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第1話 憧憬

再会 Episode:06

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「ウソついてどうすんだよ。てか、先に行ってこいって」
「あ、うん」

 こいつを風呂場へ押し込んで、その間に急いでメシの最後の仕上げにかかる。

 俺が言ったせいもあるんだろうけど、ルーフェイアのヤツはけっこう長湯だった。
 もっともシャワーなんてしばらくぶりだろうから、気が済むまで浴びたい気持ちは分かる。
 おかげでこっちも、慌ててやらずにすんでいい感じだ。

 と、盛大な音が風呂場の方から響いた。
 焦って脱衣所へ飛び込む。貧血でも起こしてひっくり返ってたらヤバい。

「おい、だいじょぶか!」
「だ、だいじょぶ……」

 幸い、こいつは何でもなかったらしい。
 脱衣カゴがひっくり返って、服が散らばってるだけだ。

「ちょっと……滑っちゃって」
「まだ調子悪いんじゃね?」

 なんせ夕べの今朝だ。いくら寝たからって、まるっきり元通りになるわけもねぇし。

「そう、なのかな……いやぁっ!」
「へ?」

 タオルが飛んできた。

「やだっ、見ないでっ!」
「――あぁ」

 やっと言ってる意味を理解する。

 ――けどなぁ。

 もうバスタオル羽織ってっから、裸ってワケじゃない。
 しかもついでに、そのバスタオルの下が……。

「ネミ並みの幼児体型見せられてもなぁ、別にどうってことね……」
「――!」

 間髪入れずにカゴがダブルで飛んできて、どっちも俺の頭に豪快に命中した。
 思いっきり怒らせたらしい。

「ンな怒らな――ちょ、待てっ!」

 続けて来た蹴りを、どうにかかわす。

「つかお前、バスタオル一枚で蹴りかますなって!」

 丸見えだっての。

「え? あっ、やぁぁぁぁっ!」

 だから自分でやっといて、悲鳴あげんなよ……。

「えーとその、ともかく服、着ろよな? 俺、外にいっから」
「うん……」

 しゃがみこんだこいつが、半ベソでうなずく。
 強烈な蹴りとかシャレにならねぇけど、こーゆーとこはなんか可愛い。
 外でしばらく待ってから、俺は声をかけた。

「もう平気か?」
「――うん」

 答えを待ってから開ける。
 さすがにおんなじこと繰り返してヒドい目に遭うのは、願い下げだった。

「さっきのすげぇ音で、お前が倒れたと思ったんだよ」
「……ごめん」

 着替えてる間に、こいつの頭も冷えたっぽい。

「ホントになんでもねぇんだな? どっかぶつけてねーだろな? 気持ち悪いとかねぇよな?」

 ぱっと見問題なさげだけど、念のために訊く。

「それは、だいじょうぶ……ごめん」
「ならいいや、メシ食おうぜ。腹減ったし」
「ご飯って……ホントに?」

 また言われるし。

「ウソ言ってどーすんだって、さっきも言ったろ?」
「でも……」

 まだ半信半疑のこいつを、食堂へ連れてく。

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