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第3話 葛藤

苦悩 Episode:01

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 ◇Rufeir

 重い音を立てて、魔獣が倒れた。

 ここは校舎がある場所ではなくて、隣のちいさな島だ。
 丸ごとぜんぶが魔獣を放った訓練施設になっていて、日に何度も連絡艇が往復している。
 わざわざこんな場所まで来ているのは、校舎裏の訓練施設を使うのを、禁止されてしまったからだ。

 ほんとうは校舎裏の施設も、低学年は使用禁止だ。
 でも訓練が出来ないと困るだろうと、学院長が例外で、あたしの使用を許可してくれた。

 けどそこで、朝夕自主訓練を兼ねて魔獣を倒していたら、怒られた。
 根こそぎ狩ったらダメだそうだ。

 ともかくそういう理由で、ここまで毎日、通うことになってしまった。

 倒した魔獣がもう動かないのを確認して、息を吐く。
 複雑な気分だった。

 望んで来た学校は、楽しい。
 初めてのことで戸惑ってばっかりだけど、それも楽しかった。
 でもまさか、こうやって戦っているときがいちばん、気楽でいられるようになるなんて。

 馴染めない自分。
 同じことができない自分。
 ここはシエラでMeSだけど、それでもみんなとの間に、深い溝があるのが分かる。

 彼女たちは、実戦なんて知らない……。
 それは、いいことだと思う。けどそのことが、どうにもならない差になってた。

 あたしにとっての当たり前。
 生きていくために必要だったこと。
 けどそれはどれも、みんなにとっては非日常で、想像を超えた世界だと思い知る。

 いろいろ考えながらも、背後に忍び寄る気配に、ふたたび戦闘態勢に入る。
 音と気配と臭いが、どの魔獣かをあたしに告げる。

 間合いを計りながら振り向いた先には、イソギンチャクを思わせる魔獣。
 触手を振り上げ、一気に繰り出してくる。

 身体を入れ替えてかわすと、鞭のようなそれは、近くの大きな石を突き砕いた。
 この島に放されている魔獣は、さすがに強さが違う。

 ――でも。

 十分に引きつけておいて、低位の雷撃魔法を放つ。
 魔獣がひるんだところで、続けて火炎魔法。炎といっしょに突っ込んで、急所へ太刀を突き立てた。
 同時に、太刀を媒介にして、魔獣の体内へ雷撃を放つ。

 完全に動かなくなったのを確かめてから、あたしは魔獣から離れた。
 大きく息を吐く。

 やっぱり、ここへ来たことそのものが、間違いだったんだろうか?

 最近はみんな、露骨にあたしのことを避けてる。
 こっちを見ながら、囁き交わしてるのもしょっちゅうだ。
 中にはあからさまに言う子もいたし、持ち物に手を出そうとする子もいる。

 つまり……出て行け、と言いたいんだろう。
 異質なものを、人は警戒する。

 シュマーという一族の、総領家。
 代々傭兵をしてきた集団を、束ねる存在。

 冷静になって考えてみれば、こんなものがふつう人たちのあいだで、馴染めるわけがない。
 なのにそう分かっても、諦めきれない自分がいた。

 イマドがなぜかあっさり受け入れてくれて、だからもしかしたら他の人も、と思うのだ。
 けどそれは、彼が例外なだけで……。

 どうしたらいいのか、まったく分からなかった。
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