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第3話 葛藤

苦悩 Episode:06

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 ◇Natiess

 あのお嬢さん、思ってたほどヤワじゃなかったみたい。
 まだ授業とか、ふつうに来てる。

「もっと早く、ネ上げると思ったんだけど」
「イマドがいるからじゃない?」

 休み時間に、みんなでいつものおしゃべり。

「あの子って案外、あれで隙がないしね」
「あー、それたしかにそうかも」

 ルーフェイアって子、意外だけどすっごい用心深い。
 前に誰かが持ち物隠そうとしたけど、防御結界張ってあって手が出なかったって言ってた。
 そばを通るときに、転ばせようとかする子もけっこういるんだけど、一人も成功してないし。

「なんだろね、あの子。いわゆるお嬢様とは、ちょっと違うっぽいよね」
「そりゃまぁ、曲がりなりにもシエラの本校で、Aクラスになるくらいだし……」

 あの子、思ってたよりずっと頭良かった。
 理系はちょっと苦手っぽいけど、それだって十分トップクラス。
 得意な科目とか、まるで辞書か教科書だし。

「とゆかさ、あの実技、お嬢様にしちゃおかしくない?」
「うん……」

 みんなが顔を見合わせる。
 ルーフェイアって頭もたしかにいいんだけど、それ以上に実技がすごいの、だんだん分かってきた。

 それも剣技とかだけじゃなくて、待ち伏せとかかく乱とか、そういう実戦系まで強くて。
 けどこんなの、習えるもんじゃない。

「どっか、ほかのMeSにいたとか」
「あ、それはアリかも」
「でもそれでも、やっぱりおかしいよ」

 他のMeSからの転校は、ときどきある話。
 理由はいろいろで、もっと箔を付けたいなんてこともあるし、ふつうのMeSじゃレベルが低すぎて話にならないから、なんてこともあるし。

 ただそうだとしても、こういう実技も含めていちばんカリキュラムの進度が早いのが、このシエラ本校だったり。
 そこでついていくどころか、余裕でこなしちゃうとか、ちょっとあり得ない。

「なんだろね……」

 みんなで頭ひねってみるけど、答えなんてわかんなかった。

「でも、あの持ち物とか、お嬢様だよね」
「だよねぇ」
「どっちしたって、図々しすぎだし」

 けっきょくここへ話は戻ったり。
 そこへとつぜん、きゃらきゃらした声が割って入った。

「ねー、ホントにまだみんな、こんなコト続けんの?」

 視線がいっせいに集まる。

「こういうの、本校に入れないおバカさんが、やるんだと思ってた~」

 オレンジがかったふわふわの髪に、薄い水色の瞳。
 ルーフェイアほどじゃないけど、でもかなり小柄。
 けど見かけに反して、言うことやること何でも強烈。

 ミルだった。

「あんた、何が言いたいんだい」
「べっつにー」

 図太いのか鈍いのか、シーモアの鋭い視線にもぜんぜん平気。

「たださ、頭の良し悪しと、やる内容って関係ないんだなーって。ちょっと感心しちゃった」
「――!」

 周り中が殺気立つなか、それでもミルったらけろっとしてるし。

「でもさぁ、こーゆーのって、シーモアらしくないよねー。めっずらしー。
 あ、もしかしてアレ? イマドがルーフェイアと、仲良しなっちゃったから?」

 このあとの惨劇予想しちゃって、一瞬みんなが凍りついたり。
 ミルの言ってること……的外れ、ってワケじゃない。

 けどそれヌキにしたって、ルーフェイアって子、空気読まないし。
 まぁその点じゃ、ミルはもっと空気読まないんだけど。
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