上 下
349 / 743
第8話 言葉ではなく

推論 Episode:11

しおりを挟む
「確かにあなた見てると、おかしな家系ってのは納得出来るわね」
「ひどいわね」

「あらそうでしょう?
 けどそんな反則技が本当にあるなら、手がないこともないわ」

 ――レニーサさん、すごいかも。

 あたしたちが戸惑ってる間に、あっさり順応しちゃってるもん。
 見かけによらず修羅場くぐってるって聞いたことあるけど、ホントだったのかな?

 なんて思ってるうちに、レニーサさんがちょっとだけ真剣な表情になったの。

「エマンシオ・ファミリーに繋がるセンなら、心当たりがあるのよ」
「――姐さん、マジでなんでも知ってますね」

 ダグじゃないけど、ほんとほんと。
 今度どこから情報仕入れてるのか、教えてもらおうかな?

「半分商売だもの。
 まぁそれはともかく、最近格安のクスリばら撒かれてる話は、知ってる?」

 レニーサさんの言葉に、みんなが一斉にうなずいて。

 当たり前って言えば当たり前だけど、クスリって値段が決まってる。
 なのにここんとこそれ無視して、激安で売りさばく連中がいるって話だった。

 で、大騒ぎになってクリアゾンのおじさんたちが、血眼になって探してるんだけど、なんかよく分かんないって言うの。

「もしかして、そのクスリが?」

 何か知ってるらしくてレニーサさん、ちょっとだけ嘲って。

「エマンシオ・ファミリーが、最近ものすごい量を買い付けて運び込んでるのは、確かなのよ。
 で、それと同じ頃から出回った、格安のクスリ。おかしくない?」

「あ……」

 この町へ入ってくるクスリの量は、ツテのある人ならだいたい分かる。
 だから出回る量も、見当がつく。

 それが急に増えてて、しかも買い付けた連中が分かってるとしたら……。

「でも、現場見たやつはいないって聞いてますけど? 証拠もないし」
「それなんだけどね」

 何か知ってるらしくてレニーサさん、ちょっとだけ嘲って。

「どうもそのばら撒いてる人間、子供らしいのよ。エマンシオ・ファミリーが雇って、どこからか連れてきてるらしいの」

 聞いた瞬間、それまで黙ってたあのジャーナリストが、はっと顔を上げたの。

「どうやらゼロール、あなた何か知ってるみたいね」
「見たことはないんだがな」

 それから、この人がかいつまんで説明してくれて。
しおりを挟む

処理中です...