上 下
317 / 743
第8話 言葉ではなく

尋ね人 Episode:04

しおりを挟む
「はいはい、分かったらさっさと聞いてくるの。10分以内に帰ってこないと、あと知らないわよ」
「ひぇぇ……」

 なんだかぼやきながら、それでも彼が聞きに行った。
 で、立って待ってるのも面倒だから、その辺の階段に座りこんじゃう。

 けどせっかく座ってたら、家の人が帰ってきちゃうし。

「ちょいとあんた、うちの玄関の前に座って何か用かい?」

「あらごめんなさい。ちょっと人探してて、疲れたもんだから。
 そうだ、うちの子見なかった? 金髪に碧い瞳の可愛い女の子で、太刀持ってるんだけど」

 このおばさんが、まじまじとあたしの顔を見る。

 ――あんまり美人だから、見惚れたかしら?

「ふぅん……なるほどね、あんたがあの子の親かい。確かに、言われてみれば似てるかね」
「でしょでしょ♪」

 なんたってあたしの自慢の娘だもの。
 でもあの子目立つから、やっぱりちゃんと見られてたみたいね。

「それで、どこへ行ったか分かる?」
「昼間のあの子がそうなら、ジャスんとこに上がりこんだよ。なんだか泣いてたっけね」

 あらま。何で泣いたか知らないけど、ちょっと見たかったなぁ。
 でもとりあえずはあの子探さないと、見るも見ないもないわけで。

「そしたらそのお宅、どこかしら?」
「そこのアパートの、二階のいちばん奥だよ」
「ありがと、助かったわ♪ あ、これ、少ないけど取っといて。娘見つけてくれたお礼よ」

 そんなやりとりしてたら、レードが戻ってきた。

「お嬢さんの居場所、わかりましたぜ」
「ジャスさんって方のお宅に、上がりこんだみたいね」
「なんで知ってるんです……」

 可笑しくなるくらい、レードががっかり肩を落とす。

「ま、人徳ね。行きましょ」

 何か言いたそうな彼は無視して、あたしは教えられた部屋のドアを叩いた。
 中からまさに「お袋さん」って感じの人が顔を出す。

「なんだい?」
「忙しいとこ悪いんだけど、うちの娘のルーフェイア、お邪魔してないかしら?」

「あ、あの子の親御さんかい。
 いや、あの子にはすっかり世話になっちまってねぇ。ほんとだったら……」

 ――長くなりそう。

 しょうがないからこっちで遮る。

「ごめんなさい、あの子、いるのかしら?」

 時間のある時だったら、いくらだって井戸端会議に付き合うんだけど。
しおりを挟む

処理中です...