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王宮内の波乱
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「エマリ殿の身辺調査は問題ありませんでした。家族も調査しましたが、何もありません」 ソウカンは報告した。 嬉しそうにロイアードは「これは決まりですな」「うーん…それがなあ…」「何かございましたか?」 ミエノが訪ねる。 「いや、どうも俺の初めての伽の事を聞いたらしいんだけどな?そこからなんか落ち込んでるみたいなんだよ。2人共何か知らないの?」 ローアとミエノは思考する。 「陛下の初めての相手は自分が務めたかったとかでは?」「でも、俺この前伽の相手は誰かに聞いてみろって言ったから違うと思うぞ?」 ローアの意見は外れた。 「…では、湯浴み女が務めたというのが気に桑名買ったのでは?」「え?なんで?」「側室ならともかく、湯浴み女と交わったというのは自尊心が傷つきましたので」 湯浴み女はあくまでも身体を洗い、酒を飲むなら相手になり、急病でも対処する為の相手であって、本来は交わりの相手ではない。 「そういうもんかな?」「そういうものでございます。側室なら子も作れるのに湯浴み女であれば堕ろさせなければ不仲の元になります。ですから、湯浴み女が初めての相手で今も務めているのが腹立たしいのかも知れません」「うーん」 男達には理解出来ない女の価値観に、共感しようと努力してみるもやはり理解出来ない。 「当たっているならアイラム陛下には本気で惚れておりますね。人柄も良し、美人で良し、頭も良し。良い相手ではございませんか」「それは確かに」 男達も共感する。 調査結果が出るまで何度も会い、言葉を交わした。 ローアへの敵意は取れた様子を見せている。 「お前達からは見れば問題は無しか。…では、王妃として迎えようか!」 執務室が沸き上がる。 男達は抱き合い、ミエノとローアは満足した。 「式はいつになさいましょう?」「誕生日の祝いは無しにして…12月23日にしようか。祝いの日は連続させてしまおう」「かしこまりました」 「エマリさん」「これは陛下。何か?」 エマリは湯浴み女が相手という事が発覚すると落ち込んだ。 もっと早く帰国していれば、という無念さと、何故湯浴み女なんだ、という悲しさがあった。 メイド達とも仲が良いのも愉快ではない。 「エマリさん。結婚の件、受けさせてもらいたい」「え…真にございますか…?」「本当です。もう宰相にも式の日も伝えてあります。アイミエ・ミエリ王妃殿下となりますが、よろしいですね?」「は…はい…!」「では、エマリさんには共に歩いていただきますよ。俺の為に、国の為に」「はい…良き夫婦となり、良き子を作り、良き国としましょう!」 エマリの腕を取り、引き寄せて熱く抱擁した。 この陽の当たる庭は、ロイアイトミアイが亡くなった庭である。 皆が忌み嫌う場所であるが、このプロポーズで神聖な雰囲気に包まれた。 政府の発表に国内どころか派遣された軍まで大いに喜び、王宮内も2人の関係を祝福した。 男達には「やりましたね!こんな綺麗な妻を迎えるとは!うちのと替えてください!」「嫌」 女達は「あんな子供だった陛下が…」と泣いて喜んだ。 「良かったですね。引き取ってくれる女性がいて」「えっ?俺が引き取られるの?逆じゃなくて?」 結婚さえも女達からからかわれる始末であった。 驚いたのはエマリの家族だった。 父のサインドは娘と同姓同名の女だと言って信じず、エマリから報告されてやっと信じた。 祝福のメッセージが世界中から送られて担当者は大忙しで、各国首脳からは直接電話で祝福されてアイラムは寝不足になってしまった。 「もう嫁取りとはアイラム陛下はやりますな」「ありがとうございます。大統領」「いや、国王に即位して間もないうちに王妃が決まるとは流石に思いませんでしたよ」 クリス・ケネディ大統領とはよく電話で話すのでお互い堅苦しさは取り外されている。 「それで、目出度い時に聞く話しでは無いので聞きづらいんですが…テログループに恩赦としてもしや和解なんて事はありませんよね」「いえ?むしろロイアード元帥は現地の軍に派手に祝わせる為に弾薬や砲弾の類を大量に送る許可を求めに来ましたよ」「それは良かった!しかし良いですな。大層な美人だと聞いてますよ?歳上という事もね」「アメリカはなんでもご存知ですね」「情報は命ですよ。そういえば、テログループが貴国と和解しようとしているらしいですが」「私は何も聞いてませんね。まだ準備やら条件の模索中でしょう?突っぱねますよ」「いや、安心しました。出来るだけ結婚式には参加したいと思っております。都合がどうしてもつかない場合は副大統領と駐在大使を行かせますよ」「ありがとうございます。では」 やっと祝いの電話の相手をするという業務を終わらせると、ソウカンがやって来た。
「結婚式まで後4ヶ月程ありますが、お休みしてエマリ殿ともっと仲を深めてください。それまでは仕事はご自重してください」「ええ?嫌です」「夫婦の円満は国家の根幹に関わります。夫婦になればそんな暇も無くなるかと思いますので、今の内に恋人としてお戯れするのが良策かと愚考します」「でもなー…。不味く無いか?」「祝福ムードに水を差せるのはテログループのみです。そちらはロイアード元帥と軍が苛めますので心配ございません」「んー…」「これは部下を育てるという意味もございますので、お休みください」「そうか。分かった」「ありがとうございます」 長い休暇をエマリはとても喜んでくれたので、アイラムも喜んだ。 「海外旅行するなら国に言ってからじゃないとなぁ」「では、行きたい所がございます」「言ってみ?」 そして侍従長、侍従達、護衛を数人を着けて国を出た。 エマリと共に、様々な場所に行き、様々な事を体験する。 アイラムは「デートという物はこういう物か」そう思いながらも自身もエマリという女に惹かれた。 2人は恋人として急速に仲が深まると、遂には身も交わした。 各国から歓迎されて護衛も付けてくれた。 16歳の誕生日は派手な事は嫌ってエマリ、侍従達と護衛達で祝いをした。 その間に、クリス・ケネディ大統領の言う通りに極秘でテログループから和解の打診があるも、国王は旅行中なので断る。 ローアと侍従、それにエマリも仲が良くなって酒を飲む事も多い。 アイラムは仲を危惧していたが杞憂となった事に満足した。 自身は酒は飲まず、理由としてロイアイトミアイの2人の乱れる様が脳内に残っていたので毛嫌いまではしないが遠ざけた。 アイラムは遊び惚けるだけでなく、その国の政府高官や国民達とも触れ合い、人生で一番楽しい時間を過ごす。 楽しい一時が終わりを迎える前に、帰国したアイラム達は残りはのんびりとしていた。 「陛下も遊んで体力が付きましたね」「そう言えばそうだな。遊び疲れたけど、面白い旅だった」「はい。また行きとうございます」「テロリスト共の件が片付いて国が安定すれば行けるんだけど。また直ぐにでも、という訳にもいかない」「そうですか。お子も出来ればより難しくなりそうですね」「それならそれで、国で楽しもう。この国はそういうのんびり出来る場所も少ないし、リゾート地も作っていくか」「楽しみにしております」「任せてくれ」 旅の疲れを癒やしたアイラムは少し予定を早めて復帰した。 「テロリスト共との和解の道は無い。右腕だけなら無くなく和解もあったが、あいつらは無辜の国民を焼き殺した。親は子を抱きしめ、子供の苦痛に歪んだ顔と叫び声はまだ鮮明に記憶に残っているぞ」 ソウカンはアイラムが許さないのは容易に予想が付いていたので和解の交渉には耳さえ貸していない。 「テロリストは我が国の兵士が怖いようです」「今は王妃が誕生するので喜びながら殺していますからな。立て籠もるなら建物ごと、地下に潜むなら生き埋めにして泣かせております」 ロイアードは嬉々として報告する。 「そう言えばドローンはどんな感じだ?」「小さい物にカメラを取り付けて偵察用として運営しております。それは街中や平野、丘等にも活用出来ています。これにより突然の襲撃や奇襲、街中のパトロールにも効果が出ております」「中々良いみたいだな。俺からすればオモチャだけど。保安部は?」「国内で扱う案件は精々が見張りぐらいですな。尋問官は拷問で忙しそうですが、間新しい情報はあまり出てきません」「そうか。精神的に疲弊した部下は仕事に支障が出ても文句は言わない。迷わず休ませろ」「はっ」「宮内庁長官。お前はどうだ?」「既に計画は進めております。準備も始めており、問題ありません」「そうか。問題は多少はあったが各自良くやったじゃないか。部下の育成は引き続き頼む」 現場レベルのミスはあっても上層の者が良く挽回して叱責や処罰を必要とするまでには至らず、アイラムは上機嫌であった。 式当日、雪を心配したが晴れ晴れとしている天気の中に執り行われた。 大層美しく着飾ったエマリ王妃と、神々しさを見せる少年王の結婚式は盛大であり、臣下も民衆も声が枯れる程「アイミエ・アイラム国王陛下万歳」「アイミエ・ミエリ王妃殿下万歳」と叫んだ。 身分の上下も無く、一緒に国歌を斉唱する声は国中に響き渡る。 外国人移住者や労働者に至るまでの万歳三唱と国歌斉唱は天に自分に喜びを知らせるかの如く轟かせた。 特別恩赦によりミエモの王族籍復活と戦闘行為の1ヶ月の停止、軽犯罪者の出所が決定された。 ミエノミエモの王族籍復活に泣いて喜んだ。 アイミエ・ミエモは義妹として王位継承権は与えられなかったが、アイラムとミエリに可愛がられて育ち、王族の金融資産の運用に才能を見せる事になる。 そして国の成長が著しい事を示す結果が数字として、現実として示される結果が出た。 これに政府は大いに満足した。 ロイアードはこれにより新しいオモチャを手に入れるかと思われたが、前回同様兵器の更新と軍事技術の開発費増という結果に終わって落ち込んだ。 貧困者の教育費の全額負担が可能となり、様々な技術向上に力を入れ始める。 設備を整え、海外から技術講師を雇い入れて開発した軍事技術以外は民間に惜しみ無く供出させて底上げを始める。 軍の質向上の為に養成学校を開設し、小中高大と幼少からの教育にも乗り出した。 それに英才教育を施す為の学校も設立した。 これは質の高い教育と高度な勉学に励ませる。 驕りが出ない為に質素な生活を心掛けさせ、ボランティアにも精を出させる。 アイラムは「エルストロウ王国人とは弱い者を助け、真面目に歩みを止めない者の事を指す」と教育させた。 アイラム、ミエリ、ミエモは頻繁に学校を視察する事になる。 半年経った時、ミエリの懐妊が発覚。 ソウカンとロイアードは喜んだが、アイラムは嬉しいが父になるという実感は湧かず、戸惑った。 ミエリ自身は女医なので落ち着いているが、アイラムはミエノが懐妊している時に世話をしていた者達を付けた。 クリス・ケネディ大統領と電話で「女は子供を生むと変わりますよ」と脅されるも「ミエリに限ってそんな事はない」と反論するも、「皆そう言います。そして同じだったと思い知ります」と忠告を受けた。 王宮内の男達にも同じ忠告を受け、不安となり出産して子供がいる女達に理由を聞いて回る。 「夫は放っておいても生きていけますけど、子供はそうはいきません」「それは…そうだな。至極当たり前だな」「だから夫はさっさと働いて稼げとしか思いません。陛下は…子供なので目を離せませんからどうでしょう?」「おお…!父親になるのにまだ子供扱いなんだな…!」 父になる男をまだ子供扱いする事に、何故か感動を覚えた。 それからはアイラムに取って恐ろしい日々の始まりだった。 歩行・階段昇降・躓き・悪阻・睡眠時間の増減・入浴・食事の変化。 ミエリの行動が全て不安になってしまい、周りの者達に爆笑される始末である。 陣痛が始まると一気に落ち着きが無くなった。 「産まれるというのに縁起が悪い」として一切の刑罰や戦闘行為を止めさせたアイラムはそれ以外は命令せず、ヘリでソウカン宰相、ロイアード元帥が到着した。 ミエリの父、サインドも着いた。 「少し落ち着きなさいませ」「落ち着けるか!長くないか!?」「まだ1時間経ったばかりではないですか。私は落ち着けと申しているのですよ。ちゃんと座って待ちなさい」 ローアとミエノに怒られてテーブルに着いた。 アイラムとサインドは落ち着きが無く、ソウカンとロイアードは「早く産め!早く産め!」と心待ちにしている。 ミエノとミエモ、ローアは楽しみにしているがアイラムとサインドの落ち着きの無さに呆れ、宮内長官はアイラムを只管に宥める。 「おい!もう2時間だぞ!」「普通はそんなに直ぐには出ません。まだまだ掛かりますのでそんなに気を揉むと倒れますよ」「そういうもんか…」 9時間後に看護婦が現れた。 「お生まれになられました。元気な男の子です」「…そうか!」 結局アイラムは落ち着きを取り戻す事は無かった。 皆が喜び、ミエリを称える。 部屋に入るとミエリは汗まみれで息も絶え絶えであった。 その横に産まれた赤ん坊が寝かされていた。 「良くやったな。ミエリ」「はい…陛下」「大きい子だな」「5180グラムのお子です。これだけ大きいと将来はさぞ立派な体躯になるでしょう」「そうか。お前達も良くやってくれた」 医者達と看護婦達に礼を言っているとミエリは眠ったようだ。 「念の為にこれからミエリ王妃殿下と王子共に健康をチェックします」「うん。俺は出よう」 部屋から退出して、皆が待つ部屋に移った。 「5180グラムの子だ。立派な大男になるらしい。今は2人共健康かどうか調べてもらっている」「大きい子ですな。これはロウアイ様並になりそうですな」「名は決めてあるのですか?」「名?いや、決めてない」「早くお決めください。発表したいので」「今か?………じゃあソウアイで」「はい。ソウアイ王子ですね」「ソウアイ王子ですね。はいはい」 軽い乗りで決まった時期国王候補、ソウアイはロウアイに劣らない偉丈夫なるも、心優しいところは両親から受け継いで国中の女達を惚れ惚れさせてアイラムに嫉妬される。 ロウアイ似の比類なき身体能力を発揮し、特に格闘技においてはあらゆる種目でトップクラスの強さを誇り、素手では人類最強ではないかと噂されるまでとなる。 男子誕生は国を沸かせ、アイラムとミエリの血を引く子に大いに期待した。 ローアはミエリの懐妊を知った頃から赤子の世話の方法を王宮内の子や医者から学び、準備していたので世話は何の問題も無く務められたが如何せん重いソウアイに苦労する。 親子でローアにべったりであり、皆が「やはり陛下の血だ」と納得した。 「よく乳を飲む子だな」「飲むのは良いのですが、一苦労です。吸う力も強くて痛くてたまりませんし、重うございます」「それは難儀だな。乳母探そうか?」「いえ、初めての子は自分の母乳で育てます」「ミエリが良いならそれで良いけど、俺は抱けんしな。ローアに赤ん坊の世話を学ばせて正解だったわ」「陛下…」 アイラムは我が子を抱けないという事に引け目を感じていて、よく周囲にそう漏らした。 「そろそろ会議だし、終わったら来るよ」「お待ちしております」 やはりこの年の歳入も多く、アイラムもソウカンも毎年収入が増えるのは当たり前という思考となってきた。 「駐留軍各国との協議は何だった?」「アメリカが現地のテログループの殲滅は避けた方が良いのではないか、という協議でした」「なんで?その為に駐留軍がいるんじゃないのか」「アメリカと現地政府がテログループの背景は宗教であるから殲滅しても小規模のテログループが乱立して泥沼化、ゲリラ戦になる事を危惧している様です」「それはありえますな。奴等は人質を殺す、テロ行為を行う度にアッラーがどうだのイスラム教がこうだのと吐かします。小規模グループの乱立はあらゆる場所でゲリラ戦を仕掛けられる事になるでしょう」 ロイアードは肯定した。 「…そうか。それなら撤退させろ」「良いのですか?」「エルストロウはテログループ憎しで派遣した。そんな話しが出るぐらい殲滅目前ならもう復讐する機会も少ないだろ。エルストロウ軍は帰還する」「しかし…」「後はテログループが結成された原因を作った連中に任せれば良い。エルストロウは殲滅を手伝いに派遣しただけだ。帰らせろ」「かしこまりました」「ロイアード。投下型核兵器は処分しろ」「了解しました」「金の割り振りは、前回の割り振りに上乗せで良いかな?」 異議を唱える者は居らず、決定となった。 「さあ、ソウアイ王子の御機嫌伺いにでも参りますか」 ゾロゾロと会議参加者達がソウアイ王子の下に集まり、抱かれてもソウアイは泣きもせずに眠る。 ソウアイが3歳となった頃、ロイアードは歳を理由に引退を伝える為に王宮にやってきた。 「そうか。確かにもう歳だもんな」「はっ。テロリストイジメも無くなりましたし、部下達も育ちました。そろそろ引退して席を譲ってやらねばなりますまい」「ふーん。ま、それなら言う事は無いな。じゃあ、俺の相談役にでもなってもらおう」「相談役ですか?私に務まるとは思えませんが」「そうでもないぞ。退官式が終わったら出仕してくれ」「分かりました」 退任式にはアイラムとミエリも参加したが、ソウアイはローアと留守番をしている。 18歳から軍人一筋であったロイアードは妻とは死別している。 祖父や父やロイアード、それに息子も軍人という代々軍人の家系であった。 相談役というものが自分に務まるのか不安はありながらも、国王の命である。 余生の事は考えていなかったが、いつ死ぬかは分からない人生を歩んだのでゆっくりしたいとは思っていた。 自分でも歳の割には若く、元気である事は承知しているが、まだまだ楽を出来ない事に溜息を吐いた。 出仕する前に、王宮近くに引っ越したロイアードは手伝ってくれた若い元部下と宮内庁の者に礼を言い、休憩してから王宮に入った。
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旅の疲れを癒やしたアイラムは少し予定を早めて復帰した。 「テロリスト共との和解の道は無い。右腕だけなら無くなく和解もあったが、あいつらは無辜の国民を焼き殺した。親は子を抱きしめ、子供の苦痛に歪んだ顔と叫び声はまだ鮮明に記憶に残っているぞ」 ソウカンはアイラムが許さないのは容易に予想が付いていたので和解の交渉には耳さえ貸していない。 「テロリストは我が国の兵士が怖いようです」「今は王妃が誕生するので喜びながら殺していますからな。立て籠もるなら建物ごと、地下に潜むなら生き埋めにして泣かせております」 ロイアードは嬉々として報告する。 「そう言えばドローンはどんな感じだ?」「小さい物にカメラを取り付けて偵察用として運営しております。それは街中や平野、丘等にも活用出来ています。これにより突然の襲撃や奇襲、街中のパトロールにも効果が出ております」「中々良いみたいだな。俺からすればオモチャだけど。保安部は?」「国内で扱う案件は精々が見張りぐらいですな。尋問官は拷問で忙しそうですが、間新しい情報はあまり出てきません」「そうか。精神的に疲弊した部下は仕事に支障が出ても文句は言わない。迷わず休ませろ」「はっ」「宮内庁長官。お前はどうだ?」「既に計画は進めております。準備も始めており、問題ありません」「そうか。問題は多少はあったが各自良くやったじゃないか。部下の育成は引き続き頼む」 現場レベルのミスはあっても上層の者が良く挽回して叱責や処罰を必要とするまでには至らず、アイラムは上機嫌であった。 式当日、雪を心配したが晴れ晴れとしている天気の中に執り行われた。 大層美しく着飾ったエマリ王妃と、神々しさを見せる少年王の結婚式は盛大であり、臣下も民衆も声が枯れる程「アイミエ・アイラム国王陛下万歳」「アイミエ・ミエリ王妃殿下万歳」と叫んだ。 身分の上下も無く、一緒に国歌を斉唱する声は国中に響き渡る。 外国人移住者や労働者に至るまでの万歳三唱と国歌斉唱は天に自分に喜びを知らせるかの如く轟かせた。 特別恩赦によりミエモの王族籍復活と戦闘行為の1ヶ月の停止、軽犯罪者の出所が決定された。 ミエノミエモの王族籍復活に泣いて喜んだ。 アイミエ・ミエモは義妹として王位継承権は与えられなかったが、アイラムとミエリに可愛がられて育ち、王族の金融資産の運用に才能を見せる事になる。 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「産まれるというのに縁起が悪い」として一切の刑罰や戦闘行為を止めさせたアイラムはそれ以外は命令せず、ヘリでソウカン宰相、ロイアード元帥が到着した。 ミエリの父、サインドも着いた。 「少し落ち着きなさいませ」「落ち着けるか!長くないか!?」「まだ1時間経ったばかりではないですか。私は落ち着けと申しているのですよ。ちゃんと座って待ちなさい」 ローアとミエノに怒られてテーブルに着いた。 アイラムとサインドは落ち着きが無く、ソウカンとロイアードは「早く産め!早く産め!」と心待ちにしている。 ミエノとミエモ、ローアは楽しみにしているがアイラムとサインドの落ち着きの無さに呆れ、宮内長官はアイラムを只管に宥める。 「おい!もう2時間だぞ!」「普通はそんなに直ぐには出ません。まだまだ掛かりますのでそんなに気を揉むと倒れますよ」「そういうもんか…」 9時間後に看護婦が現れた。 「お生まれになられました。元気な男の子です」「…そうか!」 結局アイラムは落ち着きを取り戻す事は無かった。 皆が喜び、ミエリを称える。 部屋に入るとミエリは汗まみれで息も絶え絶えであった。 その横に産まれた赤ん坊が寝かされていた。 「良くやったな。ミエリ」「はい…陛下」「大きい子だな」「5180グラムのお子です。これだけ大きいと将来はさぞ立派な体躯になるでしょう」「そうか。お前達も良くやってくれた」 医者達と看護婦達に礼を言っているとミエリは眠ったようだ。 「念の為にこれからミエリ王妃殿下と王子共に健康をチェックします」「うん。俺は出よう」 部屋から退出して、皆が待つ部屋に移った。 「5180グラムの子だ。立派な大男になるらしい。今は2人共健康かどうか調べてもらっている」「大きい子ですな。これはロウアイ様並になりそうですな」「名は決めてあるのですか?」「名?いや、決めてない」「早くお決めください。発表したいので」「今か?………じゃあソウアイで」「はい。ソウアイ王子ですね」「ソウアイ王子ですね。はいはい」 軽い乗りで決まった時期国王候補、ソウアイはロウアイに劣らない偉丈夫なるも、心優しいところは両親から受け継いで国中の女達を惚れ惚れさせてアイラムに嫉妬される。 ロウアイ似の比類なき身体能力を発揮し、特に格闘技においてはあらゆる種目でトップクラスの強さを誇り、素手では人類最強ではないかと噂されるまでとなる。 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