褒められると、少し照れくさいですね」と微笑むのであった。

 昨日のことだった。
最近千夏は仕事もとい、会いに行きたくて、紫紋の家に学校が終わるなりに行くことが多かった。
それに香奈が口をとがらせたのだ。

「千夏ー千夏ー、もう最近付き合い悪いー」

「ご、ごめんて……バイトなんやらで……」

「えー、そんなに熱心にバイトしてるの? ハウスキーパーは時間とか日程が決まって楽だわーとか言ってなかった?」

「そ、それはそうだけど……」

 学校のエントランスでわーわーと話している二人のもとに慎太郎が合流してきた。

「千夏、香奈……どこで騒いでるんだよ」

「慎太郎、聞いてよ……千夏が付き合い悪いの」

「あー、そうだな……。あ、そういや、この間サークル棟でさ、千夏、すげーイケメンと一緒だったとか話聞いたな? もしかして千夏……」

「え、そういうこと! おめでとう、彼氏?! 彼氏できたのね!!!」

 うーん、間違いはないけど、説明がだるい話になってきたなぁ……と千夏は思った。
その予感じみた思いは、あたっており、香奈を中心にぐりぐりと二人は千夏から根掘り葉掘り話を聞いてくる。
その勢いの良さに、千夏は恋人が悪魔という部分以外は、情報を引き出されてしまった。

「ハウスキーパー先のイケメンと、恋愛関係とか、物語みたいー。そう思わない? 慎太郎」

「確かに、ドラマチックっていうか。でも千夏、それバイト上大丈夫なの? 雇用者と関係になるって。よく知らんけど」

「ま、まあ……多分」

 ラインを超えてしまっているだろうなと千夏は思った。

「香奈。千夏のお相手の方の顔見てみたいなー」

「は?!」

「え!!」

 慎太郎と千夏は声をあげる。
慎太郎は香奈の顔に難しい顔をして。

「これ以上、人の関係に首を突っ込んでも迷惑だろ……ほら、帰るぞ香奈。ごめんな千夏、またな」

 ブーブー言う香奈を引き取って慎太郎は歩き出した。
ほっとしながら、千夏は目をつむる。
やっぱいい人だなと再認識するのだった。

 そこから約一日後である。
千夏は紫紋に買い物を手伝ってもらっていた。
数日分のまとめ買いだったので、まあ、そこそこ荷物になるのだが、正直千夏は力仕事は仕事上慣れていた。
それでも紫紋が手伝うと言い出すのなら、それを断る筋合いもなかった。
 だって一緒に買い物して、夕焼けを背に帰るのは、とてもいいことだった。

 どっこい、買い物の帰り道、寄った肉屋でコロッケを食べていたのだ。
香奈と慎太郎が。

「なんでいるの、ここに!」

 千夏が声を上げると、慎太郎が慌てふためいたように。

「香奈がメンチカツ食べたいって言うから」

「私、コロッケだもん。慎太郎がメンチカツうまいから絶対行きたいって言ってたじゃん!」

 と、小学生がしそうな言い争いをはじめた。
この時点思い返すだけで頭が痛い。
 うまい揚げ物を食べたいという欲望が、二人を動かし、そして……

「まあまあ。千夏さんのご友人ですか? せっかくですし、ここで立ち話よりはお茶でも……」

 紫紋がとりなすことに寄って、まさかの四者面談が始まったのだった……

 まさか、好きだった人、好きだった人の彼女、恋人とお茶を飲む。
こんなことって、あるのだろうか……。
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