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第8話 言葉ではなく

推論 Episode:12

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「でも、なんだって誰もチクらないだか?」

 シーモアが不思議そうに言って。

「格安だからでしょうね。そんないい売り物、ここじゃ秘密にしておくものでしょ」
「あ、そっか……」

 チクったらもちろん、クリアゾンのおじさんたちがすっ飛んでくわけで。
 でもヤク中の人は、ちょっとでも多くクスリが欲しいんだから、格安のクスリが消えたら困る。

 だから誰もチクらなかった、ってことみたい。

「ともかく、その子供たちが売ってる麻薬の出所は、エマンシオ・ファミリーだと思うのよね」
「じゃぁ、その子を辿れば、何か分かるってわけだ」

 がぜんみんな張り切っちゃって。
 ただあたしはなんか、イマイチ張り切れなかったり。

「でも、どうやって辿るの?
 上手くその子が見つかったって、もともとはファミリーと無関係なんでしょ?」

 みんなに訊いてみたり。

「どうにかして、追加を取りに行かせる……とか?」
「どうだろうな。売り切りだったら、それはないぞ」
「あ、そっか……」

 いい手が思い浮かばない。
 そのとき、イマドが言ったの。

「思うんだけどよ、そのガキ、売り上げはぜったい持ってくんじゃねぇか?」

 あっと思う。

 クスリもらって商売して、そこから小遣いもらってるわけだから、売り上げを持ってかないワケがない。
 もしネコババでもしようもんなら、命がないし。

「追加を取りに行けばよし、行かなくても尾行すれば、ある程度の事は分かるな」
「だよね」

 だいたい話がまとまってくる。
 でも……。

「誰が行くの?」

 訊いてみたの。

 そういうクスリ売りじゃ、見張りがいるかもしれないし。
 それによっぽど上手に駆け引きしなくちゃだから、ちょっとやそっとじゃムリだろうし。

 だけどあたしたちの仲間でそういうのができそうな人間、みんな顔割れちゃってるから……。

「イマド、あなた行きなさいよ」

 あたしを含めてみんなで悩んでたら、ルーフェイアのお母さんがいきなりそう言ったの。

「げ、なんでです」
「あなた、そーゆーの出来るでしょ。しらばっくれるのはナシよ」

 ――なんの話かな?

 なんかよくわかんないけどイマド、すっごい嫌そうな表情してる。
 けどおばさん、お構いなし。
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