天才劇

アルベルト=オーディン

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~豪華な屋敷の密室殺人~

第4節

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その死体は、紛れもなく、屍体だった。

首を吊って死んでいる。

紛れもなく死体である。

生命の活動全般を停止してしまっている状態のことを指す。

しかし、完全に覚悟なくこの部屋に入ったわけではなかった。
そもそも、なにかの原因で引きこもるということは、少なからず精神的な疾患があるということである。

それにより、自殺に追い込まれるということも、適切な処理がなされなかった場合、非常に多い。
また、適切な処理がされていたとしても少なくはない。

「え、え、なんで…どうして…」

この冷静な思考とは逆の感情が僕の頭の中をうごめいていた。この部屋の片隅にある小さな籠の中にいる犬のように。

実際、覚悟は決めていた。
しかし、大抵の場合、その人は生きている。当たり前だ。死んでいる人のカウンセリングなど誰が頼むのだろうか。頼むとしたら潮来いたこの依頼者か、潮来自身である。

「プリシラ。皆を呼んでくれないか。」

僕が振り返ると誰もいなかった。

死体が目の前にある状況でなにをしているのだあいつは。

僕はとりあえず、皆を呼ぶことにしたが、
その必要はないようだった。

何故なら僕の背後から、号哭に似た叫び声が上がったからである。

振り返ると其処には、知らない少女が立っていた。

『ひ、人殺しですか…!
あなたは唯一信頼出来ると思っていたのに…
此処には人間のクズしかいないのですか!』

見知らぬ少女は顔を真っ赤にして早口に震えた声でそう言った。

「君は何かを勘違いしている。僕は人を殺めたりしてないし、第一この先生に、僕は会いに来たんだよ。」

『証拠もなにもないじゃないでふゅか。』

噛んだ。可愛い。どこかのよく噛む小学五年生の幽霊と同等に可愛い。否、わざと噛んでいないところをプラスすると、この子の方が可愛いのかもしれない。

「証拠なら時間が証明してくれる。君こそ、ぼくが殺したという証拠は無いんじゃないか?」

『あります。あなたは殺人現場から出て来ました。それが証拠です。』

確かに第1発見者は最初に疑われて当然ではある。

だが、やっていないという事は自分がよく理解しているし、何より自分一人になった時間はこの島に来てから1度もないため、犯人にはどうしてもなれないのである。

そんなことをしていると、騒ぎと言うか、叫びを聞きつけて、館中の人たちが 集まって来た。

『どうした!?』

最初に駆けつけたのはアリッサだった。

『こ、この人が先生を……』

見知らぬ少女は僕を指さして震えながら発言した。

その後アリッサは後ろの光景を目の前にして、全てを理解したように僕を睨んだ。

『成程。状況は理解出来た。否、完璧に理解出来ていない点が幾つかある。』

アリッサは、少し悩む様な仕草をした。

『どうゆうことです?完全にこの人が犯人じゃないですか!』

『その推測は間違っているよ。まず、彼はついさっき来たばかりで、トリックの仕掛け用がないし、1人になった時間が1分もない。』

そして、とアリッサは後ろの死体を指さしてこう言った。

『この死体は死後硬直がとっくに終了していて、さらに窒息死に見られる首の引っかき傷もない。
この事から想定しゆるに』

そう言うとアリッサは突然死体の前にヅカヅカと歩き出して、死体の服を剥いだ。

死体の皮膚があらわ
そこにあったのは、内蔵と筋肉の塊。腹を抉られ、内臓の6割を切除され、腹筋が消失しており、背筋が内臓の下から顔を覗かせていた。

『これが死因ではない。』

アリッサは、誰もいるはずのない方向を睨んでそう言った。
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