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七章、勇者の呪いと熱砂の誓い

129、姫初め(SIDEエーテル)(★)

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   SIDE エーテル
 
 ちゃぷりと響く湯音に生々しい濡れた呼吸の音が混ざっている。
 全身をゆったり包むお湯が、心地よい。

 内側から湧き上がる甘ったるい熱は、さっき飲んだカクテルのせいもあるだろうか。
 美味しかったけど、かなり弱くて薄めの媚薬が盛られていた……。

 過去の自分が何度もノウファムに盛った媚薬を思い出す。
 ノウファムは媚薬にトラウマがあるので、媚薬を盛ったのは臣下の誰かだろう。
 いち早く気付いた僕はノウファムのトラウマを再現してしまうと慌てて、自分が飲んだのだ。
 よかった。僕はノウファムを守ったぞ!
 
 ……その結果、発情しているのだけど。
 
 濡れた肌がぴたりとついて、その体温と確かな存在を感じて、興奮する。
 心臓の鼓動がトクントクンと騒がしい。
「ん……、ふぅっ……」
 全身を絡めるようにして交わすキスは甘くて、吐息が蕩けてしまいそう。
 飲み込みきれずに溢れた唾液が口端から零れれば、介護でもするように口が放されて、滴る唾液を惜しむようにじゅるっと吸われる。
 唇の隙間から覗くノウファムの赤い舌は唾液に濡れて蠱惑的だ。
 
「離れないで。ノウファム様――逃げちゃだめ」
「酔ってるな、エーテル……?」
「はぁっ……」
 
 ――また酒乱疑惑が深まってしまうだろうか。
 
「僕は……酔っていません……」 
 離れた唇に追い縋るように食いついて、舌を追いかける。
 捕食者の気分だ。
 
 ――逃げちゃダメ、触れさせて。僕の熱を受け止めて。
 
「ん、……」
 触れた舌は厚くて、濡れている。舌の腹同士を擦り合わせると、擦り合うたびに心地よさが増して、えっちな気分がぐんぐん高まっていく。
「んう……っ、僕、えっちしたい」
 とろんとした声で囁けば、ノウファムが「えっち」と言葉を繰り返している。

「っふふ、陛下は、お嫌いでしたね、えっち……」
 ふわふわと煽るように言えば、ノウファムは眉間にしわを刻んだ。
「別に嫌いではない。嫌がる相手に義務でいたすのに抵抗があっただけだ……」
「僕とするの、好き……?」 
「好きだ」 
 
 胸の真ん中で情欲がポッ、ポッと猛り出す。
 好きだって。
 浮かれた声が、はしゃいだ声が、求めてしまう。
 
「キスしましょう、陛……ノウファム様。たくさん。たくさんです」
「ん……」 
 
 口付けが僕の想いに応えて、僕への想いを伝えてくれる。
 角度を変えて深まって、夢中になって愛しあう時間は一瞬のようでもあり、永遠のようにも感じられる。
 
 ぴちゃ、ぴちゃと舌同士が奏でる濡れた音がいやらしい。
 背骨を辿るようにノウファムが僕の背後に手を滑らせる。
 摩るみたいにゆっくりと上に下に行ったりきたりする濡れた指先が――ぞくぞくする。
 
「んぅ……っ」 
 ぱしゃり、と湯を跳ねて、僕は肩を震わせた。
 
 湯がゆらりと揺れて光が彩を変える。
 綺麗だ。
 幻想的だ。
 無駄にムードがあって、なんだかいやらしい気分が高まっていく。

「ふ、ふ……」
 興奮が隠しきれない。
 僕はぎゅっとノウファムの肩にしがみついて腰を揺らし、自身の昂りの先を逞しい腹筋に擦り付けた。
 じぃん、とした痺れるような甘い快感が得られて、くぐもった声が洩れる。
 硬い腹筋に触れたところが熱い。快楽がそこから生まれて、堪らなくなる。
 
「ふ、あ、っ」 
 ――あ、あ、だめだ。
 止まらなくなってしまいそう。
 
 ノウファムの身体に先端をすりすりと擦り付けるのが止まらなくなりそうで、僕は焦った。

 はしたない、いけないことをしているという背徳感や羞恥心が湧く。
 こんなこと、してはいけない――でも、気持ちがいい。

「俺に擦りつけて気持ちよくなっているのか、エーテル」 
 ノウファムの手が僕の腰から下に降りて行って、脚の付け根の弱いところを羽毛のように控えめに擽る。
「お前は本当に……っ」
 可愛い、と続く声が聞こえた気がして、僕は陶然となった。
  
 僕の様子を窺うようなノウファムの舌が歯列をなぞり、上あごを蹂躙する。
 痺れるような官能に、僕は手にぎゅっと力をいれてノウファムの肩にすがった。
 口が解放されて、溺れるように息を吸って――内股へもぐりこむ手の感触に、甘ったるい声が出てしまう。
 
「あ、あ、…………っ」 
 喘ぎながら、さらなる快感を生み出そうとするように僕の腰が自然と揺れてしまう。
 
 止まらない。
 止められない。
 
「気持ちよさそうだな」
 低く唸るようなノウファムの声が、高揚を煽る。
「っ、ごめんなさ……っ、あ、んンっ」
 まるでノウファムの身体を使って自慰してるみたいだ。腰を擦る動きが止まらない。
「謝らなくてもいい。好い眺めだ」
「はぁっ、っ、ぁ……っ」 
 湯の中で、ノウファムの大きな手が僕の脚の付け根に戻ってぬるぬると撫でてくる。
 のけ反った首筋を唇が追いかけてきて、肌に吐息を感じるとゾクゾクした。
 
「あ、あ、ノウファム様っ」
「俺の王様、命令を」
 僕の切羽詰まった声を慈しむように言って、ノウファムが柔く首を食む。
 唇の隙間からぬるりと舌を這わせられると、熱く濡れた感触に軽く達してしまいそうになる。
「わ、わかんな……いっ」
 
 出していいんだろうか。
 お湯を汚してしまっていいんだろうか。
 すでに汚しているけれど――僕が余裕なく喘いでいると、ノウファムはするすると人差し指で恥骨と会陰部を探って愛撫した。

「んぁっ、あ、あ」
 びりびりと中に甘い痺れが響いて、ぎゅんっと射精感が強くなる。
 洩らしてしまいそうだ。
「あん、……~~っ」
「では、俺が好きにしていいのだろうか? 王様?」
 首筋をちゅくちゅくと吸われて、上と下とに生まれる官能の波が僕を呑み込んでいく。  
 
「きもちぃ、はぁっ、い、いい」
「いいか」
「いいぃ……っ」 
 好い匂いがする。僕をどんどん昂らせて、発情させる匂いだ。
 はふ、と息を紡いで、僕はぎゅうっとノウファムの首に腕をまわした。
 緩く欲望の先端をノウファムの腹筋に擦り付ける動きが、止まらない。

「あっあっ、と、止まんない。これ、止まんないよぅ、や、あ」
「発情しているな……可愛い」 
 
 媚薬の効果なのか、発情もあるのか、とにかく尋常じゃない感覚が僕の脳を蕩けさせている。
 いきたい。
 いきたくておかしくなってしまいそうだ。

「んん……っは、発情してるっ……僕、発情してるっ」
 身を捩って右の胸と肩をノウファムの胸板にこすりつけて、首を反らしてすりすりとして訴えると、自分がケダモノになったような気分だ。
「あ、ふあ……」
 腰を揺らめかせながらお腹を押し付けるようにすると、ノウファムの手が浮いたお尻を撫でてくる。
 双丘の窄まりに滑る指を感じると、それだけで胎が期待に震えて上擦った声が洩れた。
 
「俺が欲しいか、エーテル?」
 嬉しそうな声が問いかけてくる。恥ずかしい。
「んっ、ほし……」
 ちゅぽ、と後孔を指で探られれば、お湯が一緒に内側に入ってくる。
 
「あ、あっ」
「こら、暴れるな」
「あんっ、じっとしてられなぃ」
  
 奥から溢れる蜜液を迎えるみたいに指が動かされて、内部が拡げられる。
「あ、ん、お湯、なかに入って……っ」
 自分の聖杯器官から溢れる液体とお湯とが中でぐちぐちとかき混ぜられる感覚に、僕はひくんひくんと悶えた。
 
 お腹の中がキュンキュンしている。
 股の間が熱くて、今にも極まってしまいそうだ。

「だめ、僕もうだめ、だめ……っ」
「構わないから、出すといい」
「ふぁ……っ、あ――……」
 
 僕は腰を揺らし、腹筋にぬらぬらと自分の若茎ペニスを擦りつけて極まってしまった。
 びくびくと射精の快感に震えながらノウファムにしがみついていると、熱い手が後ろを解放して前に伸びてくる。
 白濁を零す敏感な鈴口を指で愛でられると、強い快感が奔って全身が大袈裟なほど跳ねてしまう。

「あ、今出てるっ……そこ、……触っちゃ、やっ……」
「出ているな。気持ちいいか」
「あ、あっ……」
「気持ちいいな」 
 
 ノウファムは感情を殺したような声で呟いて、僕の竿へと手を滑らせた。湯が大きく揺れていて、全身がゆらゆらする。

 達したばかりなのに、身体の火照りは収まるどころ増すばかりで、僕は焦燥に駆られた。
 ノウファムの親指と人差し指と中指の腹がぬるりと竿を扱く刺激が優しくて、気持ちいい。
 
「あ……、あの……っ」
「また出そうか?」  
「んっ、出ちゃう、出ちゃう……」

 指で輪を作るようにしてくびれをくちくちと上下に扱かれて、甘い声が高くなる。
 くびれた部分を擦られ、リズミカルに高められていくと、上擦った声をあげて、僕はすっかり乱れてしまった。

「あ、あ、あ、あっ」 
 指先で鈴口を何度もなぞられると、過剰なくらい敏感に反応を示して、僕の陰茎が昂って――張り詰めていく。
 後ろの窄まりがひくひくと物欲しげに口を開いて、お湯を呑み込んでいる。熱い。

「う、う、……後ろ、あついっ……あついようっ」
 舌がうまくまわらない。あられもない声を上げながら必死に訴える眼の端から涙がこぼれると、情けない気分になる。

「王様を俺が犯してもいいか」
 壊れ物を扱うように竿を撫でて放し、ノウファムの舌が涙を舐める。

「ん……っ」
 首がすわらなくなったみたいにゆらゆらと頷けば、僕の腰が持ち上げられる。
 対面のまま軽く持ち上げられた僕は、座り直されるようだった。

「ひ、あっ」
 持ち上げられたまま腋下に吸い付かれて僕は小さく悲鳴をあげた。
 抱えられた不安定な姿勢で普段刺激されないところをぴちゃぴちゃと舐め上げられて、未知の感覚がそこから全身に広がっていく。
 くすぐったい。怖い。気持ちいい。恥ずかしい。
「あん、あんっ」 
 腰とお腹が破廉恥に前後に揺れて、どうしようもなく息が乱れる。
 頬を紅潮させて喘げば、ノウファムはふぅっと熱い吐息をついた。
 ゆらりとその腕が僕を下へと降ろしていく――ノウファムの屹立を上からずぷりと呑み込むように身体がゆっくり沈められる。

「おいで、エーテル」
「あ、はいっ……」
 お湯を一緒に太い楔を埋めて沈む感覚に、僕の内部が歓喜した。

「っ……熱い、な、……いつもより……」
 凄絶な色香と共に吐き出されるノウファムの声が、つらそうだ。
「あぅ、落ちちゃう……っ」
 脚に力が入らない。ぐ、ぐ、と深く沈んで、どんどん奥へと剛直を埋めていってしまう。

「あ、あ、……っ」
 
 ぴたりとノウファムの上に座る姿勢になって奥まで咥えこむと、下半身の感覚が脳を支配して、何も考えられなくなりそうだった。

「俺の聖杯」
 甘ったるい声で呟いて、ノウファムが僕の胸に唇を寄せる。
「あっ」 
「今日は、薬は飲んでいるのか? ここに注いで構わないか?」
 片手で下腹部を摩られると、大きな楔を埋められた内部がひくひくと震えた。
「んっ……飲んでる……っ」
「そうか」 
 
 埋めたまま腰を馴染ませるようにしながら、ノウファムは僕の腰を掴んで再び持ち上げた。
 挿いっていた陰茎がずぷり、と抜かれていく感覚が、恐ろしく気持ちいい。

「~~……っ!」
 先端だけを咥えこむように半端に繋がったまま、湯の上で胸を反らして悶える僕へと、刺激が加えられる。
 ノウファムは僕が突き出すようにした右の乳首に舌を這わせて、ねっとりと嬲った。
 
「ふぁ……っ、おっぱい、らめ……」
「おっ……ぱい?」
 
 ああ、ノウファムがまたびっくりしている? 
 品性を疑われる言葉だった。
 はしたないことを言ってしまった。
 ノウファムはあまり下品な言葉は好まないに違いない――嫌われちゃったらどうしよう。
 カジャが前にそう言ったから、つい。……って言い訳したら、だめなんだろうな。
 
「し、しつれい……僕……下品で……」
「いや……興奮した」
  
 先端をくりくりと可愛がるようにノウファムの舌先が押して、ぷっくりと濡れた乳首の縁にちゅっとリップ音をたててキスをされると、切ない疼きがそこから広がった。
 
「次はどんな言葉をきかせてくれるんだ? どんなエーテルを見ることができるんだ?」
「あっ、あ……っ」 
 
 色づく乳輪を愛でるようにふにふにと唇でつつかれて、チロりと舌を出してちゅくっと吸われるとずくんっとした疼きが奔って、腰に悩ましい熱がじわじわ溜まる感じがした。
 甘い刺激にぴくぴくと身体が悦んで、中途半端に先端を咥えたままのお尻がぱくぱくと孔をひくつかせて、感じているのを直に伝えてしまう。
 
「風呂も悪くない、な」
「~~っ!」
 ノウファムは上機嫌で言って、僕の腰を降ろした。空気に晒されていた肌が湯に沈んで、じゅぷ、と奥まで剛直が埋め込まれる。
 僕の眼の前にちかちかと星が散る。

「うきゅ、んぁ、あっ」
「……楽しいな、エーテル」
 ノウファムは僕の脇をくにくにと揉んで、身を捩る反応に目を細めた。

「ノウファム様ぁっ……ノウファム様っ」
「ほら、反対側も」
「あ、やぁ……っ」 
  
 ぱしゃりと湯を揺らして、また身体が持ち上げられる。

 すっかりそそり立った僕の雄蕊ペニスの先がノウファムの腹に擦れて、びりびりとした強い快感が僕を激しく動揺させた。
 咥えこんでいた太くて長い陰茎が内壁を擦りながら抜けていく。
 怖すぎるほどの官能の波が、下から押し寄せてくるみたいだ。
 ふわっと身体が持ち上げられるのと同時に、僕は泣き声をあげて再び達していた。
 
「ノウファム様ぁっ……ふぁ、あ……っ!!」
 湯面に出ていた雄蕊ペニスがビュルルッと白濁を放ち、後孔が激しく収斂すると、ノウファムは獣のように喉を震わせて一瞬眉を寄せた。

「……はぁっ、……今のは、持っていかれそうになった」
 衝動をやり過ごしたらしき声が笑って、僕の胸に唇が寄せられる。

「左も愛でてやらねばな」
「はぅ……っ」 
 熱い舌先がふっつりと勃った左の乳首を舐める。ぴゅくぴゅくと泣く僕の雄蕊ペニスの先がノウファムの身体を汚している光景が淫猥だ。
 丹念に愛撫する唇は、たまに歯をたてたり舌で先端を弾いたりする。その度に僕の身体は、意図通りに翻弄されて、びくっ、びくっ、と素直な反応を返して昂った。
 
「ん、んっ、……変な遊び……っ」
「もういいか」
「ふ、あっ!!」 

 ぐい、と腰が落とされる。下から突き上げるように楔に迎えられると、奥が一気に貫かれて腰から背中にかけてビリビリッとした刺激が走った。

「ふぁああーっ!」
 
 もう、力が入らない。
 足先まで痺れて、お腹の奥からじゅわじゅわと切ない熱が込み上げて、どうにかなってしまいそうだ。
 僕の内部はノウファムの精を搾り取ろうと愛液でぐっしょりと中の楔をもてなして、ひくひくしている。

「はっ……、気持ちいいな、エーテル」
「はぁっ、はぁっ、い……っ、あ、や!」
「ここが好きか?」  
 奥の方の特に弱い場所をぐりぐりと捏ねられて、僕の内股がびくびくと震えた。
「あ、あ! す、す……っ」
「っ……」
「す、き、……ぃ」
 はくはくと口を動かして素直に言えば、ノウファムが口の端を歪めた。
「ならばたくさん突いてやる、エーテル」
「ああっ、あんんっっ」 
 腰を揺らしながら執拗に突き上げられて、おかしくなりそうなくらいの快感の波が押し寄せる。
 
「ああっ、おかしくなるっ」
「おかしくなって構わない」
 
 むしろおかしくなるところが見たい――ノウファムは本気の声色で吐き捨てて、動きを激しくした。
  
「ひ! あ、あ、ああっ、ああっ、あああ!」 
「いいか? いな? ここだな? こうされるのが嬉しいか?」
「あぁっ、そこばっかり、や、や、きもちい、いいっ……ああっ」
「そんなに乱れて……蕩けた顔をして……可愛いな……」 
   
 もう、与えられる刺激に声をあげて善がることしかできない。
 快楽が深くて、おかしくなってしまいそうだ。
 僕が延々と悶えていると、腰がぐいっと浮かされて、すぐに戻される。

「……ふっ、……ふーーっ……」 
 抽挿が大胆に繰り返されると、周りでお湯が波を立てて暴れて、身体が湯の流れにもみくちゃにされる。

「俺もそろそろ、放ちたい……」
 荒く息を繰り返すノウファムの声に余裕がなくて、僕のお腹が歓迎するようにきゅんとなった。
 
「あ、あ、放って、僕に、あ、ふあ、ぁ……――っ!」
 快感に溶けた僕の声は普段よりもずっとずっとトーンが高くて、余裕のなさが出てしまっている。
 そんな声に刺激されたみたいに、視界に揺れるノウファムの燃え盛る目つきがぎらぎらと欲を剥く。
 
「……っ」
 ずるりと抜かれて、ずぱんっと波を立てて戻されて。
 孕ませるために獣がするような、雄の本能や衝動を思わせる激しさでピストンが繰り返される。激しい。すごい。
 ざぶんっとお湯が大きく波打って、溺れてしまいそう。
「あんっ、あっ、あっ……」  
 根元まで埋めた太い楔の先端でごりゅごりゅと奥を穿たれると、泣いて善がってしまうほど気持ちがいい。

「ああんっ、ああっ……そこっ、すごっ……ああ!」
 聖杯器官は今にも精が貰えるかと渇望して昂り、僕の頭の中は沸騰しそうだった。
 
「きもちい、きもちぃっ! あ、あんっ、あぁんっ、いい、いいぃ……」 
 媚肉が快楽に震えて、性器もお尻もお腹の中も、ぐずぐずに溶けてしまいそうだ。
 
「きもち、いいよぅっ……あっあっ、すごぃぃ」 
 僕の嬌声に煽られたようにノウファムが動きを荒くする。ずちゅ、ずちゅ、と突き上げられて快感が止まらない。

「はっ、……出すっ、ぞ……っ」
「あ、あ、きて、きて、ああっ」
 僕の中の何かが狂おしくそれを待っている。身体の奥から切羽詰まった切なさがずんずんと湧いて、おかしい。
 本来生まれ持っての性では持ち合わせないはずの何かが、叫んでいる。

「奥に、奥に……ほしい……っ」
 孕みたい。
 孕みたい。
 注いでほしい――怖い。僕は男なのに。嫌だ。欲しい。嫌だ。欲しい。ああ、もうわからない。わからない……!

「注いでやる」
「ああっ、くるぅ……っ、せいし、くるぅ……っ」
   
 一際激しく奥を突かれて、そのまま灼熱が爆ぜるようにしてさらに奥へと何かが来る。
 ざぱんと湯が大きく跳ねて、揺れて。
 全身が浮いてしまったみたいに絶頂に昇り詰める。白蜜を弾けさせた瞬間、求めていた熱が奥に迸るのが感じられた。

「あ……、あ……っ、……あ、ああ、っ、……あぁぁっ……――!」 
 
 奥で僕を征服する大きな楔がどくんどくんと脈打って、子種が流しこまれている。
 いっぱい。いっぱいだ。

「っ……エーテル。俺のエーテル…………」 
 いっぱいに満たされた充足感に恍惚となりながら、僕はひくひくと全身を震わせて奥で感じ続けた。

「あ……、あー……っ」
 ぬらぬらと精液を内側に擦りこむように中の男根が緩く抜き差しされると、顔をくしゃくしゃにして悦んでしまう。
「嬉しいか、エーテル」
「はぁっ、……はぁっ……嬉し……」 
「俺も、嬉しい」 
 
 性の歓びを知った青年の顔をして、ノウファムが唇を三日月のようにして笑顔になった。
 
「またしよう、エーテル」
「ん……」
 息を弾ませて舌を絡ませ合うと、幸せな気持ちが僕を満たしてくれる。

「いっぱい、しましょう。ノウファム様」
「ああ」
 言葉を交わしながら口付けを繰り返していると、繋がったままの奥が甘く震えて、気持ちがいい。
  
「ん、んん……っ」
 でも、ちょっとやばいかもしれない。
「のぼせちゃいそう……」
 ほわほわと熱く蕩けた声で言えば、ノウファムは頷いて僕を抱きかかえ、湯船から出してくれた。

「風呂は楽しいが、湯と身体は魔術で清めないといけないな」
 そんな風に呟いてノウファムが魔術を使ってくれるので、僕は心地よく全身を弛緩させて、うとうとと微睡みの縁に身をゆだねた。
 
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