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第4話 温もり

遠出 Episode:05

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「だって、なんか……ぜんぜん関係ない……?」
「ミル、お母さんが軍にいたんだ」

 そんな理由でいいんだろうか?
 事実は小説より――とは言うけど、ここまでくると予想をはるかに超えてる。

「ま、ご多分に漏れず、それなりの事情はあるんだけどさ」
「……そう、なんだ」

 そう言われて少し納得する。
 もっとも抱えている事情って点じゃ、あたしが学院内で一、二を争ってしまうだろうけど。
 と、勢いよくミルが戻ってきた。

「用意できてるって♪」
「そりゃよかった。じゃ、行こうか?」

 なぜかシーモアが、がっちりとあたしの右腕をつかむ。

「そだね」

 ナティエスが左腕。

「な、なに……?!」

 けど、みんな笑うだけだ。

「は~い、いってらっしゃぁい!!」

 そのあたしの背中を、勢いよくミルが押した。

 ぜんぜん予想してなくて、思わずよろける。
 そこをすかさず、シーモアとナティエスに引きずられた。

「ちょ、ちょっと!」
「だめ! ちゃんとこっち来て!」

 なんか勢いにおされて抵抗できなくて、そのまま隣室まで連れて行かれる。

「え、あ、やだ! ちょっと、何……?! やだ、やめて!!」
「だ~め♪」
「やだ、やだってば!」
「静かにしなさいって」

 まさか、友だち相手に本気を出すわけにもいかなくて、されるがままだ。

「どうだい、出来たかな? おや、いいじゃないか」

 結局ミルのお父さんが覗きに来たときには、しっかり着替えさせられていた。

「ねぇ、こんな格好、やだ……」
「どして? カワイイよ」
「だって……」

 ひたすら動きづらい。
 だいいちスカートの類なんて、何かあったときの正装以外、着たことがない。

「ほら、いいからこっち来なよ」

 またもや引きずって行かれる。

 次に連れて行かれたのは、ミルの家の食堂だった。
 なんだかいろいろ、テーブルの上に並べられている。
 でもこれ、どうみても何かのお祝い……?

「ねぇ、これ……何?」

 あたしが聞くと、みんなが爆笑した。

「やだもう。忘れちゃってるの?」
「でもさぁ、らしくていいんじゃないか?」

 まったくわけが分からない。

「ねぇ……だから何なの?」
「しょうがないなぁ。イマド、説明したげなよ?」

 水を向けられて、初めてイマドが口を開く。

「お前、今日誕生日だろ」
「え……あ!」

 忘れてた。
 でも、あたしだって忘れてたのに、どうしてみんな知ってるんだろう?

「お前のお袋だよ、俺らに教えたのは」

 よほどあたしが不思議そうにしていたらしくて、イマドが説明する。

 ――母さんてば!

 あたしの母さんはかなり変わってる上に、ともかくなにかと、過剰なくらいに世話を焼きたがる人だ。
 けど……今回は許せるかな?
 また涙が出てくる。

「あ~あ、やっぱりルーフェイア、泣いちゃった~」
「ほらほら、泣くことないでしょ。さ、座って座って」

 自分でも泣いてちゃダメだとは思うんだけど、どうしても涙が止まらない。

「さ、泣いてないで食べよう?」
「うん」

 あたしやっと涙を拭いて、席についた。

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