馬鹿な子に未来は託された。

八十三広

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現状

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結城賢人は親に立派な名前を貰ったにもかかわらず正反対な少年に育っている。

遊びに夢中な賢人は、勉強という行為は頭の良い者の習性だと思わんばかりに勉学に励まない。

明るく素直で優しい性格が賢人の美点だと両親も周囲の者も捉えた。

「あんたまたびしょ濡れになって帰ってきたの!?」

傘を持って友人宅に遊びに行った賢人が雨を滴らせて帰宅した事に母は頭を抱えた。

賢人「雨楽しかったから」
「風邪引くでしょ! ほら、脱いで」

自由奔放な賢人に両親は悩まされている。

頭に障害でもあるのかと思って精神科のドアを叩いた事もある。

「お風呂に入りなさい!」
賢人「そうする!」

大きい声で良い返事をする賢人の無邪気さに怒る気も失せてしまう。

食欲旺盛な賢人は2杯おかわりして満足な賢人はさっさと苦行とも思える宿題を片付ける。

賢人は早く就寝する。
遊び疲れて起きてられないのだ。
この日も9時30分前にはベッドに入った。

ゆっくりと眠気が強くなり、意識が飛ぶ。


キュアノ・オー・ロンギアルは第一障壁での大規模な戦闘報告を受けてから、頭を抱えていた。

ロンギアル王国は元々広大な大地を有している。

最南端にあったロンギアルは、最北端の国から出現を始めた魔物達に対処する時間はあった。

国が次々と魔物達に応戦している中、第一障壁は防衛がどうにか可能な距離まで広げて作った。

第二障壁、第三障壁と造り上げたロンギアルは貴族達を障壁の防護や城の防衛、生産に割り振った。

貴族達は魔法を使える。

例えば物の作製や田畑の開墾、鎧の強化。

頭の中に槍を思い浮かべれば現れるし、石を取り除きいて木を抜いて地面を平らにするイメージを描けば開墾になる。

鎧をより硬くなるイメージを描けば硬くなるといった具合だ。

魔法はロンギアルの王の祝福を受けなければ使えないという難点があるが、他国の避難民を受け入れるという点では迅速な対応が可能になって避難民の吸収は上手くいった。

とうとう隣国も陥落間近になると船に乗り込んで撤退を始め、海は大型船が至る場所に浮いている。

大きな帆に自国の紋章を描いて海で漁をして生きているが、度々他国の舟や海の魔物や飛翔する魔物に襲われている。

それでも陸に上がってロンギアル王国にはやって来ない。

海へ逃げた者達もロンギアルも陥落すると考えていたからだ。

如何に貴族が魔法を使えて国力を増強しているロンギアルも魔物達の大量の出現と、大集団の攻城戦や空からの襲撃に対応に苦慮していた。

襲撃を受ける様になって6年が経過したが一度も第一障壁さえ破られてはいない。

精鋭の兵と堅固な障壁による防護のお陰である。

そして、その第一障壁から損耗が激しくて新兵の訓練と武器や防具の製作に遅れが出る日は遠くないだろうと報告を受けた。

女王であった母が崩御して即位してから4年が経ったキュアノ・オー・ロンギアル女王に第一障壁を放棄して兵と民を第二障壁まで下がらせるかどうかの決断する必要性が迫っていた。

第二障壁も第一障壁と変わらず堅固で、第一障壁よりも縮小されているので護り易いとキュアノは考える。

しかし第二障壁内部は第一障壁内部よりも面積が狭い。

そこに第一障壁内部にあった訓練場や兵舎、鍛冶屋に救護所が収まりきるか疑問の声が上がっている。

第二障壁では採石場や鉱山、それに大きい森があったからだ。

第三障壁の内部は民家と畑だ。

人も食物も余っていて一時は第四障壁の建設も計画されたのだが、兵士の育成と障壁の完成までの防衛が困難であると見られた為に計画は頓挫した。

現状を打破する一手が必要だがその一手が考え付かないでいた。
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