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第1章
10、エルギン辺境防備隊
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ナイジェルが従卒としてエルギン辺境防備隊に入ったのは十三の頃だった。
他の辺境防備隊もそうだが、五千の騎兵すべてが職業軍人で身分の別なく従卒から入る。
馬術や剣術の試験を受けて合格した者のみ採用されるが、他に大隊長以上の者の推薦があれば、試験を受けずに入ってこられる。
平民の出世の方法としては王立学問所に入って、公証人や書記を目指すものと辺境防備隊に入って大隊長を目指す二通りのやり方がある。
王立学問所は王立学問院の下部組織で法を中心に様々な教育を施す機関だ。
ただ、王立学問所はかなりの額の学費を納めなければ入れないため、ある程度の財力のある者でないと入ることは難しい。その点辺境防備隊は食事や服は支給され、わずかであるが従卒でも俸給がもらえる。
辺境伯は、国王や摂政、元老の承認が必要な為か平民でなった者はいないが、大隊長であれば何人もいる。
貧しい階級の少年たちが憧れる職業でもある。
当時、小隊長をしていたスライはバスターに呼び出された。丁度春先ということもあり、配属される従卒のことだろうかと考えていた。
辺境伯の執務室の重厚な装飾が施された扉の前で名乗ると短い応えがあり、室内に入る。
「失礼致します」
バスターは座って何か書類を見ていた。
「態々すまんな。座ってくれ」
スライは軽く頭を下げるとバスターの前に座る。
「多分、察しはついていると思うが、今年配属される従卒のことだ」
そう言って、スライに一枚の書類を渡してくる。
二十人ほどの名前が書かれており、名前の横には配属先の小隊長の名前が書かれている。
スライは僅かに首を捻る。自分の小隊に配属されるのは三人だが、名前から察するに特別な配慮が必要な良家の者は入っていないように見える。
数年前、メルヴィン王子がカーマーゼン辺境防備隊に入ったことはエルギンでも話題になった。
流石に王族を従卒として使う訳にもいかず、最初から騎兵としての採用だったが。メルヴィン王子の剣の腕前は有名だったので、さほど反発はされなかったようだ。
珍しいことにバスターはやや逡巡するような素振りを見せる。
「そこにあるナイジェル・イスハークという者は儂の妹の子でな」
スライは表情を変えないようにするのに少々努力が要った。
上官としてバスターは有能かつ身分や出身による差別をしない人間だったので尊敬していた。スライに身内を贔屓するよう言うつもりなのかと内心がっかりした。
スライの心の内を察したのだろう、バスターは苦笑いを浮かべる。
「お主の考えていることは分かるつもりだ。スライ、お主は公明正大で温厚な人間だと思っている。ナイジェルを他の子供と同じに扱って欲しい」
「同じで宜しいのですか?」
どうしても皮肉な口調になってしまった。
「構わない。あれが入ってくれば、その意味が分かるだろう」
まるで謎かけのような物言いで、話はそれだけだと言って退出を促す。
納得はいかなかったが、丁重に挨拶をするとバスターの執務室から出る。
バスターの言った言葉の意味を考えながら歩いていると、廊下を曲がったところで同僚のカールーンに出くわした。
傍らには今年従卒から騎兵になったばかりのカールーンの親族で十六になったばかりのジハンギルが従っていた。
カールーンと同じ黒髪黒い瞳に赤銅色の肌の持ち主で、あまり愛想のない少年だ。まだ十六歳だが既にスライと同じくらいの背丈で、これから更に背が伸びそうだ。
カールーンの一族は弓と馬術に特に秀でたオグズという名の一族でベンネビス山脈東峰からダーラン海東海岸の地域で遊牧をして生計を立てていた遊牧民だった。その武力でどこにも支配されない遊牧民でもあったが、二十年ほど前アジメール王国の支配下にはいり、軍人として仕えるようになった。
誇り高く扱いづらい男たちだ。
「どうかしたのか、渋い顔をして」
「そんなに分かりやすく出ていたか?」
スライは苦笑して顔を撫でると、カールーンにバスターに言われたことを話した。この同僚の反応を知りたかったからだが、予想通り無表情の顔に皺が寄る。
「閣下も人の子と言うことですね」
ぼそりと言ったのはジハンギルだった。
カールーンはジハンギルの発言に少し眉を動かしただけで、特に咎めなかった。もっと手厳しいことを考えているのだろう。
スライもジハンギルを窘める立場にあるが、苦笑して他の者の前で言うなよと言っただけだった。
数日が経ち、その日は新たな従卒たちが入る予定だった。各地から騎兵になる為に試験を受け合格した少年たちが中庭に集められていた。
上昇志向の強い少年たちだ、期待と不安の混ざった表情で大隊長が話す辺境防備隊での規則や心得を真剣に聞いている。
スライは説明している大隊長の後ろで少年たちを眺めていた。隣にはカールーンが立っている。
「珍しいな。お前も従卒を引き受けるのか?」
カールーンはとにかく部下に容赦がない。特に馬術の訓練は厳しいことで有名で付いて行けずに辞める従卒が後を絶たず、ここしばらくは彼の小隊に従卒が入ったことはない。
「いいや、新しい仲間の顔を覚えようと思ってな」
口の端を少しだけ持ち上げる。バスターの甥のナイジェルを見に来たのだろう。
説明が終わり、スライの前に連れてこられた三人は緊張しているようだった。一人は後ろに父親が付いて来ていた。
大人しい感じの少年で、肌の白い中々綺麗な顔立ちだった。
スライは僅かに顔を歪ませ、隣に立つカールーンは盛大に眉を顰めている。
案の定、この少年がナイジェルだった。カールーンは踵を返して、どこかに行ってしまった。
ナイジェルの隣に立つ二人の少年もここまで父親が付いて来ていることに馬鹿にしたような表情を浮かべている。
「ハイル」
背後から声を掛けられ、振り返るとバスターが穏やかな笑顔を浮かべ立っていた。
「義兄上、お久しゅうございます」
ハイルと呼ばれたナイジェルの父親も人の良さそうな顔に笑顔を浮かべる。
「ここまで遠かったであろう。ご苦労だったな」
「いいえ、――それほどでも」
どこか困ったように言い澱むハイルに何かを察したのか苦笑を浮かべる。
「ナイジェル、久しぶりだな」
愛情のこもった視線でバスターはナイジェルを見る。
「はい、伯父上もお元気そうで何よりです」
目を伏せ、酷く大人びた表情で笑うナイジェルを何と思ったのかバスターは寂しそうな顔になる。
何か言いたそうであったが、口から出た言葉は頑張りなさいという励ましだった。ナイジェルの肩に手を置いて、二、三度軽く叩くとそのままハイルを連れて建物の中に入って行った。その様子を見ていた周りもさざめいていた。
傍らで見ていた少年二人も辺境防備隊の長である辺境伯の態度に驚いたようで口空けたままナイジェルを見ていた。
スライはこれからのことを思うと頭が痛かった。
「スライ、新しく入った従卒は見込みがありそうか?」
食事の最中、同じ大隊の小隊長が聞いてくる。
ナイジェルがバスターの甥であるということは瞬く間にエルギン辺境防備隊の中に知れ渡っていた。
「……まあまあだな」
苦笑を浮かべる。
ナイジェルがどんな我が儘を言い出すのかと懸念していたのだが、それは杞憂にだったようだ。
言いつけられた雑用も嫌がらずに黙々とこなし、訓練にもちゃんと付いて来ている。
向上心が強く、それ故に血気盛んな者が多い中でナイジェルは物静かな少年で少々変わっていると言える。
少し離れたところに座って食事をするナイジェルを見る。
同期で入った他の従卒たちはナイジェルを馬鹿にしていて話しかけず、同じ小隊の者も辺境伯の甥であるナイジェルを扱いづらいのか距離を置いている。
そんな中でナイジェルに盛んに話しかけているのはこの間騎兵に昇格したばかりのスィムナールでその隣にはジハンギルとブレンドン・トランバイテスという少年が座っていた。
随分個性的な連中に囲まれているなとスライは苦笑する。
ブレンドンは癖のある金髪と空色の瞳をした少年で顔立ちは端正だが、いつも苦虫を噛み潰したような表情をしている。
父親は代々公証人をしている家柄でエルギン近くにあるナイトンという町の名士であるが、母親は正式な妻ではなく花街の娼婦だった。
物心つくまで花街で育ったが、正妻の方に子供が生まれず後継ぎとして引き取られたのだが、それに不満だった正妻によって酷い虐待を受けた。
最初は可愛がっていた父親もそんな妻に影響されたのか、疎んじるようになり、結局捨てられるようにここに入ってきた。
そんなブレンドンを心配してか、時々母親が訪れる。娼婦だったという割に地味な身なりで菓子や下着などを差し入れている。
ブレンドンも苦い表情だが、追い返したりはせずに母親を気遣っている。そのことを理由に揶揄れたりしているが、そういう者にはブレンドンは拳で返してきた。
ジハンギルに母親のことを言われた時は凄まじい喧嘩となった。
ジハンギルは母親のことをからかった訳ではないが、愛想のない口調と表情が誤解を生んだらしく、双方ともに口よりも手が出る方が早い性格が災いしての喧嘩だった。
少年とはいえそこいらの大人ではまるで敵わないので、結局カールーンとスライが仲裁の為に割って入る羽目となった。
花街で育った所為か口も悪く、ジハンギルとは度々些細なことで喧嘩になるが、何故かよく一緒にいる。
今も喋り続けるスィムナールに呆れたような視線を向けて、ブレンドンが何か相槌を打っている。ナイジェルはそれが楽しいのか嬉しそうに微笑んでいる。
そこに別の大隊の小隊長がナイジェルに話しかけてきた。
スライは眉を顰めた。
バハディル・ラスロというフェルガナ帝国が大陸全土を支配下に置いていた時代から続く名門貴族の出でやたらと家柄をひけらかす、あまり素行の良くない男だ。
偉丈夫で艶のある褐色の髪に灰色の瞳で容貌は貴族的で端正な顔だが、ニヤニヤと嫌な笑いを顔に張り付けている。
「お前か、エルギン辺境伯の甥というのは?」
「はい、そうですが」
素直に答えるナイジェルを値踏みするようにジロジロと見る。
「お前、父親が誰か分からないんだってな」
ナイジェルはさあっと音が聞こえそうなほど蒼褪めて悲しそうに俯いた。
「ガーランド家と言えば名門だ、そこの娘が父親の分からない子供を産むとはな。お前の母親という女は相当」
「バハディル小隊長、いくらなんでもそういう言い方はないんじゃないですか?」
バハディルの言葉を遮ったのはスィムナールだった。
ニコニコと笑顔を浮かべながら言うスィムナールに不愉快そうに睨む。
「なんだ貴様は」
「スィムナールと言います。従卒相手に小隊長が大人げないですよ」
顔は笑顔だが、目がまるで笑っていない。
「確かに見識を疑うな」
むっつりとした顔で、冷ややかにジハンギルは言う。
「バハディル小隊長、それは遠まわしに俺に喧嘩を売っているのですか」
下から睨み上げるブレンドンは物騒な気配を漂わせていた。
「貴様ら!」
バハディルは剣の柄に手を掛けるが、後ろから彼の小隊の者だろう数人に止められた。
多くの人間がいる食堂という場でもあるが、この三人は若いが他の大隊にも知られるくらい剣士として優秀だった。
バハディルは小隊長の地位にいるだけあってそれなりの腕前は持っているが喧嘩になれば、叩きのめされるのはバハディルだろう。
「スライ小隊長、もう少し部下の躾けに気を遣ったらどうだ!」
怒りの矛先を向けられたスライは首を竦めて嗤う。
「そうですな。仲間を助けろとは教えていますが、仲間を貶める人間に刃向うなとは教えてませんから」
バハディルはスライに反論され顔を紅潮させて睨んできたが、それ以上は何も言わず食堂から出ていった。
その後ろ姿を睨んでいたブレンドンは顔をナイジェルに向けて同情と少しの軽侮が混じった表情を浮かべる。
「お前も相手が上官だからって、母親の悪口を言われたんだぞ。少しは反抗したらどうだ」
「……本当のことですから」
青白い顔のまま、力なく微笑むナイジェルに更に言い募ろうとしたブレンドンをジハンギルが止めた。
ナイジェルは仕事がありますからと断ると席を立って行ってしまった。ブレンドンは不満そうに舌打ちをする。 ジハンギルは無言のままで、スィムナールはそんなブレンドンを宥めている。
離れた席からその様子を見ていたスライは溜息をついた。
「あれでは、長く持たないな」
隣に座っていたカールーンが呟く。
スライは苦い表情でカールーンの呟きを聞いていた。
食堂での件もあり、ナイジェルは周りに大人しく気の弱い少年だと思われていた。その認識が覆る事件が起きたのはナイジェルがエルギンに来てから半年が経った頃だ。
原因となったのは厩舎での出来事だった。
その日、スィムナールは自身の馬の世話をしようと馬房に来るとナイジェルが一人で厩舎の掃除をしていた。
「ナイジェル、他の奴らは?」
ナイジェルは困ったように笑うと
「他の仕事があると出ていきました」
スィムナールは渋い顔を作った。
「馬の世話は騎兵にとって重要な仕事だぞ。それを放り出していくなんて。ナイジェル、ちゃんと言ったのか?」
「はい」
恐らく大人しいナイジェルに面倒な掃除を押し付けたのだろう。スィムナールは舌打ちをすると道具を手に取り、自分も掃除を始めた。
申し訳なさそうに謝るナイジェルを笑顔で今度からは気をつけろよと肩を軽く押しながら叱る。
そこにブレンドンとジハンギルが馬の世話にやってきた。スィムナールが掃除をしているのに驚いたが、理由を聞いて二人とも怒気に顔を歪める。
「……野郎ども、後で絞める」
「馬は大事な相棒だ。それを蔑ろにするとはな。騎兵としての心構えを疑うな」
ジハンギルにしては長く喋っていた。それだけ馬に対する思い入れが強いのだろう。
二人も同様に掃除を始める。
暫くすると厩舎の外に人影が立った。
「ナイジェル?」
エルギン砦は上は辺境伯から、下は厨房の下働きまでほぼ男ばかりの集団で、女性も少数ながら働いているが年のいった寡婦ばかりだ。そんな華やかさとは無縁な中で、不釣り合いな可愛らしい少女の声だった。
声に相応しい愛くるしい容姿の持ち主で、濃い蜂蜜色の腰まで伸ばした巻き毛の頭には布を撒いていて、菫色の瞳は星のように輝いていた。
小柄だがしなやかな肢体に綺麗な刺繍が施された綿の服を纏っている。
ブレンドンは少女を見るといつもは苦虫を噛み潰した表情をしているのに珍しく頬を緩めた。
少女はナイジェルを認めると嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ポーシャ……」
エルギン砦の食堂を仕切っている厨房長の娘で時々父親の使いで訪れる。明るく可愛らしい少女なので、若い兵士に人気がある。
「ここにいたのね。これこの間の御礼なの、食べて」
「いいのに」
断ろうとするナイジェルの手に持っていた駕籠を押し付ける。中から美味しそうな匂いがする。
「ナイジェル痩せているもの、たくさん食べないとね!」
「じゃあ、ありがたく頂きます」
「うん、じゃあね。駕籠はあとで返してくれればいいから!」
花が咲いたような笑顔を見せて、踵を返してこちらを振り向く。
スィムナールたちが見ていることに気付いて恥ずかしいのか頬を紅潮させている。
横を通る時にぺこりと会釈をすると軽やかな身のこなしで厩舎から出て行ってしまった。
「ポーシャと知り合いだったのか?」
「はい、この間外におつかいに出た時荷物を持ってあげたんです」
「ふうん?」
スィムナールは首を捻った。
その程度のことで態々お礼の品を持ってくるのかと考えていると横でブレンドンが座り込んで落ち込んでいた。
「……なんでナイジェルなんだ」
「あの娘、俺達は馬と一緒だったらしいな。まるで眼中にない」
「悲しい事実を冷静に分析するなよ、ジハンギル」
「くっ! ナイジェルと俺、どこが違うっていうんだ」
「ブレンドンのように凶悪な顔だったら、普通の娘なら怯えるだろう」
「テメエに凶悪なんて言われたくねえ!」
怒りに任せてジハンギルに殴りかかる。ジハンギルは寸前で躱す。数発は躱していたが、回し蹴りを腕で防御すると流石に腹が立ったのか反撃し始めた。
段々激しい応酬となってきたが、ナイジェルとスィムナールはいつもの喧嘩なので放っておくことにした。
籠の中を見ると小麦粉の生地で肉と野菜の餡を包んで揚げたものだった。
ナイジェルが勧めてくれたので一つ手に取り、遠慮なく齧り付く。
「俺、そんなに心配されるほど痩せてますかね?」
食べる手を止めてまじまじとナイジェルの顔を見つめる。どう考えてもこれを渡すための言い訳を本気にしているらしい。
「普通だろう」
そう言うとナイジェルは不思議そうに首を捻っている。
こいつとんでもなく鈍い奴だったのかと唸りながら厩舎の外に視線をやるとバハディルがこちらを睨んでいた。
なんだろうと思って見ていると厩舎から出て行ったポーシャに嫌らしい笑顔で近づき、話しかけている。
ポーシャは明らかに迷惑そうな様子でお辞儀をすると脇をすり抜けて門の方へ走って行ってしまった。
行ってしまったポーシャに舌打ちをしてまたこちらを睨む。
そのバハディルの行動にスィムナールは眉を顰め、ナイジェルに忠告する。
「……ナイジェル、バハディルに気をつけろよ」
「はい? 何故ですか」
スィムナールはナイジェルの屈託のない顔を見つめる。説明しても恐らく理解できそうもないと判断して何でもだと強く言った。
分かりましたと素直に返事をするナイジェルに満足すると掃除をさぼっていた従卒たちが戻って来ていた。
ジハンギルとブレンドンの殴り合いの喧嘩を見て硬直している。
スィムナールは最後の一口を飲み下すと剣呑な笑みを浮かべ、二人の喧嘩を止めることにした。
これから従卒たちをみっちりと躾けなければならないからだ。
それから暫くして、大隊合同の剣術の演習が行われた。
バハディルの大隊とも一緒だったので嫌な予感がしたが、それが的中した。
「俺が稽古をつけてやろう」
バハディルが歪んだ笑みを浮かべてナイジェルを引き摺って行った。
「バハディル小隊長、従卒はまず弩と槍を覚えさせなければならないのですよ」
ナイジェルが引き摺られて行くのに最初に気付いたスィムナールがやんわりとバハディルを押し止める。
「ふん、可笑しなことを言う。弓や槍は普段やっているだろうが、こういう機会に剣術の稽古をつけてやるのは悪いことではなかろう」
「ですが、まだナイジェルは剣も支給されていませんよ」
「こんな御大層な剣を二本も持っていてか?」
そう言ってバハディルは部下に目配せすると部下の一人がナイジェルの剣を持っていた。
困ったような表情を浮かべていたナイジェルの顔からすっと表情が消え、砂色の瞳が翡翠色に揺らめく。
「私物を勝手に探ったんですか」
渋い表情になるスィムナールをバハディルは鼻で笑う。
「部下の素行を調べるのは上官の仕事だぞ。剣も支給されていない従卒ごときが生意気な。辺境伯の甥だから好い気になっているんじゃないか?」
「ナイジェルはバハディル小隊の者ではないだろう。それに剣の選択は各個人の自由だと思ったがな。持ち込むことを禁止している規則はないはずだ」
カールーンが口を挟む。
剣術はそれぞれ特性があるので、武器の選択は自由だ。
一応、標準的な刀剣が支給され、多くの兵士がそれを使っているが、一部の兵士は自分に合った剣を使っている。
「戦場にも立ったことのない従卒ごときが武人の魂などと嘯くのは片腹痛いわ」
そういうと二本の剣をナイジェルの足元に投げ出した。その二本の剣はナイジェルが毎日丁寧に磨いていた物だ。
随分変わった形だったのでスィムナールが質問したことがある。
誰にもらったものかと聞くと剣の師匠だという。見せてくれというと真剣な表情で首を振る。
これは武人の魂が込められたものだから、軽々しく人に触れさせるものではないと師匠に言われたらしい。
それを聞いて周りからは失笑が起こった。
ナイジェル自身は気にせず、これも師匠に貰った物だという変わった砥石で手入れを続けていた。
スィムナールは傍にいたブレンドンと顔を見合わせた。二人ともに自分に合った剣を使っているので、何となくナイジェルの気持ちが分かった。
ナイジェルとバハディルの諍いを兵士たちは面白そうに見ている者もいるがバハディルに絡まれているナイジェルを気の毒そうに見ている者もいる。
ナイジェルは無言のまま剣を拾い上げる。
鞘に傷がないか確認して、剣を引き抜く。優美な波紋の浮いた剣は冴え冴えとした光を放っていた。
問題がないことを確かめてから鞘に戻し、おもむろに革ベルトの内側に二本とも差し込んだ。
「おい、貴様何をしている」
「謝れ」
「何?」
「謝れと言っている」
「貴様、なんだその口の利き方は!」
「ナイジェル止せ。バハディル殿もナイジェルは私の小隊の者だ。勝手なことをされては困る」
事態に気付いたスライがバハディルとナイジェルの間に割って入る。
「スライ小隊長、危ないですから退いて下さい」
思わぬナイジェルの発言にスライは唖然とナイジェルを見つめた。
今まで見たことのない冷厳な表情で言うナイジェルに認めたくはないことだが気圧された。それでもなお説得を試みようとしたスライをカールーンが止めた。
「ナイジェルの好きにやらせろ」
バハディルは真っ赤になってナイジェルを睨み付けている。
「小僧がいい気になるなよ」
「後ろの奴ら。お前らもこれに触ったな。ならば剣を抜け」
ナイジェルはバハディルを無視してバハディルの後ろにいる部下たちを睨み付ける。
「貴様が辺境伯の甥だからと言って俺は手加減せんぞ!」
ナイジェルは不思議そうに首を傾げるとゆっくりと口角を上げた。
見る者全てを凍り付かせるほどの冷たい微笑みだった。
「戦場で敵がそんなことで手加減などしてはくれないだろう。それに俺は一度も伯父の名を出したことなどないがな」
「こ、この」
「抜け」
厳しい口調で言い放つとナイジェルは二本の剣を引き抜いた。
釣られてバハディルが剣を抜いた瞬間、ナイジェルは一気に距離を詰めると右手の剣でバハディルの剣を跳ね上げると空いた脇腹に峰に返した左手の剣を逆手で叩き込んだ。
声も無く崩れ落ちるバハディルには見向きもせずに背後にいたバハディルの部下たちを見る。
慌てて剣を引き抜いた部下たちを次々と峰に返した剣で倒していった。
あまりの早業に周りの者は茫然と立ち尽くしていた。
スライは言葉を失っていた。カールーンも自分が焚き付けたことではあるが、ここまでと思っていなかったらしく顔色を失っている。
「スライ小隊長、お騒がせしてすみません」
穏やかに笑うナイジェルを見てスライは肺に溜まった空気をゆっくりと息を吐き出した。
「……いや、いい。バハディル小隊長は稽古だと言っていたからな」
呻き声をあげて、地面に転がるバハディルを見て皮肉を込めた口調で言う。
「喧嘩であればナイジェルにも罰を与えるところだが、稽古で従卒に叩きのめされたんだ。文句も言えまい」
「恥の上塗りだからな」
厳しく言うカールーンはナイジェルをこれまでとは違う奇妙な眼差しで見ていた。
感動しているようでもあり、自分の不明を恥じているようでもあった。
この日を境にナイジェルの評価は一変した。
馬鹿にしたような眼で見られることはなくなり、ナイジェルに時折仕事を押し付けていた従卒たちも神妙な態度になった。
ナイジェル自身は態度を変えることはなかった。
スライがどうやってその剣技を身につけたのか質問して分かったのだが、ナイジェルが誰よりも早く起きて一人で剣の修行をしていた。
従卒は朝早くから仕事があるので気付けなかったのだが、ここに来てからもずっと続けているらしい。
ナイジェルの評価は変わっても、食事を囲む顔ぶれは変わらない。
別の意味で近づき難い存在になってしまったようだ。
「ナイジェル、今度俺達と剣で立ち合いしてくれよ」
スィムナールが軽い口調で話しかけてきた。
「いいですけど」
食事の手を止めてナイジェルが首を傾げる。
「お前の実力を知りたい」
ジハンギルが真面目な口調で言う。
「三つも下の人間に負けるとは思わないがな」
首を竦めながらブレンドンが無愛想に言った。
「三人全員ですか?」
「ああ、別々の日にでも」
「俺は三人一緒に相手しても構いませんよ」
スィムナールがまじまじとナイジェルを見る。
ジハンギルは滅多に感情を出さない顔を引きつらせ、ブレンドンはこれ以上ないくらい不機嫌そうにむっつりと黙り込んだ。
それを聞いていた周りも苦笑を浮かべかけたがどうしても引き攣った笑いにしかならなかった。大言壮語と笑い飛ばすには鮮やか過ぎるほどの剣技を見せていたからだ。
周りの様子に気づいたナイジェルは笑みを浮かべると
「冗談なんですけど」
「あのなあ」
がっくりと肩を落とすスィムナールは彼らしくも無くそれ以上返す言葉が続かなかった。
「ナイジェル、お前は冗談を言わない方がいい」
ジハンギルに真面目な口調で言われて、ナイジェルは不本意そうに眉を寄せる。
その表情が子供っぽく膨れているように見えて、スライは噴出した。隣にいたカールーンも顔を背けて小刻みに肩を震わせている。
初めて、ナイジェルの年齢相応の表情を見た気がした。
それ以降ナイジェルは数々の武功をを立て、瞬く間に大隊長となった。剣技だけではなく統率力もあり、部下に対しては情が深く、不思議と人を惹きつけた。
スライ自身少年だったナイジェルに既にあの時魅了されていたのかもしれない。
「貴方には色んな意味で驚かされていますから」
昔を思い出しているのかしみじみと言うスライにナイジェルはそうなのかと首を捻っている。
子供の頃から変わらない仕草を見てふっと笑みを漏らす。
「それよりも卵のままなら問題はないが、孵ったとなると怯える者も出てくるだろうな」
「そうですね。ユタ殿には檻にでも入れておいてもらいましょう」
「あいつごと入れたい気分だがな」
憮然として言うナイジェルに気持ちは分かるのでスライは苦笑しただけだった。
他の辺境防備隊もそうだが、五千の騎兵すべてが職業軍人で身分の別なく従卒から入る。
馬術や剣術の試験を受けて合格した者のみ採用されるが、他に大隊長以上の者の推薦があれば、試験を受けずに入ってこられる。
平民の出世の方法としては王立学問所に入って、公証人や書記を目指すものと辺境防備隊に入って大隊長を目指す二通りのやり方がある。
王立学問所は王立学問院の下部組織で法を中心に様々な教育を施す機関だ。
ただ、王立学問所はかなりの額の学費を納めなければ入れないため、ある程度の財力のある者でないと入ることは難しい。その点辺境防備隊は食事や服は支給され、わずかであるが従卒でも俸給がもらえる。
辺境伯は、国王や摂政、元老の承認が必要な為か平民でなった者はいないが、大隊長であれば何人もいる。
貧しい階級の少年たちが憧れる職業でもある。
当時、小隊長をしていたスライはバスターに呼び出された。丁度春先ということもあり、配属される従卒のことだろうかと考えていた。
辺境伯の執務室の重厚な装飾が施された扉の前で名乗ると短い応えがあり、室内に入る。
「失礼致します」
バスターは座って何か書類を見ていた。
「態々すまんな。座ってくれ」
スライは軽く頭を下げるとバスターの前に座る。
「多分、察しはついていると思うが、今年配属される従卒のことだ」
そう言って、スライに一枚の書類を渡してくる。
二十人ほどの名前が書かれており、名前の横には配属先の小隊長の名前が書かれている。
スライは僅かに首を捻る。自分の小隊に配属されるのは三人だが、名前から察するに特別な配慮が必要な良家の者は入っていないように見える。
数年前、メルヴィン王子がカーマーゼン辺境防備隊に入ったことはエルギンでも話題になった。
流石に王族を従卒として使う訳にもいかず、最初から騎兵としての採用だったが。メルヴィン王子の剣の腕前は有名だったので、さほど反発はされなかったようだ。
珍しいことにバスターはやや逡巡するような素振りを見せる。
「そこにあるナイジェル・イスハークという者は儂の妹の子でな」
スライは表情を変えないようにするのに少々努力が要った。
上官としてバスターは有能かつ身分や出身による差別をしない人間だったので尊敬していた。スライに身内を贔屓するよう言うつもりなのかと内心がっかりした。
スライの心の内を察したのだろう、バスターは苦笑いを浮かべる。
「お主の考えていることは分かるつもりだ。スライ、お主は公明正大で温厚な人間だと思っている。ナイジェルを他の子供と同じに扱って欲しい」
「同じで宜しいのですか?」
どうしても皮肉な口調になってしまった。
「構わない。あれが入ってくれば、その意味が分かるだろう」
まるで謎かけのような物言いで、話はそれだけだと言って退出を促す。
納得はいかなかったが、丁重に挨拶をするとバスターの執務室から出る。
バスターの言った言葉の意味を考えながら歩いていると、廊下を曲がったところで同僚のカールーンに出くわした。
傍らには今年従卒から騎兵になったばかりのカールーンの親族で十六になったばかりのジハンギルが従っていた。
カールーンと同じ黒髪黒い瞳に赤銅色の肌の持ち主で、あまり愛想のない少年だ。まだ十六歳だが既にスライと同じくらいの背丈で、これから更に背が伸びそうだ。
カールーンの一族は弓と馬術に特に秀でたオグズという名の一族でベンネビス山脈東峰からダーラン海東海岸の地域で遊牧をして生計を立てていた遊牧民だった。その武力でどこにも支配されない遊牧民でもあったが、二十年ほど前アジメール王国の支配下にはいり、軍人として仕えるようになった。
誇り高く扱いづらい男たちだ。
「どうかしたのか、渋い顔をして」
「そんなに分かりやすく出ていたか?」
スライは苦笑して顔を撫でると、カールーンにバスターに言われたことを話した。この同僚の反応を知りたかったからだが、予想通り無表情の顔に皺が寄る。
「閣下も人の子と言うことですね」
ぼそりと言ったのはジハンギルだった。
カールーンはジハンギルの発言に少し眉を動かしただけで、特に咎めなかった。もっと手厳しいことを考えているのだろう。
スライもジハンギルを窘める立場にあるが、苦笑して他の者の前で言うなよと言っただけだった。
数日が経ち、その日は新たな従卒たちが入る予定だった。各地から騎兵になる為に試験を受け合格した少年たちが中庭に集められていた。
上昇志向の強い少年たちだ、期待と不安の混ざった表情で大隊長が話す辺境防備隊での規則や心得を真剣に聞いている。
スライは説明している大隊長の後ろで少年たちを眺めていた。隣にはカールーンが立っている。
「珍しいな。お前も従卒を引き受けるのか?」
カールーンはとにかく部下に容赦がない。特に馬術の訓練は厳しいことで有名で付いて行けずに辞める従卒が後を絶たず、ここしばらくは彼の小隊に従卒が入ったことはない。
「いいや、新しい仲間の顔を覚えようと思ってな」
口の端を少しだけ持ち上げる。バスターの甥のナイジェルを見に来たのだろう。
説明が終わり、スライの前に連れてこられた三人は緊張しているようだった。一人は後ろに父親が付いて来ていた。
大人しい感じの少年で、肌の白い中々綺麗な顔立ちだった。
スライは僅かに顔を歪ませ、隣に立つカールーンは盛大に眉を顰めている。
案の定、この少年がナイジェルだった。カールーンは踵を返して、どこかに行ってしまった。
ナイジェルの隣に立つ二人の少年もここまで父親が付いて来ていることに馬鹿にしたような表情を浮かべている。
「ハイル」
背後から声を掛けられ、振り返るとバスターが穏やかな笑顔を浮かべ立っていた。
「義兄上、お久しゅうございます」
ハイルと呼ばれたナイジェルの父親も人の良さそうな顔に笑顔を浮かべる。
「ここまで遠かったであろう。ご苦労だったな」
「いいえ、――それほどでも」
どこか困ったように言い澱むハイルに何かを察したのか苦笑を浮かべる。
「ナイジェル、久しぶりだな」
愛情のこもった視線でバスターはナイジェルを見る。
「はい、伯父上もお元気そうで何よりです」
目を伏せ、酷く大人びた表情で笑うナイジェルを何と思ったのかバスターは寂しそうな顔になる。
何か言いたそうであったが、口から出た言葉は頑張りなさいという励ましだった。ナイジェルの肩に手を置いて、二、三度軽く叩くとそのままハイルを連れて建物の中に入って行った。その様子を見ていた周りもさざめいていた。
傍らで見ていた少年二人も辺境防備隊の長である辺境伯の態度に驚いたようで口空けたままナイジェルを見ていた。
スライはこれからのことを思うと頭が痛かった。
「スライ、新しく入った従卒は見込みがありそうか?」
食事の最中、同じ大隊の小隊長が聞いてくる。
ナイジェルがバスターの甥であるということは瞬く間にエルギン辺境防備隊の中に知れ渡っていた。
「……まあまあだな」
苦笑を浮かべる。
ナイジェルがどんな我が儘を言い出すのかと懸念していたのだが、それは杞憂にだったようだ。
言いつけられた雑用も嫌がらずに黙々とこなし、訓練にもちゃんと付いて来ている。
向上心が強く、それ故に血気盛んな者が多い中でナイジェルは物静かな少年で少々変わっていると言える。
少し離れたところに座って食事をするナイジェルを見る。
同期で入った他の従卒たちはナイジェルを馬鹿にしていて話しかけず、同じ小隊の者も辺境伯の甥であるナイジェルを扱いづらいのか距離を置いている。
そんな中でナイジェルに盛んに話しかけているのはこの間騎兵に昇格したばかりのスィムナールでその隣にはジハンギルとブレンドン・トランバイテスという少年が座っていた。
随分個性的な連中に囲まれているなとスライは苦笑する。
ブレンドンは癖のある金髪と空色の瞳をした少年で顔立ちは端正だが、いつも苦虫を噛み潰したような表情をしている。
父親は代々公証人をしている家柄でエルギン近くにあるナイトンという町の名士であるが、母親は正式な妻ではなく花街の娼婦だった。
物心つくまで花街で育ったが、正妻の方に子供が生まれず後継ぎとして引き取られたのだが、それに不満だった正妻によって酷い虐待を受けた。
最初は可愛がっていた父親もそんな妻に影響されたのか、疎んじるようになり、結局捨てられるようにここに入ってきた。
そんなブレンドンを心配してか、時々母親が訪れる。娼婦だったという割に地味な身なりで菓子や下着などを差し入れている。
ブレンドンも苦い表情だが、追い返したりはせずに母親を気遣っている。そのことを理由に揶揄れたりしているが、そういう者にはブレンドンは拳で返してきた。
ジハンギルに母親のことを言われた時は凄まじい喧嘩となった。
ジハンギルは母親のことをからかった訳ではないが、愛想のない口調と表情が誤解を生んだらしく、双方ともに口よりも手が出る方が早い性格が災いしての喧嘩だった。
少年とはいえそこいらの大人ではまるで敵わないので、結局カールーンとスライが仲裁の為に割って入る羽目となった。
花街で育った所為か口も悪く、ジハンギルとは度々些細なことで喧嘩になるが、何故かよく一緒にいる。
今も喋り続けるスィムナールに呆れたような視線を向けて、ブレンドンが何か相槌を打っている。ナイジェルはそれが楽しいのか嬉しそうに微笑んでいる。
そこに別の大隊の小隊長がナイジェルに話しかけてきた。
スライは眉を顰めた。
バハディル・ラスロというフェルガナ帝国が大陸全土を支配下に置いていた時代から続く名門貴族の出でやたらと家柄をひけらかす、あまり素行の良くない男だ。
偉丈夫で艶のある褐色の髪に灰色の瞳で容貌は貴族的で端正な顔だが、ニヤニヤと嫌な笑いを顔に張り付けている。
「お前か、エルギン辺境伯の甥というのは?」
「はい、そうですが」
素直に答えるナイジェルを値踏みするようにジロジロと見る。
「お前、父親が誰か分からないんだってな」
ナイジェルはさあっと音が聞こえそうなほど蒼褪めて悲しそうに俯いた。
「ガーランド家と言えば名門だ、そこの娘が父親の分からない子供を産むとはな。お前の母親という女は相当」
「バハディル小隊長、いくらなんでもそういう言い方はないんじゃないですか?」
バハディルの言葉を遮ったのはスィムナールだった。
ニコニコと笑顔を浮かべながら言うスィムナールに不愉快そうに睨む。
「なんだ貴様は」
「スィムナールと言います。従卒相手に小隊長が大人げないですよ」
顔は笑顔だが、目がまるで笑っていない。
「確かに見識を疑うな」
むっつりとした顔で、冷ややかにジハンギルは言う。
「バハディル小隊長、それは遠まわしに俺に喧嘩を売っているのですか」
下から睨み上げるブレンドンは物騒な気配を漂わせていた。
「貴様ら!」
バハディルは剣の柄に手を掛けるが、後ろから彼の小隊の者だろう数人に止められた。
多くの人間がいる食堂という場でもあるが、この三人は若いが他の大隊にも知られるくらい剣士として優秀だった。
バハディルは小隊長の地位にいるだけあってそれなりの腕前は持っているが喧嘩になれば、叩きのめされるのはバハディルだろう。
「スライ小隊長、もう少し部下の躾けに気を遣ったらどうだ!」
怒りの矛先を向けられたスライは首を竦めて嗤う。
「そうですな。仲間を助けろとは教えていますが、仲間を貶める人間に刃向うなとは教えてませんから」
バハディルはスライに反論され顔を紅潮させて睨んできたが、それ以上は何も言わず食堂から出ていった。
その後ろ姿を睨んでいたブレンドンは顔をナイジェルに向けて同情と少しの軽侮が混じった表情を浮かべる。
「お前も相手が上官だからって、母親の悪口を言われたんだぞ。少しは反抗したらどうだ」
「……本当のことですから」
青白い顔のまま、力なく微笑むナイジェルに更に言い募ろうとしたブレンドンをジハンギルが止めた。
ナイジェルは仕事がありますからと断ると席を立って行ってしまった。ブレンドンは不満そうに舌打ちをする。 ジハンギルは無言のままで、スィムナールはそんなブレンドンを宥めている。
離れた席からその様子を見ていたスライは溜息をついた。
「あれでは、長く持たないな」
隣に座っていたカールーンが呟く。
スライは苦い表情でカールーンの呟きを聞いていた。
食堂での件もあり、ナイジェルは周りに大人しく気の弱い少年だと思われていた。その認識が覆る事件が起きたのはナイジェルがエルギンに来てから半年が経った頃だ。
原因となったのは厩舎での出来事だった。
その日、スィムナールは自身の馬の世話をしようと馬房に来るとナイジェルが一人で厩舎の掃除をしていた。
「ナイジェル、他の奴らは?」
ナイジェルは困ったように笑うと
「他の仕事があると出ていきました」
スィムナールは渋い顔を作った。
「馬の世話は騎兵にとって重要な仕事だぞ。それを放り出していくなんて。ナイジェル、ちゃんと言ったのか?」
「はい」
恐らく大人しいナイジェルに面倒な掃除を押し付けたのだろう。スィムナールは舌打ちをすると道具を手に取り、自分も掃除を始めた。
申し訳なさそうに謝るナイジェルを笑顔で今度からは気をつけろよと肩を軽く押しながら叱る。
そこにブレンドンとジハンギルが馬の世話にやってきた。スィムナールが掃除をしているのに驚いたが、理由を聞いて二人とも怒気に顔を歪める。
「……野郎ども、後で絞める」
「馬は大事な相棒だ。それを蔑ろにするとはな。騎兵としての心構えを疑うな」
ジハンギルにしては長く喋っていた。それだけ馬に対する思い入れが強いのだろう。
二人も同様に掃除を始める。
暫くすると厩舎の外に人影が立った。
「ナイジェル?」
エルギン砦は上は辺境伯から、下は厨房の下働きまでほぼ男ばかりの集団で、女性も少数ながら働いているが年のいった寡婦ばかりだ。そんな華やかさとは無縁な中で、不釣り合いな可愛らしい少女の声だった。
声に相応しい愛くるしい容姿の持ち主で、濃い蜂蜜色の腰まで伸ばした巻き毛の頭には布を撒いていて、菫色の瞳は星のように輝いていた。
小柄だがしなやかな肢体に綺麗な刺繍が施された綿の服を纏っている。
ブレンドンは少女を見るといつもは苦虫を噛み潰した表情をしているのに珍しく頬を緩めた。
少女はナイジェルを認めると嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ポーシャ……」
エルギン砦の食堂を仕切っている厨房長の娘で時々父親の使いで訪れる。明るく可愛らしい少女なので、若い兵士に人気がある。
「ここにいたのね。これこの間の御礼なの、食べて」
「いいのに」
断ろうとするナイジェルの手に持っていた駕籠を押し付ける。中から美味しそうな匂いがする。
「ナイジェル痩せているもの、たくさん食べないとね!」
「じゃあ、ありがたく頂きます」
「うん、じゃあね。駕籠はあとで返してくれればいいから!」
花が咲いたような笑顔を見せて、踵を返してこちらを振り向く。
スィムナールたちが見ていることに気付いて恥ずかしいのか頬を紅潮させている。
横を通る時にぺこりと会釈をすると軽やかな身のこなしで厩舎から出て行ってしまった。
「ポーシャと知り合いだったのか?」
「はい、この間外におつかいに出た時荷物を持ってあげたんです」
「ふうん?」
スィムナールは首を捻った。
その程度のことで態々お礼の品を持ってくるのかと考えていると横でブレンドンが座り込んで落ち込んでいた。
「……なんでナイジェルなんだ」
「あの娘、俺達は馬と一緒だったらしいな。まるで眼中にない」
「悲しい事実を冷静に分析するなよ、ジハンギル」
「くっ! ナイジェルと俺、どこが違うっていうんだ」
「ブレンドンのように凶悪な顔だったら、普通の娘なら怯えるだろう」
「テメエに凶悪なんて言われたくねえ!」
怒りに任せてジハンギルに殴りかかる。ジハンギルは寸前で躱す。数発は躱していたが、回し蹴りを腕で防御すると流石に腹が立ったのか反撃し始めた。
段々激しい応酬となってきたが、ナイジェルとスィムナールはいつもの喧嘩なので放っておくことにした。
籠の中を見ると小麦粉の生地で肉と野菜の餡を包んで揚げたものだった。
ナイジェルが勧めてくれたので一つ手に取り、遠慮なく齧り付く。
「俺、そんなに心配されるほど痩せてますかね?」
食べる手を止めてまじまじとナイジェルの顔を見つめる。どう考えてもこれを渡すための言い訳を本気にしているらしい。
「普通だろう」
そう言うとナイジェルは不思議そうに首を捻っている。
こいつとんでもなく鈍い奴だったのかと唸りながら厩舎の外に視線をやるとバハディルがこちらを睨んでいた。
なんだろうと思って見ていると厩舎から出て行ったポーシャに嫌らしい笑顔で近づき、話しかけている。
ポーシャは明らかに迷惑そうな様子でお辞儀をすると脇をすり抜けて門の方へ走って行ってしまった。
行ってしまったポーシャに舌打ちをしてまたこちらを睨む。
そのバハディルの行動にスィムナールは眉を顰め、ナイジェルに忠告する。
「……ナイジェル、バハディルに気をつけろよ」
「はい? 何故ですか」
スィムナールはナイジェルの屈託のない顔を見つめる。説明しても恐らく理解できそうもないと判断して何でもだと強く言った。
分かりましたと素直に返事をするナイジェルに満足すると掃除をさぼっていた従卒たちが戻って来ていた。
ジハンギルとブレンドンの殴り合いの喧嘩を見て硬直している。
スィムナールは最後の一口を飲み下すと剣呑な笑みを浮かべ、二人の喧嘩を止めることにした。
これから従卒たちをみっちりと躾けなければならないからだ。
それから暫くして、大隊合同の剣術の演習が行われた。
バハディルの大隊とも一緒だったので嫌な予感がしたが、それが的中した。
「俺が稽古をつけてやろう」
バハディルが歪んだ笑みを浮かべてナイジェルを引き摺って行った。
「バハディル小隊長、従卒はまず弩と槍を覚えさせなければならないのですよ」
ナイジェルが引き摺られて行くのに最初に気付いたスィムナールがやんわりとバハディルを押し止める。
「ふん、可笑しなことを言う。弓や槍は普段やっているだろうが、こういう機会に剣術の稽古をつけてやるのは悪いことではなかろう」
「ですが、まだナイジェルは剣も支給されていませんよ」
「こんな御大層な剣を二本も持っていてか?」
そう言ってバハディルは部下に目配せすると部下の一人がナイジェルの剣を持っていた。
困ったような表情を浮かべていたナイジェルの顔からすっと表情が消え、砂色の瞳が翡翠色に揺らめく。
「私物を勝手に探ったんですか」
渋い表情になるスィムナールをバハディルは鼻で笑う。
「部下の素行を調べるのは上官の仕事だぞ。剣も支給されていない従卒ごときが生意気な。辺境伯の甥だから好い気になっているんじゃないか?」
「ナイジェルはバハディル小隊の者ではないだろう。それに剣の選択は各個人の自由だと思ったがな。持ち込むことを禁止している規則はないはずだ」
カールーンが口を挟む。
剣術はそれぞれ特性があるので、武器の選択は自由だ。
一応、標準的な刀剣が支給され、多くの兵士がそれを使っているが、一部の兵士は自分に合った剣を使っている。
「戦場にも立ったことのない従卒ごときが武人の魂などと嘯くのは片腹痛いわ」
そういうと二本の剣をナイジェルの足元に投げ出した。その二本の剣はナイジェルが毎日丁寧に磨いていた物だ。
随分変わった形だったのでスィムナールが質問したことがある。
誰にもらったものかと聞くと剣の師匠だという。見せてくれというと真剣な表情で首を振る。
これは武人の魂が込められたものだから、軽々しく人に触れさせるものではないと師匠に言われたらしい。
それを聞いて周りからは失笑が起こった。
ナイジェル自身は気にせず、これも師匠に貰った物だという変わった砥石で手入れを続けていた。
スィムナールは傍にいたブレンドンと顔を見合わせた。二人ともに自分に合った剣を使っているので、何となくナイジェルの気持ちが分かった。
ナイジェルとバハディルの諍いを兵士たちは面白そうに見ている者もいるがバハディルに絡まれているナイジェルを気の毒そうに見ている者もいる。
ナイジェルは無言のまま剣を拾い上げる。
鞘に傷がないか確認して、剣を引き抜く。優美な波紋の浮いた剣は冴え冴えとした光を放っていた。
問題がないことを確かめてから鞘に戻し、おもむろに革ベルトの内側に二本とも差し込んだ。
「おい、貴様何をしている」
「謝れ」
「何?」
「謝れと言っている」
「貴様、なんだその口の利き方は!」
「ナイジェル止せ。バハディル殿もナイジェルは私の小隊の者だ。勝手なことをされては困る」
事態に気付いたスライがバハディルとナイジェルの間に割って入る。
「スライ小隊長、危ないですから退いて下さい」
思わぬナイジェルの発言にスライは唖然とナイジェルを見つめた。
今まで見たことのない冷厳な表情で言うナイジェルに認めたくはないことだが気圧された。それでもなお説得を試みようとしたスライをカールーンが止めた。
「ナイジェルの好きにやらせろ」
バハディルは真っ赤になってナイジェルを睨み付けている。
「小僧がいい気になるなよ」
「後ろの奴ら。お前らもこれに触ったな。ならば剣を抜け」
ナイジェルはバハディルを無視してバハディルの後ろにいる部下たちを睨み付ける。
「貴様が辺境伯の甥だからと言って俺は手加減せんぞ!」
ナイジェルは不思議そうに首を傾げるとゆっくりと口角を上げた。
見る者全てを凍り付かせるほどの冷たい微笑みだった。
「戦場で敵がそんなことで手加減などしてはくれないだろう。それに俺は一度も伯父の名を出したことなどないがな」
「こ、この」
「抜け」
厳しい口調で言い放つとナイジェルは二本の剣を引き抜いた。
釣られてバハディルが剣を抜いた瞬間、ナイジェルは一気に距離を詰めると右手の剣でバハディルの剣を跳ね上げると空いた脇腹に峰に返した左手の剣を逆手で叩き込んだ。
声も無く崩れ落ちるバハディルには見向きもせずに背後にいたバハディルの部下たちを見る。
慌てて剣を引き抜いた部下たちを次々と峰に返した剣で倒していった。
あまりの早業に周りの者は茫然と立ち尽くしていた。
スライは言葉を失っていた。カールーンも自分が焚き付けたことではあるが、ここまでと思っていなかったらしく顔色を失っている。
「スライ小隊長、お騒がせしてすみません」
穏やかに笑うナイジェルを見てスライは肺に溜まった空気をゆっくりと息を吐き出した。
「……いや、いい。バハディル小隊長は稽古だと言っていたからな」
呻き声をあげて、地面に転がるバハディルを見て皮肉を込めた口調で言う。
「喧嘩であればナイジェルにも罰を与えるところだが、稽古で従卒に叩きのめされたんだ。文句も言えまい」
「恥の上塗りだからな」
厳しく言うカールーンはナイジェルをこれまでとは違う奇妙な眼差しで見ていた。
感動しているようでもあり、自分の不明を恥じているようでもあった。
この日を境にナイジェルの評価は一変した。
馬鹿にしたような眼で見られることはなくなり、ナイジェルに時折仕事を押し付けていた従卒たちも神妙な態度になった。
ナイジェル自身は態度を変えることはなかった。
スライがどうやってその剣技を身につけたのか質問して分かったのだが、ナイジェルが誰よりも早く起きて一人で剣の修行をしていた。
従卒は朝早くから仕事があるので気付けなかったのだが、ここに来てからもずっと続けているらしい。
ナイジェルの評価は変わっても、食事を囲む顔ぶれは変わらない。
別の意味で近づき難い存在になってしまったようだ。
「ナイジェル、今度俺達と剣で立ち合いしてくれよ」
スィムナールが軽い口調で話しかけてきた。
「いいですけど」
食事の手を止めてナイジェルが首を傾げる。
「お前の実力を知りたい」
ジハンギルが真面目な口調で言う。
「三つも下の人間に負けるとは思わないがな」
首を竦めながらブレンドンが無愛想に言った。
「三人全員ですか?」
「ああ、別々の日にでも」
「俺は三人一緒に相手しても構いませんよ」
スィムナールがまじまじとナイジェルを見る。
ジハンギルは滅多に感情を出さない顔を引きつらせ、ブレンドンはこれ以上ないくらい不機嫌そうにむっつりと黙り込んだ。
それを聞いていた周りも苦笑を浮かべかけたがどうしても引き攣った笑いにしかならなかった。大言壮語と笑い飛ばすには鮮やか過ぎるほどの剣技を見せていたからだ。
周りの様子に気づいたナイジェルは笑みを浮かべると
「冗談なんですけど」
「あのなあ」
がっくりと肩を落とすスィムナールは彼らしくも無くそれ以上返す言葉が続かなかった。
「ナイジェル、お前は冗談を言わない方がいい」
ジハンギルに真面目な口調で言われて、ナイジェルは不本意そうに眉を寄せる。
その表情が子供っぽく膨れているように見えて、スライは噴出した。隣にいたカールーンも顔を背けて小刻みに肩を震わせている。
初めて、ナイジェルの年齢相応の表情を見た気がした。
それ以降ナイジェルは数々の武功をを立て、瞬く間に大隊長となった。剣技だけではなく統率力もあり、部下に対しては情が深く、不思議と人を惹きつけた。
スライ自身少年だったナイジェルに既にあの時魅了されていたのかもしれない。
「貴方には色んな意味で驚かされていますから」
昔を思い出しているのかしみじみと言うスライにナイジェルはそうなのかと首を捻っている。
子供の頃から変わらない仕草を見てふっと笑みを漏らす。
「それよりも卵のままなら問題はないが、孵ったとなると怯える者も出てくるだろうな」
「そうですね。ユタ殿には檻にでも入れておいてもらいましょう」
「あいつごと入れたい気分だがな」
憮然として言うナイジェルに気持ちは分かるのでスライは苦笑しただけだった。
0
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