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第6話 立ち上がる意思

浜辺 Episode:02

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◇Imad

「や~っともどってきたか」

 海からあがった俺に、悪友たちが声をかけてきた。

「わりぃ。久しぶりだから、ちと夢中になってた」
「いいっていいって」
「ホントお前、泳ぎは上手いよな~」
「まぁな」

 つか俺、泳ぐのだけは自信ある。今年も一夏泳ぎ込んで、タイム上げるつもりだった。

 よく晴れただけあって、日差しがキツい。突き刺さる感じだ。

 でも去年はこの日、エラく寒くてみんなでひどい目に遭ったから、それを思えばかなりマシだろう。
 あの時俺は平気だったけど、クラスはほぼ全滅したし。

 どっちにしても明日からは、思う存分泳げるってやつだ。
 その意味じゃ今日は、俺が一年でいちばん楽しみにしてる日だった。

 ルーフェイアのヤツは、海開きの意味が分からなかったらしくて、ひたすら怪訝そうな顔をしてたけど。
 あいつに言わせると「そこにあるのに、どうして自由に泳げないのか」ってことらしい。

「おーい、飲むか? こっち来いよ」
「あ、いま行く」

 あいつら、いつの間にか日陰を陣取ってやがる。俺も連中の隣へ行って、腰を下ろした。

「しっかしよかったよな~、晴れて。去年はヒサンだったじゃねぇか」
「っていうか、あれで海に入れって方がムチャだよ」
「お前ら見てねぇだろうけど、去年のムアカ先生、すごかったぞ。怒りまくってたかんな」
「あー、なんかわかる」

 ついこの話になるのはしょうがない。去年はともかくヒドかった。
 んでその分、今年はみんな、浮かれまくってる。

 ――そいえばこの話、ルーフェイアのヤツ知らねぇな。

 あいつは今日は、シーモアたちといっしょなはずだ。

「おーい、イマドー?」
「ん?」

 アーマルに呼ばれて、はっとわれに返る。

「また、ぼーっとしてさ。ルーちゃんのことだろ」
「イマド、保護者だもんな」
「よく分かってんじゃねぇか」

 この一言で、二人が黙る。

 ――けっこうこいつら、わかりやすいよな。

 どっちにしてもルーフェイアのお袋さんに頼まれた手前、面倒を見ないわけにもいかない。
 だいいちあいつ、バトル以外は 信じられないほど非常識で、あぶなっかしいことこの上なしだ。

 と、当のルーフェイアを見つけた。
 なんかいつものメンバーに囲まれてっけど、どういうわけか下向いて、なんかヤバげな雰囲気だ。
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