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第7話 力の行方

露見 Episode:05

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「殿下、いやですっ!」

 言いながら、殿下の腕にすがりつく。

「なんだおまえ、ほら、離れろ!」
「いやっ!」

 強引に引き剥がそうとする男に抵抗して、力いっぱいしがみついた。
 男たちが呆れる。

「困ったお嬢さんだ。まぁいい、別にいっしょでも構わないだろう。見張りもそのほうが、数が少なくて済む」

 上位らしい別の男が言って、あたしと殿下は見張り役といっしょに、同じ部屋に放り込まれた。

「ここで大人しくしてるんだ」

 大きな音を立てて、扉が閉められる。

「大丈夫か? 落ち着くまで休んだらどうだ?」
「え? あ、いえ、大丈夫です」

 心配そうな殿下に、慌てて言葉を選びながら答える。

「その、殿下と離されるわけには……だから……」
「そういうことか」

 殿下、どうしたんだろう? なんだかちょっと、がっかりしてる感じだ。

「あの、あんなことして……すみませんでした」

 いきなりしがみついたりしたから、気を悪くしたのかもしれない。

「もう二度と、しませんから」
「いや、いい。それに、怒ってるわけでもないぞ」

 口ではそう言ってるけど、なんだかやっぱり、少し怒ってる気がする。

 それにしてもこの部屋、とても監禁するところとは思えない。
 いちおう窓には鉄格子がはまっているけどそれだけで、あとはホテルのスイートという感じだ。
 ベッドも2つあるし、応接セットもある。

 そんな部屋のせいだろうか?
 部屋の中にいっしょにいる見張りも、どこかのんびりしてて緊張感がない

 もしかするとあたしたちが子供だから、油断してるのかもしれないけど。

 ただ、すぐには抜け出せないのも事実だった。
 あたしひとりならどうにでもなるけど、殿下が一緒じゃそうはいかない。風向きが変わるまでは、否が応でもおとなしくしているよりなさそうだ。

 だからと言ってあまり待っていると、こんどは状況が不利になりすぎる。
 かなり微妙なところで、判断が難しかった。

 ――この場所を、先輩たちに知らせられるといいんだけど。

 そうすれば一気に選択肢が広がって、がぜん脱出が楽になる。
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