上 下
430 / 743
第9話 至高の日常

日常 Episode:13

しおりを挟む
 ◇Imad

 ――ホント、よく泣くよな。

 やっとついたその店で、隣のルーフェイアのヤツを見ながらつくづく思った。
 まぁもとが大人しい性格で、言い返すより泣くやつだから、しょうがないっつやしょうがないんだろうけど。

 ただそれを差し引いても、タシュア先輩とは相性が良すぎるらしくて、下手すりゃ何分かおきに泣かされる。
 その上何をどうしたのか、それでも懐いてつきまとうから、延々と泣かされっぱなしってやつだった。

 ――もっともこの先輩、ルーフェイアは無視しねぇからな。

 そこら辺考えると、一応可愛がって?る範疇に入るんだろう。

「ルーフェイア、あとはあなただけですよ」
「すみません……」

 今も可愛がってんだかいじめてんだか、ともかく相手だけはしてるし。
 けどメニュー選んでるこいつに突っ込んだら、尚更遅くなるよな……。

 なにせルーフェイアのヤツの食べ物音痴――もう料理音痴ってレベルじゃない――はかなり致命的で、メニューを見せてやってもどれがなんだか分かっちゃねぇ。

 今も案の定、メニューとにらめっこしながらひたすら悩んでやがった。

「おい、貸せよ」
「あ、うん」

 けっきょく見かねてメニューを取り上げる。

「何が食いたいんだ? 肉か、魚か?」
「えっと、お魚」
「オッケー、んじゃあとは、なんか野菜とスープでいいな」
「うん」

 もっともこいつの場合、好き嫌いがないから楽だ。

 ――味もわかってねぇだろうけど。

 戦場で育ったのが良かったのか悪かったのか、ともかくこいつは「生き延びる」のが最優先で、料理の味やら素材には一切文句言わない。
 それこそ腐ってなくて食えりゃ、なんでもいいってやつなんだろう。

 けど、この外見でそれっつーのも……。

「そうやって甘やかすから、いつまで経っても子供のままなのだと思いますがね」
「でも俺、メシ遅くなるのヤです」

 突っ込んできたこの先輩に、思わずホンネを言った。
 だいいちルーフェイアに選ばせた日にゃ、どんだけ待たされるか分かったもんじゃねぇし。

「イマド、ごめん……」
「ですから謝っている暇があったら、早く選びなさい」

 さらにタシュア先輩が突っ込む。
しおりを挟む

処理中です...