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第8話 言葉ではなく

尋ね人 Episode:01

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◇Caleana

「ど~こ行っちゃったのかしらねぇ?」

 久々のスラム。時は夕暮れ過ぎ。
 もうそろそろ、その辺の家じゃ夕食の時間かしら?

 けどここ……。

 迷うって言うほどには変わっちゃないけど、やっぱりどっか馴染まないのよね。
 だいいちあたし、ディアスと違ってここの育ちじゃないし。

 それになにより独りだと、ちっとも進めないのが困りもの。

「よぉ、何か探しもんかい」

 ずっとこの調子なのよねぇ。
 ともかく人が声かけてきて、立ち止まってる時間のほうが長いくらい。

「人を探してるのよ。金髪で太刀持った美少女、見なかったかしら?
 じゃなきゃバスタードソード持った、淡い金髪の美丈夫でもいいわ」

「どっちも見なかったなぁ。
 けどよ、金髪で太刀持った美女なら見たぜ」

 ――あら。

 この男、ちょっとは頭が回る?

「ふぅん、どこで?」

 おもしろそうだから乗ってみる。

「そりゃ決まってるだろう。ここでさ」

 わかりきった答えだけど、まぁ合格かしら?
 さて、次はどう来るかしらねぇ♪

「とりあえず、その辺の店に入らねぇか? 今夜は冷えそうだしな」
「そぉねぇ、どうしようかしら?」

 ちょっと迷ったフリして、からかってみたりして。

「いいじゃねぇか。その尋ね人は、うちの連中にでも探させっからさ」
「あら、あなた偉いのね?」

 案外、上手いのが引っかかったのかも。

 ――けど、何者かしら?

 なにせあたしはスラムには疎いから、ぱっと見ただけじゃどこの誰だかわかんなくて困るわ。
 まぁ「探させる」なんて言うからには、どっかの組織のそこそこ以上なんでしょうけど。

 そうは言ってもわかんないから、意識を凝らしてこの男を探ってみる。

 実言えばあたし、気合入れれば人の考えてることをある程度――まぁ漠然としたイメージ程度だけど――は読めるくらいの力は、あったりするのよね。

 もっともこれって珍しい話じゃなくて、シュマーの家にはあたしを上回る連中がごろごろしてるし、それ以外にも幾つも、この手の血筋はあるし。

 って、ちょっと待ちなさいよ……。

「ねぇ、もう一回聞くけど……あなた本当に金髪の美少女、知らないのね?」
「ああ。見たこともねぇなぁ」

 なるほど、そう来るわけね。
 でも今回は、乗ってなんかあげない。



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