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第9話 至高の日常
日常 Episode:12
しおりを挟む「支払うって、4人分をか?」
なぜかシルファ先輩が慌てる。
「この様子ですと、いつもミルドレッドたちに支払わされているのでしょうね」
「え、でもみんなが、お金がある人が……払えばいいって……」
ケンディクに自宅があるミルはともかく、シーモアやナティエスは学院からの支給だけだから、外食のお金まで毎回払っていたらとても持たない。
「まったく。人の言うことを疑わないのも、ここまで来ると困ったものですね」
けどタシュア先輩の言い方だと、とても悪いことをしてしまったみたいだった。
「あの、あたし何か悪いこと……?」
心配になって尋ねる。
イマドとシルファ先輩とが顔を見合わせた。
「まるっきり悪い……とは言わないだろうが……」
「っつーか、あの連中に見事に言いくるめられたような……」
二人は理由が分かっているみたいだけど、あたしにはさっぱりわからない。
「ねぇ、何が悪いの……?」
「えーと、どう説明すりゃ……って、後じゃダメか? 話が込み入っちまうし、腹減ったし」
「あ、ごめん!」
なんの話をしていたのか思い出して、あたしは謝った。
これじゃいつまで経ってもお昼にならない。
「まぁどちらにしても、ルーフェイアが払わされる気もしますがね。
――ともかく今日は私が出します。後輩に払わせるわけにはいきません」
「え、でも、大丈夫なんですか?」
シルファ先輩が躊躇うようなところで四人分も支払ったら、かなりの金額になるんじゃないだろうか?
と、タシュア先輩があたしに視線を向けた。
思わずすくみ上がる。
「出来ないことを私は言いませんよ」
「でも……」
確かに先輩は嘘は言わないけれど、高額になった場合が心配だ。
けどそんなあたしへ、シルファ先輩が言葉をかけた。
「ルーフェイア、私もタシュアも上級だから、ちゃんと学院から給料をもらっているんだ。
だから心配しなくていい」
「あ……」
言われて思い出す。
「その顔だと、完全に忘れていたようですね」
「す、すみませんっ」
見透かされたような言葉に、またあたしは小さくなった。
泣きたくなる。
「――早くその店に行きません?」
「――そうだな」
イマドとシルファ先輩とがそう言って歩き出して、あたしも慌てて後についていった。
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