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第8話 言葉ではなく

知らせ Episode:17

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「――兄ちゃん、ありがと」

「ん? 気にすんなって。だいいち途中で放り出されたらお前、どうにもならねぇだろ。
 それよりとりあえず食えよ。何か頼んでさ」

 さすがに神妙な顔で礼を言ってきたガキに、そう返す。

「オイラさ……」
「ねぇ、どれにする?」

 こいつが何か言いかけたけど、タイミングよくルーフェイアがメニューを出した。

「なんだこれ。これ見るとなんかあるのか?」
「え? 何ってその、メニューだけど……」
「メニュー?」

 会話が成り立ってない。

「えっとね、ここにその、いろいろ料理が書いてあって……ここから選んで、頼むの」

 ルーフェイアにしちゃ珍しく、的を射た説明だ。ただ、その先は予想以上だった。

「そのさ、オイラ字読めねぇから、姉ちゃん読んでくれよ」
「え? あ、ごめんね! えぇと……」

 ルーフェイアのやつがメニューを読み上げ始める。

「姉ちゃん、それってどんな食いモン?」
「え……?」

 ――って、最悪の組み合せか?

 ルーフェイアの方が知ってりゃまだともかく、双方で分かんねぇからまさにお手上げだ。
 このまま放っておいたら一日経ってもまだ、料理にありつけねぇだろう。

「――おい、適当に頼むぞ」
「あ、うん。兄ちゃんにまかせる」

 さすがに見かねて、また俺が適当に頼む。

「イマド、ごめんね……」
「だから謝るなって。別にお前が悪いわけじゃねぇだろ。

 ほら、さっさと食っちまえよ」
 面倒を見る人数が増えて、妙に忙しい。

「ほら、お前もそこに突っ立ってんじゃねー。って、手汚ねぇな。洗ってこいよ」
「え? なんで手洗うのさ」

 常識通じてねぇし。

 けど幸い、バタついたのはそこまでだった。手洗わせて座らせて、メシが運ばれてきたあとは、二人とも大人しく食べ終える。

「でさ、兄ちゃん、オイラ……」
「ストップ。部屋戻ってからな」

 言って俺は立ち上がった。

 ただでさえさっきの騒ぎで注目浴びてるのに、んなヤバい話がここで出来る訳がない。
 食べ終わった二人もついてくる。

 ――にしてもこいつ、どうするかな。

 もっともワサールまでは降ろすワケにいかねぇから、問題はその後だ。けどこの調子じゃ、ほっとくと何しでかすかわかんねぇし……。

 けっきょく最後まで連れてくしかないだろうと思いつつ、俺は部屋へと向かった。
 部屋の鍵を開けて、ガキを中へ入れる。
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