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第9話 至高の日常

不審 Episode:04

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「えーと、お、無事だ無事♪」

 目当てのものを引っ張り出す。

「先輩、食います?」

 出したのは、道中の食料の残りだ。

 なんせルーフェイアとシルファ先輩、本までお遣いに頼まれてる。
 だとすりゃ、ちょっとやそっとじゃ戻ってこねぇだろう。

 けど冗談ヌキで、それまで待ちきれねぇし。

「おや、ありがたいですね」

 こと食料になると、タシュア先輩も素直だ。

「残りで悪いんですけど、ちゃんと食えますから」
「では遠慮なく」

 妙な光景になる。

 とは言えバッグの中に入ってる食料の量なんざ、たかが知れてる。
 挙句にヤロー二人じゃ、なくなるのにさして時間はかかんなかった。

 ――かといって一応腹がふくれたから、買出しに行くのは面倒だし。

 思いっきりすることがない。

「……あいつ帰ってくるまで、寝っかな」
「どこでです」
「いや、ここで」

 大部屋がヤだとかタシュア先輩がごねたせいで、ここは二人部屋――個室はいっぱいだったらしい――だ。
 んでこの部屋、ベッドが一つ空いてる。

「入院したわけでもないでしょうに」
「バレなきゃそれまでですって」

 それに病院の看護士は忙しいから、こんなぴんぴんした患者をそうそうは見に来ない。
 看護士やってる叔母さんの話じゃ、だいたい二時間おきくらいだったはずだ。

「えーと、一・五時間後にして……」

 アラームを合わせる。

「まったく、何を考えているんです。

 だいいちイマド、シルファに私の見張りを頼まれていたのではありませんか?」

「俺が先輩見張ったって、ムダだと思いますけど」

 この先輩がマジで抜け出す気になったら、どうやったって出し抜かれるのがオチだ。

「んじゃすいません、俺、寝ますんで」

 さっさとベッドの上に上がりこむ。
 それから、思い出した。

「先輩、看護士やってる叔母さんの話じゃ、勝手に点滴早くして終わらせようとかすると、ショック起こすらしいですよ?」

 って言うか、そゆ患者、マジでいたらしい。
 けど先輩からは、けっこう意外な答えが返ってきた。

「――私をなんだと思っていますか」
「あ、知ってました?」

 こんな情報、どこで手に入れたんだか。

 ――まぁ、こうやって釘刺しときゃ、点滴終わるまではどこにも行かねぇだろうけど。

「んじゃそゆことなんで、今度こそ寝ます」

 ちゃっちゃと毛布をかぶる。
 あとは幾つも数えないうちに、俺は眠りに落ちた。
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