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第2章
2、新しい近衛大隊
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ナイジェルが新しい近衛大隊の長に就任してから半年が経過した。
エルギン辺境防備隊から四人の中隊長、十一人の小隊長、およそ三百人の騎兵が新しい近衛大隊に移ることになった。
エルギン辺境防備隊の長であり、ナイジェルの伯父でもあるバスターは近衛大隊に移る人数の多さに苦笑を浮かべ、最年長の大隊長カーディルは流石に眉を顰めていた。
ナイジェル自身は兵士たちを説得するようなことを行っていないにもかかわらずだ。
ナイジェルに次いで年若い大隊長のサーディーも最初は協力的だったが、子飼いの部下の一人が近衛大隊に移ることを示したため、最後は憎しみに満ちた視線を向けてきた。
「……存外、気付かないうちに綻びが生じていたのかもしれませんな」
そう言っていたのはカールーンだった。
エルギンだけではないが辺境防備隊は縦の繋がりだけでなく、横のつながり婚姻関係や一族の繋がりにより王家の支配から一種独立した組織を作り上げていた。
王太子が変則的な方法でナイジェルを取り込んだのも、辺境伯を挿げ替えただけでは辺境防備隊を支配できない事情もあった。
強固な組織である分だけ、閉塞感を感じる者も少なくなかったのかもしれない。
ナイジェルが大隊長をしていた第三大隊からはおよそ百人ほどが移ることになった。
「貴方が騎兵たちに直接説得に当たっていたら、もっと人数が増えていたかもしれませんよ」
皮肉というより唆すような口調だった。
ナイジェルは首を傾げ、微笑を浮かべた。
「そんなことしたら恨まれてしまうからな」
サーディー以外の大隊長は眉を顰めながらも仕方がないとある程度認めてくれている。
「まあ、サーディー大隊長については彼にも色々問題があったようですからな」
サーディーは大隊長になるだけあって、剣技も統率力も申し分なく備わっている男だが、多分に直情径行で強引なところがある。
近しい者に対してその傾向は強く、近衛大隊に移ることを希望してきた小隊長はそのことで長年悩んでいたとカールーンにこっそり打ち明けていた。
その小隊長は王都の出身で家族を呼び寄せてこちらで生活していたが、王都出身の老いた父母や妻も故郷を恋しがり、帰りたがっていたこともあってナイジェルの新しい部隊の件は渡りに船だったらしい。
ナイジェルに部隊を移ることを認められると小躍りせんばかりだった。
カールーンは苦笑して、サーディーの前では態度を自重するように忠告していた。
一通り兵士たちとの面談を終えるとナイジェルは部隊の編成と引継ぎをスィムナールたちに任せて王都に戻った。
グラントや王都からナイジェルについて来ていた近衛兵たちの他にバハディルと彼の部下たちも一緒だ。
バハディルの中隊からは五十人ほどの騎兵が近衛大隊に移ることになった。
「意外とバハディル中隊長は人望があるのだな」
笑いながら言うナイジェルに対して、バハディルは憮然とした表情を作った。
「それは皮肉ですか?」
「皮肉とは?」
不思議そうに首を捻るナイジェルに、バハディルはナイジェルから視線を逸らしてぼそぼそと呟いた。
「……従卒だった貴方を貶めるようなことを言ったでしょう」
「そういえば、そんなこともあったな。気にしていたのか?」
軽く目を見張り、意外そうな表情を作るナイジェルに何とも言えない顔で頷く。
「多少は」
そう言いながらも、バハディルは深く悔いている様子が伺えた。
苦悩に歪む表情を見て柔らかな微笑を浮かべる。
「そうか。――俺は情報収集に関してはバハディル中隊長を信頼している。期待応えてもらえるものと思っているが」
「無論、大いに期待して頂きたい」
胸を張って言い切るバハディルに苦笑を漏らした。
そのバハディルは出発前は矢鱈張り切っていたのに今は顔色も悪く俯き加減で馬を進めている。
「バハディル中隊長、顔色が悪いですよ。お腹でも壊しているんですか?」
そう声を掛けてきたのはベルナルドだった。
「……誰だお前は」
「いやだな、ベルナルド・メルツァーです。新しい同僚の顔を早くも忘れないで下さいよ」
「マルドンのメルツァー家の者か。それにまだお前は同僚じゃないだろう。放っておいてもらおう」
「分家の次男ですけどね。ナイジェル部隊長に許可をもらいましたので、心は既に新しい部隊の者です」
「ベルナルド、放っておけ。自業自得だ」
ナイジェルの冷ややかな声に増々バハディルは落ち込んでいく。
前日の報告も兼ねた打ち合わせの時にバハディルはひっかき傷を作って現れた。
周りはなんとなく事情が察せられたので黙っていたが、その事を欠片も察せられなかったナイジェルに心配そうに問い質された。
「バハディル中隊長、猫にでも引っ掻かれたのか?」
グラントとベルナルドは驚愕の眼差しでナイジェルを見て、スィムナールたちに視線を送る。
スィムナールたちは想定内だったのか、苦笑を浮かべ、少し気の毒そうな視線をバハディルに送っている。
バハディルは呻き声を上げたきり、ナイジェルが本気なのか、冗談を言っているのか判断できずに黙り込む。
事情を語ったのは、バハディルの中隊で小隊長の地位にいるオンソリという男だった。
「奥様に引っかかれたんですよ」
「奥方が?」
不思議そうに首を捻るナイジェルに苦笑しながら事情を話した。
バハディルには三人の妻がいた。
アジメールの法では平等に扱えるのであれば四人まで妻を娶ることを許している。
これは男の性を容認する為ではなく、戦争などで働き手を失った家族を救済する目的で決められた法律でだった。
辺境防備隊の中隊長以上の者の多くが複数の妻を娶っていて、二番目以降の妻は大抵戦死した同僚や部下の妻や娘だった。
幼い子供を抱えていたり、頼るべき男性親族がいなかったりすると生活していくのは難しいためだ。
婚姻自体、莫大な結納金が必要で事前に離婚時の財産分与も決められるうえ、すべての妻を平等に扱うという前提がある。
複数の妻を持つということはそれ自体妻子を養う財力などを必要とする。
バハディルの実家は名門であり、かつ裕福な家でもあった。
最初の妻はヴェーラという女性でロスレア平原の郷士で大馬主でもあるビコフ家の娘であった。
女傑と知られている女性で、豪快だが面倒見の良い性格もありエルギン辺境防備隊の兵士の妻たちのまとめ役も果たしている。
二番目の妻ヘザーは若くして夫が戦死し、幼い二人の子供を抱えて途方に暮れているところをヴェーラに相談しているうちにバハディルに見初められて妻となった。
三番目の妻ニルファーも似たような状況だった。
三人それぞれを愛してはいるが、元が女好きであることもあって偶に部下とともに花街に出ることもある。
年若い部下たちに奢ったりもしているので、妻たちはそれにめくじらを立てることも無く黙認していた。
辺境防備隊の兵士たちがよく使う酒場にシャノンという女が酌婦として入ってきた。
淡い金髪に切れ長の瞳はごく薄い水色で人目を引くほどの美女だった。
受け答えにも愛嬌もあり、たちまち人気者となった。
そのシャノンをバハディルは暫く前から口説いていたのだ。
だが、シャノンは酌婦にしては身持ちが固く、口説かれても笑顔で躱していた。
その態度が変わったのはバハディルが王都に行くことになったと言い始めた時だった。
シャノンは目を輝かせて王都のことを聞きたがった。
王都について来るかと言うと頬を染め、嬉しそうに微笑む。
その晩に関係を持ち、バハディルの裸の胸に頬を寄せ熱心に王都に連れて行ってくれるように強請り、王都に呼び寄せることを約束した。
流石に朝帰りになるとまずいので、夜遅くにはなったがバハディルは家に帰った。
これ以上ないくらい上機嫌で床に就いたが、寝入ってからしばらくすると揺さぶられた。
「…な様、旦那様。起きて下さいな」
「……起きませんね。どうしましょうかヴェーラ様」
「構いません。しっかり起こして差し上げなさいヘザー」
「はい……」
バリッと言う音とともに鋭い痛みが顔に走って、バハディルは飛び起きた。
何をする!と怒鳴りかけて目の前の状況に息を呑んだ。
三人の妻の他にもう一人女が傍らに座っていた。
先ほど別れてきたばかりのシャノンが、色白の顔を更に血の気がないほど白くさせ、項垂れて三人の妻たちに囲まれていたのだ。
ヴェーラは穏やかな微笑みを浮かべ、ヘザーは軽蔑の眼差しをバハディルに当て、ニルファーは身重の体で手巾をしきりに目元に当てている。
「わ、わたくしがいけないのですわ、こんなお腹だから旦那様に飽きられて」
そう言うとニルファーはわっと声を上げて泣き出した。
ヴェーラは大げさに目を見張ると魔神も裸足で逃げ出すほどの笑顔をバハディルに向ける。
「貴方の所為ではありませんよニルファー。旦那様は黴が生えた古女房がお気にいらないのでしょうね、わたくしのような」
「そんな!……ヴェーラ様あってのラスロ家ではありませんか。ニルファーのように若くも無く、ヴェーラ様のように聡くも無く、口うるさいだけのわたくしなど必要ないのかもしれません」
そう言ってヘザーは溜息をついた。
ごくりと息を呑んでバハディルはなんとか言い訳をしようと口を開きかけた。
「申し訳ありません」
シャノンは床に額をこすりつけて謝罪をする。
体が小刻みに震えていた。
「まあ、何が申しわけないのですか、シャノン。貴方は酌婦としての仕事をしていただけでしょう」
穏やかな口調でヴェーラは話しかけた。
「夫婦喧嘩に巻き込んでごめんなさいね。もう帰ってもいいのよ」
ヘザーも笑顔で促す、ニルファーも涙に濡れた顔を上げて頷く。
「……図々しいことを言っていると思います。それでもどうかわたしを王都までお連れ下さい!」
流石にヘザーは眉を顰め、ニルファーはシャノンを睨み付けている。
「貴方何を言っているの! 妻にでもなったつもりなの」
「バハディル様はお連れ下さると約束してくださいました」
三人の妻からの凄まじい視線にバハディルは首を竦めた。全身から汗が噴き出している。
「す、すまん。約束した」
ニルファーは奇声を上げてバハディルを叩き始め、ヘザーは泣き出してしまった。
ニルファーが出産を控えて動けないため、産み終えてしばらくたってから王都に家族は向かうことになっていたからだ。
「こうなったからにはその約束は無理でしょう。諦めなさいな」
「それでも……どうか、どうか!」
必死に食い下がるシャノンにヴェーラは顔を顰めた。
「貴方のことは色々と調べさせてもらいました」
シャノンは顔を上げて唇をわななかせる。
「弟さんがいるそうですね。書記のフマーイー様の所で働いているとか」
「弟は関係ありません!」
キッとヴェーラを睨み付ける。
「そうですか、王立学問所に入るそうですね。だから王都に行きたいのですか?」
シャノンは黙り込んで下を向いてしまった。
「王立学問所の学費は相当でしょう。下働きで働いているに過ぎない弟さんと酌婦の貴女では払えないでしょうに」
ヘザーが口を挟む。ヘザーの息子も王立学問所に入っている。
結納金やヘザーが必死で貯めてきたお金をすべて出しても足りず、バハディルが援助している。
息子はバハディルとは血の繋がりはないが、ヴェーラも快く応援してくれている。
「……少し貯めていたお金もありました。それに王都での生活費をバハディル様は出してくださるとそれを使うつもりでした」
ヘザーとニルファーは顔を見合わせて、シャノンに同情の視線を送る。
「ご迷惑をおかけしました。バハディル様の前にはもう現れませんのでお許しください」
そう言い残して、立ち上がるとふらふらと出て行こうとした。
ヴェーラは溜息をつくと
「まだ話は終わってませんよ。いいからお坐りなさい」
ヴェーラに言われて、黙ってまた座る。
普段は生き生きと輝いている瞳は生気を失い、廃人のようだった。
「この後どうするつもり?」
「……奥様には関係ないでしょう」
「旦那様はどうされたいのですか?」
「う……それは」
「この人に何かあれば、せっかくの王都行きの話が無くなってしまいますよ。ナイジェル様はとてもお優しい方ですもの。酌婦といえど、女性を踏みにじるような行為はお嫌いですからね」
バハディルは蒼い顔で黙り込んだ。
そんなバハディルの様子に苦笑すると
「仕方ありませんね。王立学問所の学費をこちらで出しましょう。結納金代わりに」
ポカンとしたようにシャノンは顔を上げてヴェーラを見つめている。
「ここであなたを追い出して、自死されたらそれこそ寝覚めが悪いですからね。シャノン、貴方は家事は出来ますよね」
「当然です」
ムッとしたように睨むシャノンに笑いかけると
「ニルファーはこの通り動けませんし、ヘザーもニルファーについていなくてはなりません。まだ小さい子供たちもいたので、王都に行けませんでしたが、貴方がいてくれれば、私は旦那様とともに王都に行けます。兄から工房の立ち上げを手伝って欲しいと言われてましたのでね」
ヴェーラの実家は辺境防備隊に軍馬を納入していた。
それとともに馬具の職人たちも多く抱えていた。
兄は商売熱心で新しい部隊の話にすぐにバハディルに仲介してくれるよう頼み、ナイジェルも王太子の許可が得られればと条件を出して了承していた。
「新しい家を探して、家具や調度も整えなければなりませんしね。人手が足りませんでしたから丁度いいでしょう」
「ですが、宜しいのですか?」
信じられないようで、不審そうにヴェーラを見るシャノンににこりと笑いかける。
「そのために調べたのですよ。貴方の職業の割に評判が良いようですね。私は人を見る目はあると自負していますの」
おもむろにバハディルに向き直ると
「それでよろしいですね、バハディル様」
「う、うむ。済まなかった」
「ほんとに……旦那様は女好きな割に禄でもない女には引っかかりませんのね。嫌な女であればわたくしも存分に叩きのめして差し上げるのですが」
穏やかな笑みを浮かべていたヴェーラが一瞬表情を消して真顔になった。
周りの空気が凍り付き、シャノンとヘザー、ニルファーも首を竦める。
ヘザーにしろ、ニルファーにしろ当時は家族のため、仕方がないと言い訳しながらバハディルに好意を持たれていると知った時、思わせぶりな態度や秋波を送っていたからだ。
バハディルは恐る恐るヴェーラを伺うとまた穏やかな笑みを浮かべる。
こうして新たにバハディルは妻を迎えることとなった。
詳細を聞いて、ナイジェルが冷ややかな表情になる。
バハディルはオンソリを振り返って
「お前がヴェーラにシャノンのことを喋ったのか?」
「ええ、まあ」
「う、裏切者ぉ」
か細い声で詰ってくるバハディルに苦笑しながら、
「仕方がないでしょう、俺はヴェーラ様に返しきれない恩義があるんですから」
真摯な表情で話すオンソリにそれ以上何も言えずにバハディルは黙り込んだ。
「バハディルの代わりに奥方を新しい部隊に迎えたいようだな」
ナイジェルが真面目な口調で言うのをギョッとしたような顔で見る。
「冗談だ」
口の端を歪めて笑みの形を作るナイジェルを愕然としたようにバハディルは見た。
ナイジェルの笑みに首が折れそうなほど傾いでいる男に周りは生暖かい視線を送る。
王都に着いてからは、バハディルはその能力と人脈を遺憾なく発揮して新しい部隊の兵舎の場所の確保や交渉事を率先してやっていた。
報告に現れては踏ん反り返りながら、ナイジェルの顔色を窺うような表情をする。
エルギン辺境防備隊から四人の中隊長、十一人の小隊長、およそ三百人の騎兵が新しい近衛大隊に移ることになった。
エルギン辺境防備隊の長であり、ナイジェルの伯父でもあるバスターは近衛大隊に移る人数の多さに苦笑を浮かべ、最年長の大隊長カーディルは流石に眉を顰めていた。
ナイジェル自身は兵士たちを説得するようなことを行っていないにもかかわらずだ。
ナイジェルに次いで年若い大隊長のサーディーも最初は協力的だったが、子飼いの部下の一人が近衛大隊に移ることを示したため、最後は憎しみに満ちた視線を向けてきた。
「……存外、気付かないうちに綻びが生じていたのかもしれませんな」
そう言っていたのはカールーンだった。
エルギンだけではないが辺境防備隊は縦の繋がりだけでなく、横のつながり婚姻関係や一族の繋がりにより王家の支配から一種独立した組織を作り上げていた。
王太子が変則的な方法でナイジェルを取り込んだのも、辺境伯を挿げ替えただけでは辺境防備隊を支配できない事情もあった。
強固な組織である分だけ、閉塞感を感じる者も少なくなかったのかもしれない。
ナイジェルが大隊長をしていた第三大隊からはおよそ百人ほどが移ることになった。
「貴方が騎兵たちに直接説得に当たっていたら、もっと人数が増えていたかもしれませんよ」
皮肉というより唆すような口調だった。
ナイジェルは首を傾げ、微笑を浮かべた。
「そんなことしたら恨まれてしまうからな」
サーディー以外の大隊長は眉を顰めながらも仕方がないとある程度認めてくれている。
「まあ、サーディー大隊長については彼にも色々問題があったようですからな」
サーディーは大隊長になるだけあって、剣技も統率力も申し分なく備わっている男だが、多分に直情径行で強引なところがある。
近しい者に対してその傾向は強く、近衛大隊に移ることを希望してきた小隊長はそのことで長年悩んでいたとカールーンにこっそり打ち明けていた。
その小隊長は王都の出身で家族を呼び寄せてこちらで生活していたが、王都出身の老いた父母や妻も故郷を恋しがり、帰りたがっていたこともあってナイジェルの新しい部隊の件は渡りに船だったらしい。
ナイジェルに部隊を移ることを認められると小躍りせんばかりだった。
カールーンは苦笑して、サーディーの前では態度を自重するように忠告していた。
一通り兵士たちとの面談を終えるとナイジェルは部隊の編成と引継ぎをスィムナールたちに任せて王都に戻った。
グラントや王都からナイジェルについて来ていた近衛兵たちの他にバハディルと彼の部下たちも一緒だ。
バハディルの中隊からは五十人ほどの騎兵が近衛大隊に移ることになった。
「意外とバハディル中隊長は人望があるのだな」
笑いながら言うナイジェルに対して、バハディルは憮然とした表情を作った。
「それは皮肉ですか?」
「皮肉とは?」
不思議そうに首を捻るナイジェルに、バハディルはナイジェルから視線を逸らしてぼそぼそと呟いた。
「……従卒だった貴方を貶めるようなことを言ったでしょう」
「そういえば、そんなこともあったな。気にしていたのか?」
軽く目を見張り、意外そうな表情を作るナイジェルに何とも言えない顔で頷く。
「多少は」
そう言いながらも、バハディルは深く悔いている様子が伺えた。
苦悩に歪む表情を見て柔らかな微笑を浮かべる。
「そうか。――俺は情報収集に関してはバハディル中隊長を信頼している。期待応えてもらえるものと思っているが」
「無論、大いに期待して頂きたい」
胸を張って言い切るバハディルに苦笑を漏らした。
そのバハディルは出発前は矢鱈張り切っていたのに今は顔色も悪く俯き加減で馬を進めている。
「バハディル中隊長、顔色が悪いですよ。お腹でも壊しているんですか?」
そう声を掛けてきたのはベルナルドだった。
「……誰だお前は」
「いやだな、ベルナルド・メルツァーです。新しい同僚の顔を早くも忘れないで下さいよ」
「マルドンのメルツァー家の者か。それにまだお前は同僚じゃないだろう。放っておいてもらおう」
「分家の次男ですけどね。ナイジェル部隊長に許可をもらいましたので、心は既に新しい部隊の者です」
「ベルナルド、放っておけ。自業自得だ」
ナイジェルの冷ややかな声に増々バハディルは落ち込んでいく。
前日の報告も兼ねた打ち合わせの時にバハディルはひっかき傷を作って現れた。
周りはなんとなく事情が察せられたので黙っていたが、その事を欠片も察せられなかったナイジェルに心配そうに問い質された。
「バハディル中隊長、猫にでも引っ掻かれたのか?」
グラントとベルナルドは驚愕の眼差しでナイジェルを見て、スィムナールたちに視線を送る。
スィムナールたちは想定内だったのか、苦笑を浮かべ、少し気の毒そうな視線をバハディルに送っている。
バハディルは呻き声を上げたきり、ナイジェルが本気なのか、冗談を言っているのか判断できずに黙り込む。
事情を語ったのは、バハディルの中隊で小隊長の地位にいるオンソリという男だった。
「奥様に引っかかれたんですよ」
「奥方が?」
不思議そうに首を捻るナイジェルに苦笑しながら事情を話した。
バハディルには三人の妻がいた。
アジメールの法では平等に扱えるのであれば四人まで妻を娶ることを許している。
これは男の性を容認する為ではなく、戦争などで働き手を失った家族を救済する目的で決められた法律でだった。
辺境防備隊の中隊長以上の者の多くが複数の妻を娶っていて、二番目以降の妻は大抵戦死した同僚や部下の妻や娘だった。
幼い子供を抱えていたり、頼るべき男性親族がいなかったりすると生活していくのは難しいためだ。
婚姻自体、莫大な結納金が必要で事前に離婚時の財産分与も決められるうえ、すべての妻を平等に扱うという前提がある。
複数の妻を持つということはそれ自体妻子を養う財力などを必要とする。
バハディルの実家は名門であり、かつ裕福な家でもあった。
最初の妻はヴェーラという女性でロスレア平原の郷士で大馬主でもあるビコフ家の娘であった。
女傑と知られている女性で、豪快だが面倒見の良い性格もありエルギン辺境防備隊の兵士の妻たちのまとめ役も果たしている。
二番目の妻ヘザーは若くして夫が戦死し、幼い二人の子供を抱えて途方に暮れているところをヴェーラに相談しているうちにバハディルに見初められて妻となった。
三番目の妻ニルファーも似たような状況だった。
三人それぞれを愛してはいるが、元が女好きであることもあって偶に部下とともに花街に出ることもある。
年若い部下たちに奢ったりもしているので、妻たちはそれにめくじらを立てることも無く黙認していた。
辺境防備隊の兵士たちがよく使う酒場にシャノンという女が酌婦として入ってきた。
淡い金髪に切れ長の瞳はごく薄い水色で人目を引くほどの美女だった。
受け答えにも愛嬌もあり、たちまち人気者となった。
そのシャノンをバハディルは暫く前から口説いていたのだ。
だが、シャノンは酌婦にしては身持ちが固く、口説かれても笑顔で躱していた。
その態度が変わったのはバハディルが王都に行くことになったと言い始めた時だった。
シャノンは目を輝かせて王都のことを聞きたがった。
王都について来るかと言うと頬を染め、嬉しそうに微笑む。
その晩に関係を持ち、バハディルの裸の胸に頬を寄せ熱心に王都に連れて行ってくれるように強請り、王都に呼び寄せることを約束した。
流石に朝帰りになるとまずいので、夜遅くにはなったがバハディルは家に帰った。
これ以上ないくらい上機嫌で床に就いたが、寝入ってからしばらくすると揺さぶられた。
「…な様、旦那様。起きて下さいな」
「……起きませんね。どうしましょうかヴェーラ様」
「構いません。しっかり起こして差し上げなさいヘザー」
「はい……」
バリッと言う音とともに鋭い痛みが顔に走って、バハディルは飛び起きた。
何をする!と怒鳴りかけて目の前の状況に息を呑んだ。
三人の妻の他にもう一人女が傍らに座っていた。
先ほど別れてきたばかりのシャノンが、色白の顔を更に血の気がないほど白くさせ、項垂れて三人の妻たちに囲まれていたのだ。
ヴェーラは穏やかな微笑みを浮かべ、ヘザーは軽蔑の眼差しをバハディルに当て、ニルファーは身重の体で手巾をしきりに目元に当てている。
「わ、わたくしがいけないのですわ、こんなお腹だから旦那様に飽きられて」
そう言うとニルファーはわっと声を上げて泣き出した。
ヴェーラは大げさに目を見張ると魔神も裸足で逃げ出すほどの笑顔をバハディルに向ける。
「貴方の所為ではありませんよニルファー。旦那様は黴が生えた古女房がお気にいらないのでしょうね、わたくしのような」
「そんな!……ヴェーラ様あってのラスロ家ではありませんか。ニルファーのように若くも無く、ヴェーラ様のように聡くも無く、口うるさいだけのわたくしなど必要ないのかもしれません」
そう言ってヘザーは溜息をついた。
ごくりと息を呑んでバハディルはなんとか言い訳をしようと口を開きかけた。
「申し訳ありません」
シャノンは床に額をこすりつけて謝罪をする。
体が小刻みに震えていた。
「まあ、何が申しわけないのですか、シャノン。貴方は酌婦としての仕事をしていただけでしょう」
穏やかな口調でヴェーラは話しかけた。
「夫婦喧嘩に巻き込んでごめんなさいね。もう帰ってもいいのよ」
ヘザーも笑顔で促す、ニルファーも涙に濡れた顔を上げて頷く。
「……図々しいことを言っていると思います。それでもどうかわたしを王都までお連れ下さい!」
流石にヘザーは眉を顰め、ニルファーはシャノンを睨み付けている。
「貴方何を言っているの! 妻にでもなったつもりなの」
「バハディル様はお連れ下さると約束してくださいました」
三人の妻からの凄まじい視線にバハディルは首を竦めた。全身から汗が噴き出している。
「す、すまん。約束した」
ニルファーは奇声を上げてバハディルを叩き始め、ヘザーは泣き出してしまった。
ニルファーが出産を控えて動けないため、産み終えてしばらくたってから王都に家族は向かうことになっていたからだ。
「こうなったからにはその約束は無理でしょう。諦めなさいな」
「それでも……どうか、どうか!」
必死に食い下がるシャノンにヴェーラは顔を顰めた。
「貴方のことは色々と調べさせてもらいました」
シャノンは顔を上げて唇をわななかせる。
「弟さんがいるそうですね。書記のフマーイー様の所で働いているとか」
「弟は関係ありません!」
キッとヴェーラを睨み付ける。
「そうですか、王立学問所に入るそうですね。だから王都に行きたいのですか?」
シャノンは黙り込んで下を向いてしまった。
「王立学問所の学費は相当でしょう。下働きで働いているに過ぎない弟さんと酌婦の貴女では払えないでしょうに」
ヘザーが口を挟む。ヘザーの息子も王立学問所に入っている。
結納金やヘザーが必死で貯めてきたお金をすべて出しても足りず、バハディルが援助している。
息子はバハディルとは血の繋がりはないが、ヴェーラも快く応援してくれている。
「……少し貯めていたお金もありました。それに王都での生活費をバハディル様は出してくださるとそれを使うつもりでした」
ヘザーとニルファーは顔を見合わせて、シャノンに同情の視線を送る。
「ご迷惑をおかけしました。バハディル様の前にはもう現れませんのでお許しください」
そう言い残して、立ち上がるとふらふらと出て行こうとした。
ヴェーラは溜息をつくと
「まだ話は終わってませんよ。いいからお坐りなさい」
ヴェーラに言われて、黙ってまた座る。
普段は生き生きと輝いている瞳は生気を失い、廃人のようだった。
「この後どうするつもり?」
「……奥様には関係ないでしょう」
「旦那様はどうされたいのですか?」
「う……それは」
「この人に何かあれば、せっかくの王都行きの話が無くなってしまいますよ。ナイジェル様はとてもお優しい方ですもの。酌婦といえど、女性を踏みにじるような行為はお嫌いですからね」
バハディルは蒼い顔で黙り込んだ。
そんなバハディルの様子に苦笑すると
「仕方ありませんね。王立学問所の学費をこちらで出しましょう。結納金代わりに」
ポカンとしたようにシャノンは顔を上げてヴェーラを見つめている。
「ここであなたを追い出して、自死されたらそれこそ寝覚めが悪いですからね。シャノン、貴方は家事は出来ますよね」
「当然です」
ムッとしたように睨むシャノンに笑いかけると
「ニルファーはこの通り動けませんし、ヘザーもニルファーについていなくてはなりません。まだ小さい子供たちもいたので、王都に行けませんでしたが、貴方がいてくれれば、私は旦那様とともに王都に行けます。兄から工房の立ち上げを手伝って欲しいと言われてましたのでね」
ヴェーラの実家は辺境防備隊に軍馬を納入していた。
それとともに馬具の職人たちも多く抱えていた。
兄は商売熱心で新しい部隊の話にすぐにバハディルに仲介してくれるよう頼み、ナイジェルも王太子の許可が得られればと条件を出して了承していた。
「新しい家を探して、家具や調度も整えなければなりませんしね。人手が足りませんでしたから丁度いいでしょう」
「ですが、宜しいのですか?」
信じられないようで、不審そうにヴェーラを見るシャノンににこりと笑いかける。
「そのために調べたのですよ。貴方の職業の割に評判が良いようですね。私は人を見る目はあると自負していますの」
おもむろにバハディルに向き直ると
「それでよろしいですね、バハディル様」
「う、うむ。済まなかった」
「ほんとに……旦那様は女好きな割に禄でもない女には引っかかりませんのね。嫌な女であればわたくしも存分に叩きのめして差し上げるのですが」
穏やかな笑みを浮かべていたヴェーラが一瞬表情を消して真顔になった。
周りの空気が凍り付き、シャノンとヘザー、ニルファーも首を竦める。
ヘザーにしろ、ニルファーにしろ当時は家族のため、仕方がないと言い訳しながらバハディルに好意を持たれていると知った時、思わせぶりな態度や秋波を送っていたからだ。
バハディルは恐る恐るヴェーラを伺うとまた穏やかな笑みを浮かべる。
こうして新たにバハディルは妻を迎えることとなった。
詳細を聞いて、ナイジェルが冷ややかな表情になる。
バハディルはオンソリを振り返って
「お前がヴェーラにシャノンのことを喋ったのか?」
「ええ、まあ」
「う、裏切者ぉ」
か細い声で詰ってくるバハディルに苦笑しながら、
「仕方がないでしょう、俺はヴェーラ様に返しきれない恩義があるんですから」
真摯な表情で話すオンソリにそれ以上何も言えずにバハディルは黙り込んだ。
「バハディルの代わりに奥方を新しい部隊に迎えたいようだな」
ナイジェルが真面目な口調で言うのをギョッとしたような顔で見る。
「冗談だ」
口の端を歪めて笑みの形を作るナイジェルを愕然としたようにバハディルは見た。
ナイジェルの笑みに首が折れそうなほど傾いでいる男に周りは生暖かい視線を送る。
王都に着いてからは、バハディルはその能力と人脈を遺憾なく発揮して新しい部隊の兵舎の場所の確保や交渉事を率先してやっていた。
報告に現れては踏ん反り返りながら、ナイジェルの顔色を窺うような表情をする。
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