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軽蔑され続けた男の独白~1
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物心ついた頃から、大抵の事は人並み以上に出来た。子供が引くくらいに仲がいい両親と、ちょっと尊大だが根は優しい兄、社長の息子という社会的地位、両親に似て恵まれた容姿と体格。望めばやりたい事は殆どさせて貰えたし、世の中が自分を中心に回っているように思えるくらいには、大抵の事は思い通りになった。
それが幻想だと知ったのは、高校の頃だった。高校で知り合った友人達はいつも俺に優しくて、一緒にいると気分がよかった。ただ、幼馴染の木下有二郎は、彼らにいい顔をしなかったが。あいつらはお前の社会的な地位が目的だと呆れたように言う有二郎に、俺は反発した。そんな連中はこれまでにいくらでも見てきたし、見分け方も回避の仕方も心得ていたが、彼らからはそんな悪意は感じられなかったからだ。俺が悪い事をすれば諫めてくれるし、耳が痛い事も言ってくれたから、疑いなんて直ぐに消えた。いつも冷静沈着で、俺よりも親の信用を得ていた有二郎だったが、こいつでも間違える事があるんだと、俺は少しいい気になっていたかもしれない。
結局、間違っていたのは俺の方だった。
有二郎の忠告通り、親友だと思っていた仲間の目的は俺の家の力で。自分の妹や姉を引き合わせて、政略結婚を目論んでいたのだ。我が家は恋愛結婚推奨だと両親が常々言っていた事が仇になったのだ。俺が惚れたと言えば障害がないだと目論み、群がる女どもは巧妙でその手腕は容赦がなかった。
結局、そいつらの化けの皮が剥がれた後、何もかもが虚しくなった俺は、残りの高校二年間を海外留学に逃げた。それでも、親の七光りが届かない海外は日本よりもよっぽどマシで、そこでは新しい友人も出来たし、充実した学生生活を送れたと思う。
その後、家の仕事を手伝うなら大学はやはり日本がいいと思い帰国したが、待っていたのは高校の頃と同じ、家の力と外見に群がる連中だった。だが、逃げても仕方ない、これが現実だと、少しは大人になった俺はその状況を受け入れたつもりだった。高校時代の経験で女性不信になっていたが、それでもすり寄ってくる女は後を絶たず、俺は冷めた気分で後腐れのない相手との火遊びを楽しんでいた。
「で。就職するの?」
文庫本に視線を向けたままそう聞いてきた有二郎の声は、いつも通り淡々としていた。昔から一緒に育ったこいつは、親がうちの顧問弁護士でこっちが客だというのに、俺に遠慮の一つもしない奴だった。常に冷静沈着だが、柔和な外見と常に浮かべている笑みのせいで、とてもいい人に見える。中身は真っ黒だが。
親や兄のように弁護士になるのだろうと思っていたが、自分は弁護士には向いていないと悟ったようで、俺の会社に就職すると宣言したのは高校の時だった。もし俺が親の会社に入って、親の期待通りに兄貴を支えて副社長になった場合は、こいつが俺の専属秘書になる予定だが…こいつはそんな未来図があった割には俺と違う大学に進み、一定の距離を置くようになっていた。その頃の俺はまた荒んでいたから見放されたかと思っていたが、時折思い出したように俺の前にふらりと現れた。
「…別にしたい事もないし…家族もそれを望んでるから」
「ふぅん。でも、そんな理由で入っても厳しいと思うよ。お前の親父さんも鋭さんも仕事の鬼だし。耐えられるの?」
「……」
突き放す様にそう言われた俺は、返す言葉がなかった。実際、その頃の俺は入社しても役に立てる自信がないくらいには堕落していた。
それでも、いきなりやりたい事が見つかるわけもなく。さすがにまずいと思った俺は、女達とも距離を置いて勉強に励み、他の学生と同じように入社試験を受けて、父親が経営する会社に入社した。入社式で新入社員代表としてスピーチをしたのは、俺ではなくトップの成績だった有二郎だった。
「何であいつがここにいるんだよ?!」
新人研修が始まって三日目、俺は社内で思いがけない人物に会った。園田美緒だ。大学の同級で、いつも俺に汚い物を見るような目を向けてくる嫌な女だった。気が付かなかったのは苗字が違っていたからで、大学時代は確かに園田だった筈だが今は志水と名乗っていた。
「あいつって誰?」
「ああ?園田だよ、何であいつがうちの社にいるんだよ?」
「そりゃあ、入社試験受けて受かったからだろうね」
「そんな事はわかってる!でも、あいつ俺の事嫌ってただろうが。なのに何で」
「さぁ?そんな事俺に言われても知らないよ。でもまぁ、あっちもかなり驚いていたし、お前がこの会社を受けた事も、それ以前に社長の息子だって事も知らなかったんじゃない?」
「知らなかったぁ?」
「だってあの子、お前の事嫌ってただろ。ゴキブリとかそんなレベルだったよね」
「……」
「お前に興味がなかったから、本当に知らなかったんじゃない?」
有二郎にそう言われた俺だが、さすがにそれはないだろうと思った。だが、俺の予想に反してあいつは本当に俺がこの会社の社長の息子だと知らなかった。そうと知った時の顔は傑作なほどに驚き狼狽えていて、少しは俺の溜飲を下げたが、一方でそこまで興味を持たれなかった事が腹立たしく感じた。いつも注目されるのが当然だったから、こんな風に存在を無視されるような経験がなかったからかもしれない。
「ったく、本当に腹立つ。一度でいいから這いつくばらせてやりたい」
もう何度目だろうか…そう言った俺に、有二郎は呆れと驚きを僅かに含ませた視線を向けたが、やめておけとあっさり俺の怒りを流した。
「何でだよ?」
「え?だってあの子、お前の見た目とか社会的地位とか関係なく、お前を見てるんだろう?凄く貴重な存在じゃないか」
「はぁ?どういう意味だよ?」
「う~ん、じゃ、お前の顔が平凡で、普通のサラリーマンの出だったら?」
「ああ?」
「もしそうだったら、お前みたいに女にだらしなくていい加減な奴、誰も相手にしないだろう?むしろ嫌われて当然」
「それは…」
「な?見た目とか親とか関係なく、ちゃんとお前自身を見てるじゃないか。ある意味凄い子だと思うけどね」
有二郎の言わんとしている事を消化するのに時間はかからなかった。なるほど、有二郎のいう事も一理あるな、と思ったからだ。俺が陰でクズだと言われながらもチヤホヤされているのは、俺自身の実力じゃない。親のお陰だという事は、この頃にはもう十分過ぎるほど身に染みていた。
それからは俺も無我夢中だった。何としてもあのクソ生意気な女に自分を認めさせてやりたい。その一心で仕事に励んだ。父親や兄は仕事の鬼で、高校からやさぐれて真面目さをどこかに置き忘れていた俺に容赦なく無理難題を課した。その為、入社してから三年間は、仕事と勉強で睡眠時間もろくに取れず、完徹で仕事をした日も少なくなかった。お陰で睡眠時間がろくに取れず、記憶が抜けている時期があるくらいだ。
それでも時折社内や同期会で見かけるあいつの目は、やっぱりゴキブリ扱いで…その度に俺は怒りを覚えて仕事に励む…と言う連鎖に嵌っていた。
有二郎には、恋のパワーは凄まじいな、なんて言われたが、恋なんかじゃないとその都度訂正してやった。これはそんな可愛らしいもんじゃなかったからだ。あんな女に一ミリも好意などなく、自尊心を無遠慮に抉っていく天敵だった。いつか認めさせて這いつくばらせてやりたい…そんな思いが俺の原動力になっていた。
転機が訪れたのは、昨冬だった。その頃は営業二課の一営業で班長でもなかった俺だったが、班の補佐をしていた女子社員がストーカー化したのだ。マンションに押しかける、出かけると後を付けてくる、会社で俺の私物を盗むなどやる事がエスカレートし、終いには虫よけとして協力体制をとっていた朱里にまで危害を加えようとした。さすがにこれは看過する事が出来ず、警察沙汰にしてその女子社員は懲戒解雇となった。
この問題は思いがけず後を引いた。この社員が首になったのは一月だったが、後任が決まらなかったのだ。その頃には、既に新年度から俺は自分の班を立ち上げてリーダーになる事は決まっていたが、俺に好意を持たない補佐を…となると人選が難しかった。一年前に班の入れ替えをしたばかりで補佐の変更が難しく、三年目の早川は俺に気があったから論外だった。第一、仕事が出来なさ過ぎて話にならない。
いっそ新卒か他部署から…と言う話になったが、新卒では他の女性社員からやっかみを受けても対抗出来ないだろうと却下。支社や他部署などから水面下で推薦を受けたが、その中にいたのが志水だった。推薦したのは入社以来朱里が想いを寄せ、最近ようやく付き合うようになった総務の大石課長だった。仕事は早くて正確、無駄な事を嫌う点も申し分なく、何より俺に気がないというのが推薦の理由だった。
「よかったじゃないか」
「…何が?」
珍しく有二郎が笑みを浮かべて声をかけてきた。こいつが笑顔の時には何か裏があるだけに、俺は警戒を強めたが、そんな俺に有二郎は益々面白いものを見るような目を向けた。
「志水の事だよ」
「…あいつがなんだよ」
「やっと一緒に仕事が出来そうなんだろう?見返せるチャンスじゃないか」
悔しい事に、有二郎の指摘は大いに当たっていた。入社から五年、あいつを見返してやるとの一心でここまできたし、それなりの成果もあげて、親父にも兄貴にも及第点が貰えるほどにはなっていた。入社五年で班のリーダーになるのは、兄貴よりは半年遅れたが、通常は三十を過ぎてからだから破格の速さだろう。ようやく悲願が達成できる。そう思うと、自ずと気持ちが高揚するのを感じた。
それが幻想だと知ったのは、高校の頃だった。高校で知り合った友人達はいつも俺に優しくて、一緒にいると気分がよかった。ただ、幼馴染の木下有二郎は、彼らにいい顔をしなかったが。あいつらはお前の社会的な地位が目的だと呆れたように言う有二郎に、俺は反発した。そんな連中はこれまでにいくらでも見てきたし、見分け方も回避の仕方も心得ていたが、彼らからはそんな悪意は感じられなかったからだ。俺が悪い事をすれば諫めてくれるし、耳が痛い事も言ってくれたから、疑いなんて直ぐに消えた。いつも冷静沈着で、俺よりも親の信用を得ていた有二郎だったが、こいつでも間違える事があるんだと、俺は少しいい気になっていたかもしれない。
結局、間違っていたのは俺の方だった。
有二郎の忠告通り、親友だと思っていた仲間の目的は俺の家の力で。自分の妹や姉を引き合わせて、政略結婚を目論んでいたのだ。我が家は恋愛結婚推奨だと両親が常々言っていた事が仇になったのだ。俺が惚れたと言えば障害がないだと目論み、群がる女どもは巧妙でその手腕は容赦がなかった。
結局、そいつらの化けの皮が剥がれた後、何もかもが虚しくなった俺は、残りの高校二年間を海外留学に逃げた。それでも、親の七光りが届かない海外は日本よりもよっぽどマシで、そこでは新しい友人も出来たし、充実した学生生活を送れたと思う。
その後、家の仕事を手伝うなら大学はやはり日本がいいと思い帰国したが、待っていたのは高校の頃と同じ、家の力と外見に群がる連中だった。だが、逃げても仕方ない、これが現実だと、少しは大人になった俺はその状況を受け入れたつもりだった。高校時代の経験で女性不信になっていたが、それでもすり寄ってくる女は後を絶たず、俺は冷めた気分で後腐れのない相手との火遊びを楽しんでいた。
「で。就職するの?」
文庫本に視線を向けたままそう聞いてきた有二郎の声は、いつも通り淡々としていた。昔から一緒に育ったこいつは、親がうちの顧問弁護士でこっちが客だというのに、俺に遠慮の一つもしない奴だった。常に冷静沈着だが、柔和な外見と常に浮かべている笑みのせいで、とてもいい人に見える。中身は真っ黒だが。
親や兄のように弁護士になるのだろうと思っていたが、自分は弁護士には向いていないと悟ったようで、俺の会社に就職すると宣言したのは高校の時だった。もし俺が親の会社に入って、親の期待通りに兄貴を支えて副社長になった場合は、こいつが俺の専属秘書になる予定だが…こいつはそんな未来図があった割には俺と違う大学に進み、一定の距離を置くようになっていた。その頃の俺はまた荒んでいたから見放されたかと思っていたが、時折思い出したように俺の前にふらりと現れた。
「…別にしたい事もないし…家族もそれを望んでるから」
「ふぅん。でも、そんな理由で入っても厳しいと思うよ。お前の親父さんも鋭さんも仕事の鬼だし。耐えられるの?」
「……」
突き放す様にそう言われた俺は、返す言葉がなかった。実際、その頃の俺は入社しても役に立てる自信がないくらいには堕落していた。
それでも、いきなりやりたい事が見つかるわけもなく。さすがにまずいと思った俺は、女達とも距離を置いて勉強に励み、他の学生と同じように入社試験を受けて、父親が経営する会社に入社した。入社式で新入社員代表としてスピーチをしたのは、俺ではなくトップの成績だった有二郎だった。
「何であいつがここにいるんだよ?!」
新人研修が始まって三日目、俺は社内で思いがけない人物に会った。園田美緒だ。大学の同級で、いつも俺に汚い物を見るような目を向けてくる嫌な女だった。気が付かなかったのは苗字が違っていたからで、大学時代は確かに園田だった筈だが今は志水と名乗っていた。
「あいつって誰?」
「ああ?園田だよ、何であいつがうちの社にいるんだよ?」
「そりゃあ、入社試験受けて受かったからだろうね」
「そんな事はわかってる!でも、あいつ俺の事嫌ってただろうが。なのに何で」
「さぁ?そんな事俺に言われても知らないよ。でもまぁ、あっちもかなり驚いていたし、お前がこの会社を受けた事も、それ以前に社長の息子だって事も知らなかったんじゃない?」
「知らなかったぁ?」
「だってあの子、お前の事嫌ってただろ。ゴキブリとかそんなレベルだったよね」
「……」
「お前に興味がなかったから、本当に知らなかったんじゃない?」
有二郎にそう言われた俺だが、さすがにそれはないだろうと思った。だが、俺の予想に反してあいつは本当に俺がこの会社の社長の息子だと知らなかった。そうと知った時の顔は傑作なほどに驚き狼狽えていて、少しは俺の溜飲を下げたが、一方でそこまで興味を持たれなかった事が腹立たしく感じた。いつも注目されるのが当然だったから、こんな風に存在を無視されるような経験がなかったからかもしれない。
「ったく、本当に腹立つ。一度でいいから這いつくばらせてやりたい」
もう何度目だろうか…そう言った俺に、有二郎は呆れと驚きを僅かに含ませた視線を向けたが、やめておけとあっさり俺の怒りを流した。
「何でだよ?」
「え?だってあの子、お前の見た目とか社会的地位とか関係なく、お前を見てるんだろう?凄く貴重な存在じゃないか」
「はぁ?どういう意味だよ?」
「う~ん、じゃ、お前の顔が平凡で、普通のサラリーマンの出だったら?」
「ああ?」
「もしそうだったら、お前みたいに女にだらしなくていい加減な奴、誰も相手にしないだろう?むしろ嫌われて当然」
「それは…」
「な?見た目とか親とか関係なく、ちゃんとお前自身を見てるじゃないか。ある意味凄い子だと思うけどね」
有二郎の言わんとしている事を消化するのに時間はかからなかった。なるほど、有二郎のいう事も一理あるな、と思ったからだ。俺が陰でクズだと言われながらもチヤホヤされているのは、俺自身の実力じゃない。親のお陰だという事は、この頃にはもう十分過ぎるほど身に染みていた。
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それでも時折社内や同期会で見かけるあいつの目は、やっぱりゴキブリ扱いで…その度に俺は怒りを覚えて仕事に励む…と言う連鎖に嵌っていた。
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「よかったじゃないか」
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珍しく有二郎が笑みを浮かべて声をかけてきた。こいつが笑顔の時には何か裏があるだけに、俺は警戒を強めたが、そんな俺に有二郎は益々面白いものを見るような目を向けた。
「志水の事だよ」
「…あいつがなんだよ」
「やっと一緒に仕事が出来そうなんだろう?見返せるチャンスじゃないか」
悔しい事に、有二郎の指摘は大いに当たっていた。入社から五年、あいつを見返してやるとの一心でここまできたし、それなりの成果もあげて、親父にも兄貴にも及第点が貰えるほどにはなっていた。入社五年で班のリーダーになるのは、兄貴よりは半年遅れたが、通常は三十を過ぎてからだから破格の速さだろう。ようやく悲願が達成できる。そう思うと、自ずと気持ちが高揚するのを感じた。
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