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第8話 言葉ではなく
証拠 Episode:15
しおりを挟む「ほら、泣いたら写影に撮るわよ。最近のがないから、狙ってるんだから」
「もう!」
慌てて離れる。
母さんのほうは今度は、イマドを起こしにかかった。
「ほらイマド、あんたも起きなさいって。寝てる場合じゃないわよ」
かなり乱暴に揺すり起こす――と言うより揺すり「落とす」。
「ってぇ★
あ、おはようございます……?」
「もう、寝ぼけてんじゃないの! 出かけるわよ!」
いきなりこう言われて、さすがのイマドもなんのことか、分からなかったみたいだ。
「出かけるって、どこへです?」
「黒幕のとこに決まってるでしょ」
イマドが『なんのことだ?』って顔であたしを見る。
「あのね、昨日観たって言う邸宅……あったでしょ? あそこの場所と持ち主、分かったんだって」
「あ、なるほど。けど、どうして俺が出かけるんです?」
「ルーフェイアが行くって言うから」
わけのわからない説明を母さんがする。
「あ、そですか。んじゃ俺も……」
でもイマド、それで納得してしまった。
「いい子ね。じゃぁ行くわよ」
「へ? もう行くんですか?」
「なによ、文句あるの?」
「だって俺、メシ……」
まだ起きぬけでいまひとつペースが上がらないイマドが、それでも母さんに抗議した。
けど、このくらいで動じる母さんじゃない。
「ったく、なに言ってんのよ。戦場出たら食べてるヒマないのなんて、しょっちゅうなんだから」
「んなこと言われても……」
夕べあれだけ食べてたのに、しっかりお腹がすいてるみたいだ。
「しょうがないわねぇ。レニーサになんかもらってあげるから、車の中ででも食べなさいね」
「あ、すいません」
なにか食べられると聞いて、イマドは少し元気が出たらしい。
でも、結局なにももらえなかった。
「カレアナ、大変よ!」
真剣な顔でレニーサさんが部屋に飛び込んでくる。
「ん? どしたの?」
「治安維持部隊に、ここへの出動命令が出るらしいわ!」
「――はい?」
母さんが間の抜けた返事を返した。
「治安維持部隊って、治安維持部隊よねぇ?
別に戒厳令も出てないのに、なんでそんなものがくるわけ?」
なにかクーデターまがいのことがあったならともかく、治安維持部隊に出動命令が出るなんてよほどの話だ。
「それが……」
レニーサさんが説明を始める。
ことの発端は、例のシーモアたちの抗争だということだった。
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