栗娘

いちこ

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暗雲

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あの後、わたしの頭の大部分をサトシくんが占めた。自然に彼のことを考えてしまう自分がいた。
もちろんクラスではお互い知らんぷりしていたが、ユイカにはバレていたのかも。

「なにかいいことあったの?」

「えっ、べ、別に。」

「なにか雰囲気変わったね!」

「そ、そう?」

家に帰ると夜遅くまでサトシくんとメールのやり取りをした。ほとんどが他愛ない話だったが楽しかった。

ところがある日を境に、急にサトシくんが冷たくなった。メールも既読スルーされることが多くなり、クラスでも明らかに態度が違ってきた。訳が分からなかった。
週末のデートを断られた日に、とうとう最悪の連絡がきた。

【ごめん。もう終わりにしたい。】

【えっ?どういうこと?】

【ごめん。俺が悪い。】

【だからどうして?】

私は辛抱できず電話を掛けた。

『はい。』

「どういうこと?ちゃんと説明して!」

『もう付き合えないんだ。』

「説明してって言ってるでしょっ!!」

思わず大きな声を出してしまう。
サトシくんは絞り出すように言った。

『⋯⋯好きな娘ができた。』

「えっ?」

『そういう訳だからごめん!』

「⋯⋯⋯。」

ガチャ

一方的に電話を切られる。

どうして?いつの間に? 

私の頭の中は???で一杯になった。
会って話さないと!
サトシくんの家に急いだ。

サトシくんの家が見えてきた時、玄関の扉が開くのが見えた。
そして中から女の子が出てきた。

えっ、ユイカ?

それは紛れもなくユイカだ。続けてサトシくんがにこやかに送っている。ユイカは私に気づかず反対側に歩き出す。
私はその場に立ち尽くした。

えっ?どうしてユイカが?

まさかサトシくんが好きになった娘ってユイカなの?

私は意を決して玄関のチャイムを押した。

「はい。あっ⋯⋯」 
 
「好きな娘って誰?」

「⋯⋯言えないんだ。」

「どうしてユイカがいたの?もしかしてユイカなの?」 

サトシくんは観念したようだ。

「ああ、そうだよ。」

「もしかしてさっきの電話の時もいたの?」

「うん。」

「⋯⋯最低!!!」

私はその場から逃げ出した。泣いている顔を見られたくなかった。

ユイカ、どうして?
ユイカだったら勝てっこない。
ユイカは知ってたの?
私は彼と友達の両方をなくしたの?
 
私は家に帰り、枕に顔を埋めて泣き叫んだ。

「うぁーーーん!チクショーー!」


翌日、泣き腫らした目の私は学校を休むことにした。
ユイカとどんな顔して会えばいいのか分からなかった。


 


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