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第8話 言葉ではなく
結末 Episode:07
しおりを挟む「――げ、オイラ帰るっ★」
ウィンのやつも気が付いて、慌てて踵を返した。
「ちょっとウィン、どうしたの!
あぁもう、シーモア、どうしよう?」
さすがにうろたえながらナティエスのやつが訊くと、シーモアも呆れ半分苦笑半分で答えた。
「ウィンのヤツ、タシュア先輩でも見たんじゃないのかい?
けどこれ以上いてもしょうがないし、ルーフェイア、あたしらもそろそろ引き上げるよ」
「え、あ、うん……」
突然言われて、こいつが戸惑いながらもうなずく。
「ほら、そんな顔しなさんなって。どうせ年が明けりゃすぐ、学院で顔つきあわせるんじゃないか」
これで納得したんだろう。ルーフェイアのやつが淡い笑顔になった。
「――そうだね。
そしたらシーモアもナティエスも、気をつけてね? 風邪なんかひかないでね?」
「大丈夫だって」
「もう、ルーフェイアったらほんと心配性なんだから。じゃぁね♪」
それから二人も、手を振りながら下りの自走階段のほうへ向かった。
徐々に姿が沈んで消える。
「行っちゃったね……」
「ま、どうせまたすぐ会うんだしな」
「――うん」
ちょっと笑顔になって、こいつがこっくりとうなずいた。
――これが可愛いんだよな。
確かに年より幼いだろうけど、ヒヨコよろしくくっついてくるこいつは、俺は嫌じゃなかった。
「で、お前はこれからどうすんだ?」
「えっと……?」
自分じゃ考えてなかったらしくて、ルーフェイアが困った顔して両親のほうを振り向く。
「どこか予定があるのか?」
「あら、ディアスかルーフェイアが考えてると思ったわ」
――おい。
親子三人でいたにも関わらず、誰も何も考えてなかったらしい。
この頼りない両親に、ルーフェイアのやつがため息をついた。
「――んじゃみんなで、アヴァン来ません?」
「え?」
ちょっと首をかしげて、不思議そうにこいつが俺を見返す。
「いや、俺このまま叔父さんちいくからさ」
「あ……」
一瞬呆然としたあと、こいつが華やかな笑顔になった。
俺とルーフェイアが初めて会ったのは、あの街だ。
それに実のところ、孫娘の命の恩人になるこいつを連れて来るように、叔父さんから何度も俺は言われてる。
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