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第9話 至高の日常

不審 Episode:09

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「面白そうですね」
「そうか? 実を言うと、私もそう思ったんだ」

 結局、二人で自分の読みたい本を選んでしまったらしい。

「これで……タシュア先輩、大丈夫でしょうか……?」

 せっかく買っていっても先輩の好みじゃなかったら、申し訳ない。
 けど、シルファ先輩が請け合ってくれた。

「タシュアは何でも読むんだ。だから、心配しなくていい」
「じゃぁ、大丈夫ですね」

 二人で一冊づつレジへ運ぶ。
 タシュア先輩の本だからと、シルファ先輩はあたしが持ってきた分まで、会計を済ませてくれた。

「あとは、食べ物……ですよね?」
「そうだな」

 病院のほうへ戻りながら、また悩む。

「何に……しましょう?」
「そうだな……。途中のスタンドあたりで、買えばいいんじゃないか?」
「あ、いいですね♪」

 ケンディクは観光都市のせいか、ちょっとした軽食を売るスタンドがけっこう多かった。
 簡単だしそこそこ量もあって、学院の生徒には特に人気だ。

 もちろん病院まで帰る途中にも、何軒もある。

「サンドイッチとかで、いいんでしょうか……?」
「なんでもいいんじゃないか? 量は、要ると思うが」

 確かにタシュア先輩もイマドも、とてもよく食べる。多分二人で四人前くらい要るだろう。
 ともかく食べているのを見ていると、どこへ入るのか不思議でしょうがないほどだ。

 と、シルファ先輩の表情が引き締まる。

「ルーフェイア、分かるか?」
「はい」

 実を言えばあたしは、もう少し前から気がついていた。
 誰かが、あたしたちを尾けている。

 ただその気配にはたいして緊迫感がなかったから、放って置いたのだ。

「――なんだろうな?」
「さぁ……?」

 何をするわけでもなくて、ただついてくる。

 けど、こういうことは初めてじゃなかった。
 ケンディクの町だけじゃなくて学院の中でも、時々誰かが後ろをついてくることがあるのだ。

 ――殺気があれば、考えるんだけど。

 最初はスパイかなにかとも思ったけど、ついてくるのは大抵学院の先輩の誰かだ。それに聞いた話じゃ、シルファ先輩も時々そういうことがあるという。

 だからもう、気にもしなくなってたけど……。
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