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第1話 憧憬

再会 Episode:07

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「すごい。料理……できるんだ」
「その辺のモン、並べただけだぞ?」

 いったいこいつ、どーゆー食生活してんだか。

 なにせテーブルの上に並んでるのなんざ、残ってた野菜のサラダとスープ、あとはトーストと目玉焼きとベーコンとミルクだけだ。
 ちなみに叔父さんたちは、夕べ駆り出されたっきりでまだ戻ってない。

「その辺、座れよ」
「うん」

 思ってたよりかは元気になってるこいつが、椅子にかけた。

「こんなちゃんとしたご飯……久しぶり」
「お前マジでメチャクチャな生活、してねぇか?」

 これが「ちゃんと」ってんじゃ、あとは推して知るべしってやつだろう。
 まぁ戦争してちゃ、しょうがねぇんだろうけど……。
 半分呆れながら、ともかく俺も座る。

「味付け、わかんねぇからほとんどしてねぇんだよ。そこの塩でもなんでも取って、自分で足してくれよな」
「うん、わかった」

 ルーフェイアが食べ始める。

 ――やっぱ可愛いよな、こいつ。

 金の髪で海色の瞳した、とびっきりの美少女だ。
 だからメシ食ってても、アンティーク人形が動き出したみてぇな雰囲気になる。
 なのにめっぽう強くて、けど繊細ですぐ泣いちまって、でも平気で炎の中へ飛び込んじまったり……。

「えっと……なに?」
「へ? あ」

 メシ食うの忘れて見てた。

「あたし……なにか、しちゃった……?」
「してねぇしてねぇ。
 それよりよ、その、えーと――あ、そうそう、おふくろさんから連絡、来てたぜ?」

 慌てて話題を変える。

「なんか、けっこーこの近くにいるらしいこと、書いてあった」
「ほんとに?」
「ああ」

 ざっとしか見ちゃいねぇけど、書いてあったことをこいつに言ってやる。

「じゃぁ、父さんも母さんも……無事だったんだ」
「よかったな」

 ただでさえ兄貴が死んじまったってのに、そのうえ「両親も」なんてことにならなくて、なによりってやつだ。

「居場所書いて返信しといたから、そのうちここ、来るんじゃねぇか?」
「母さんの性格じゃ、今日中に……来るかも」

 言い方からするとこいつの親、そうとうの行動派らしい。

「まぁいいや。ともかくメシ、食っちまえよ」
「うん」

 今度は俺も食べ始める。
 俺の通ってる学院の話だのなんだのしながらメシ食って――最後に違う話になった。

「お前さ、これからどうすんだ?」

 なんでンなこと訊いたかは、分からない。
 ルーフェイアのほうも、なんてことなしに答えた。

「しばらくは、休めると……思う」
「しばらくって、そのあとはどうすんだよ?」

 俺の質問に、ルーフェイアのやつが視線を落とす。
 海色の瞳から、涙がひとすじこぼれた。

「――やめちまえよ」

 俺が言うと、涙がさらにこぼれる。

「ヤなんだろ? だったら、やめちまえって」

 けど答えの代わりに、ルーフェイアが首を振った。

「なんでだよ?」
「だって……」

 あとは言葉にならない。ただ泣くだけだ。

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