上 下
315 / 743
第8話 言葉ではなく

尋ね人 Episode:02

しおりを挟む
「おかしいわねぇ。確かにここへ来たはずなんだけど。それになんたって、すぐ噂になる子だし」

 さてこの男、あたしの表情が変わったのに気が付いたかしら?

「まぁいいじゃねぇか。そのうち見つかるさ」
「そのうちじゃ遅いのよ」

 言いながらあたし、手にした太刀を半分抜いて見せた。

「物騒だなぁ。
 けどスラムったって広いんだ。そう簡単には見つからねぇことくらい、あんただって分かるだろ?」

「普通ならね」

 同時に一閃。
 男の前髪がひと房宙に舞う。

「さぁ、白状してもらいましょうか? 昼間あの子に会ったわね」

 太刀を付きつける。

「な……」

 ――慌ててる、慌ててる。

 こっちも無造作に片手で構えてるだけだけど、この男ってば自分がそこそこ出来るだけあって、すくみ上がってる。

「あたしね、嘘はキライなのよ」

 そう。

 この男、ルーフェイアに会ってる。
 だってあたしが「金髪の美少女」ったときに、何か思い当たってたもの。

 それでもまだ、会ったんなら会ったってちゃんと言ってくれれば、考えなくもなかったんだけど……。

「い、いや、そりゃ確かに……けど、あんたの言ってる子かどうか分からんし……」

 必死に言い訳してるけど、聞いてやる気なんて無い。
 だいたい、「太刀持った金髪の美少女」なんてもの、そうそう世間に転がってるワケないし。

「金髪碧眼の太刀持った美少女で、通りすがりのもめごとに頭突っ込んで、挙句に借金をいきなり肩代わりするような子は、あたしの娘くらいよ」

「む、娘っ!」

 あらなによ。
 あたしに娘がいちゃ、おかしいみたいな言い方じゃない。

「ともかく会った場所まで案内してもらうわ。
 それとそうね、他にも何か役に立ってくれたら、命だけは助けてあげる」

「ひでぇ……」

 チンピラ束ねてる割に、この男ってば情けない声、出すし。
 やっぱり前言撤回、失格だわ。思ったほどじゃなかった。

「あら、別にいいのよ。別にここで殺してあげたって。
 嘘ついたんだもの、そのくらいしてもいいわよねぇ?」

 そう言って、頬に紅い線を引いてあげる。

「あたしのお願い、聞いてくれるかしら?」
「……は、はい」
「よろしい」

 とりあえずこの男を連れてれば、ヘンなのに煩わされることも、なさそうだしね♪
しおりを挟む

処理中です...