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第3話 葛藤

転機 Episode:01

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◇Rufeir

 状況は、相変わらずだった。

 ――ムリなの、かな。

 イマドやロア先輩、訓練島のおじさんに、励ましてもらって頑張ってきたけど、自信がないなんてもんじゃない。
 そんなことを考えたら涙がこぼれそうになって、くちびるを噛んだ。
 さすがに教室で泣きたくはない。

 と、影が差す。
 恥ずかしくて目をこするフリをして、それから顔を上げた。

 オレンジがかったふわふわの髪。薄い水色の瞳。
 同じクラスの子だ。

「だいじょぶ?」

 屈託のない笑顔。

「話すの初めてだね。あたしね、ミル。ミルドレッド=セルシェ=マクファディ。
 んーと、ルーフェイアって長いから、ルーフェって呼んじゃっていい?」

 一気にまくしたてる。明るい声だった。

「ねぇねぇこれからお昼でしょ? 今日もイマドたちといっしょ? あたしも入れてね」

 夏の日差しにきらめく、海みたいな子だ。

「さ、早く行こ。好きなのなくなっちゃったらヤだし。
 イマドイマド、行くよー!」

 よく通る声で呼ばれて、イマドたちが振り向いた。

「げ、ミル、なんでてめぇが湧いてるんだ」
「べつにいいじゃん、なんとなくだし」

 やり取りについていけなくて呆然としてたら、ミルに腕を引っ張られて、そのまま廊下へ出て歩く。
 けどしばらく行った場所で、ミルがとつぜん、立ち止まって言った。

「ルーフェ、あのさ、だいじょぶ?」

 聞き返さなくても何のことか分かって、だからあたしは下を向く。
 だいじょうぶと答えたい。でも……そう言えない。

「そっか。そだよね。だいじょぶなワケないよね」

 イマドたちが、追いついてくる。

「何やってんだ?」

 ミルが、イマドたちのほうに、いたずらっぽい瞳を向けた。

「男が3人もくっついてて、なーんもできなすぎー」
「っ……!」

 彼らの顔色が変わる。

「あっは、やっぱ図星? そだよねー、ルーフェかわいいしー」
「てめぇ、何しにきやがった」

 イマドの表情が一気に冷たくなる。
 でも、ミルはまったく動じなかった。

「ほんとはさー、放置してよっかなーって。メンドイし。
 けど、ルーフェなんかすっごいワケありっぽいし、シーモアもちょーっと暴走気味だし」

 言って、一呼吸。
 彼女がなんとも言えない、底知れない微笑を浮かべる。

「だから、イタズラしよっかなって」
「え?」

 何のことか分からなくて、考え込むあたしの横で、イマドが怒鳴りつけた。

「てめぇ、タダでさえややこしくなってんのに、これ以上引っかき回したら容赦しねぇぞ!」

 すごい剣幕だ。

「きゃー、イマド怒った怒った~」

 それでもミルはお構いなしで、楽しそうに笑ってる。

「イマド、わっかりやすすぎー。ルーフェにぞっこん?
 ま、イタズラっても、ただの実験だからー。どうせいまより、悪くなんてならないし」

「そりゃたしかに、そうだけどさ……」

 イマドたちが顔を見合わせた。
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