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第8話 言葉ではなく
結末 Episode:06
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「いや、それがさ、黙って手放して見逃してくれたんだ」
「ンな奇特なヤツが、今時いるのか……」
未遂だったせいもあるんだろうけど、かなり珍しい話だ。
「でもホントそのヤロー、見かけと中身がぜんぜん違うんだ」
まだ悔しいらしくて、ウィンが文句を言う。
「髪なんか銀色で、前髪だけちょこっと紅くしちゃってさ、挙句に女みたいに伸ばして三つ編みしてんだぜ?
絶対、やれると思ったんだけどな~」
「そ、それ、もしかして……」
ウィンの説明に、俺も含めて絶句する。
ナティエスが上ずった声で訊いた。
「あ、あのね……その銀髪の人、眼鏡かけてなかった?
それとカップルって……連れの女の人、黒い髪に紫の瞳で長身じゃ……」
「あれっ、ナティねぇなんで知ってんのさ?」
ナティエスの説明聞いて、目を丸くしたウィンの頭を、シーモアがはたく。
「あんた、その人狙ってそれで済んだんなら、はっきり言ってメチャメチャ幸運ってやつだよ」
「ほんとほんと、絶対成功しない相手よ、それ」
ナティエスとシーモアが、このガキに向かって突っ込む。
そういや「タシュア先輩とシルファ先輩がどっかへ行ってるってのは」、ルーフェイアから訊いてた。
けど、どうやら行き先はここだったらしい。
世の中広いようで狭いっつーか……。
「にしてもよ、よく五体満足で見逃してもらったよな」
「タシュア先輩、そんなことしないわ!」
俺のつぶやきに、ルーフェイアのヤツが猛然と抗議する。
「先輩、優しいもの」
「――はいはい、分かってるって」
毎度泣かされてるクセに必ずこう言うんだから、マジでたいしたもんだ。
「だとすると、この記事の犯人は彼かしらね?」
言いながらルーフェイアのお袋さんが、さっきから斜め読みしてた新聞――ウソみてぇだけど経済新聞だ――をひらひらさせた。
「なんの記事です?」
「あ、あなたたちじゃ見てもわかんないと思うわよ」
確かに俺もざっと見てみたけど、魔力石の相場が上がったとか国境地帯で金属の採掘権がどうなったとか、ンな記事ばっかだ。
「教えてくれたっていいじゃないですか」
「別に知らなくたって、困りゃしないわよ。
――あら」
俺の言葉を軽く躱したお袋さんが、遠い下の広場を見ながら面白がるような声を出す。
「ンな奇特なヤツが、今時いるのか……」
未遂だったせいもあるんだろうけど、かなり珍しい話だ。
「でもホントそのヤロー、見かけと中身がぜんぜん違うんだ」
まだ悔しいらしくて、ウィンが文句を言う。
「髪なんか銀色で、前髪だけちょこっと紅くしちゃってさ、挙句に女みたいに伸ばして三つ編みしてんだぜ?
絶対、やれると思ったんだけどな~」
「そ、それ、もしかして……」
ウィンの説明に、俺も含めて絶句する。
ナティエスが上ずった声で訊いた。
「あ、あのね……その銀髪の人、眼鏡かけてなかった?
それとカップルって……連れの女の人、黒い髪に紫の瞳で長身じゃ……」
「あれっ、ナティねぇなんで知ってんのさ?」
ナティエスの説明聞いて、目を丸くしたウィンの頭を、シーモアがはたく。
「あんた、その人狙ってそれで済んだんなら、はっきり言ってメチャメチャ幸運ってやつだよ」
「ほんとほんと、絶対成功しない相手よ、それ」
ナティエスとシーモアが、このガキに向かって突っ込む。
そういや「タシュア先輩とシルファ先輩がどっかへ行ってるってのは」、ルーフェイアから訊いてた。
けど、どうやら行き先はここだったらしい。
世の中広いようで狭いっつーか……。
「にしてもよ、よく五体満足で見逃してもらったよな」
「タシュア先輩、そんなことしないわ!」
俺のつぶやきに、ルーフェイアのヤツが猛然と抗議する。
「先輩、優しいもの」
「――はいはい、分かってるって」
毎度泣かされてるクセに必ずこう言うんだから、マジでたいしたもんだ。
「だとすると、この記事の犯人は彼かしらね?」
言いながらルーフェイアのお袋さんが、さっきから斜め読みしてた新聞――ウソみてぇだけど経済新聞だ――をひらひらさせた。
「なんの記事です?」
「あ、あなたたちじゃ見てもわかんないと思うわよ」
確かに俺もざっと見てみたけど、魔力石の相場が上がったとか国境地帯で金属の採掘権がどうなったとか、ンな記事ばっかだ。
「教えてくれたっていいじゃないですか」
「別に知らなくたって、困りゃしないわよ。
――あら」
俺の言葉を軽く躱したお袋さんが、遠い下の広場を見ながら面白がるような声を出す。
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