馬鹿な子に未来は託された。

八十三広

文字の大きさ
5 / 52

一歩

しおりを挟む


賢人「攻めてくる魔物って血とか流れるんですか?」

リリア「流れるらしいわよ。痛がりもするし傷ついた箇所によっては怯むとか」

賢人「ふーん。動物っぽいところはあるんですね」

リリア「食べなくても死なないけどね」
賢人「凄え! ペットとして欲しい!」
リリア「懐かないわよ」

賢人は残念に思いながらも六丁目の銃を仕上げた。

来て早速に細部まで分解させられて憶えられなかった箇所を記憶する。

細部まで記憶出来たおかげで二丁は創造出来る体力が残っている。

リリア「あと一丁造って。残りは弾にしましょう」

創造したものの、昨日より多く造ったにもかかわらず体力が残っている。

部品や構造を理解すると楽になるというのは真実らしく、喜べる結果となった。

リリア「でも、銃が増えると弾も増やさないといけないのよね……」

賢人「でも弾はあんまり疲れないよ?」
リリア「銃が増えるなら必要な弾も増えるのよ?」
賢人「あ……」

この子の将来は大丈夫なのかと心配になる。

賢人「それで行くと……連射出来る様な銃はもっと駄目だなあ」
リリア「そんな銃があるの?」
賢人「あるみたいだよ。友達が言ってたけど」

連射出来る銃を作るとなると、構造も複雑になる為に製造は今の比ではないほど難しくなるだろうとリリアは見解を持った。

それに、弾の必要量も段違いに増えるだろう。

リリア「どっちにしろ今の……コンバットマグナムとか言うのを大量に造ってからね」

       ーガチャー

ダーデ「どうだ? 順調か?」

ダーデが入室すると、リリアは立ち上がった。

ダーデ「構わん。座って休んでいろ」
リリア「は、はい」
ダーデ「お、今日七つか」
賢人「うん。後は弾造る」
リリア「こら、賢人!」

リリアは賢人の言葉遣いを窘めた。

ダーデ「構わんぞ。そもそも賢人はロンギアルの民でもない協力者だ。我等に敬意を払う必要も無いのだ」

リリア「は、はぁ……」
賢人「将軍。本当にこんな銃で魔物に効くの?」

ダーデ「効くぞ。何せ当てられるだろうからな。ただ、弾込めに時間が掛かるのがな瑕だな」

賢人「……一気に弾入れる物があったな」
ダーデ「何!? 造ってくれ!!」
賢人「帰ってどんなだったか調べとく」

ダーデは興奮しながらブツブツと独り言を言い始めた。

賢人「リリアさん。修理とかするのってどうにかならないの?」

リリア「うーん……修理しなければならない箇所さえ分かってて、元の状態を知ってるなら可能……なのかもね。あんたなら」

修理が可能でも俺がやらなければならないのかと肩を落とした。

賢人「あー疲れた……風呂入りたい」
リリア「風呂ねえ。頑張ればご褒美に入らせてくれるかもね」
賢人「え? 何で風呂がご褒美なの?」

リリアは何を言ってるんだという顔をして見つめるのだが、賢人には理由が分からない。

リリア「あんたにほんでは毎日お風呂入ってるの?」
賢人「入ってる。入らないと怒られるし」
ダーデ「ん? お前金持ちの子なのか?」
賢人「そうでもないよ?」

リリアとダーデは賢人には虚言癖でもあるのかと疑った。

リリア「井戸から水を取ってきて薪で温めるんでしょ?」

賢人は文明の差がある為にそんな方法なのだと理解した。

賢人「ごめん。説明出来そうにない。でもみんなお風呂に入れるよ」
ダーデ「水じゃないのか?」
賢人「お湯だよ。温かさも自由自在」

益々分からなくなった二人は、にほんという国はロンギアル以上に魔法技術も発展した国という想像になった。

そんな国の子だから賢人も魔法を使えると思えば、自然と魔法を行使出来る理由も納得がいく。

ダーデ「にほんという国にはなにかあるのだ?」

賢人「この国を見てないしどう説明すれば良いか分かんないな……当たり前すぎて」

そもそもこっちの生活や文明レベルや科学技術、食べ物に至るまで分からないし、日本での生活についても説明は難しい。

大抵は電気で物は作動する。

では、電気とは何か? 何故電気で作動するのかと聞かれても賢人は理解していない。

現代日本は馬鹿な小学生が説明出来る事は何一つ無いのだ。

馬鹿な癖に、何か言ったら説明を求められると勘が働いた賢人は黙っておくのが最善の手だと考えた。

リリアとダーデは賢人が怪しく思えてきた。

暮らしや生活、国の事を話さない事が難しいとでも言うのか。

賢人「詳しい説明を求めないなら話しても良いけど」

ダーデ「……話してみろ」

嫌々ながら生活や暮らしの事を話す賢人。

二人は驚いたり不思議そうに思った顔をしたり、怪しんだり感心したりと様々だ。

二人は作り話にしては事細かいと思ったと同時に、にわかには信じる事が出来ない。

そして、見てみたいと思った。

ダーデ「実はな、記憶を人に見せるという魔法もあるんだ。キュアノ陛下には伝えておくから、見せてくれないか?」

賢人「良いけど……製造はどうするの?」

ダーデ「それも含めてキュアノ陛下に相談する。良いな?」

賢人「良いよ? でも説明は無理」

ダーデ「決まりだな! 今日はいつもの様に製造を続けてくれ!」

楽しそうにそう言ってダーデは豪快にドアを閉めて退出した。

リリアはこの少年が心配になった。

記憶を映像化するのは尋問官が使う魔法で、尋問されている内容の記憶を頭に思い浮かべないと頭痛が起きる。

その痛みは大の大人が転げ回る程だ。
キュアノが配慮してくれれば良いのだが。


それから2回目の来訪で、その時が来た。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。 幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。 しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。 それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。 母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。 そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。 そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...