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第9話 至高の日常

不審 Episode:16

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「何か」とは恐らく、グレイスが持つ特殊な精霊なのだろう。そしてルーフェイアは3歳以前からそれと共生を始め、そのまま今に至っているのは確かだ。

 ――これで精霊を失くしたら、どうなるのか。

 憑依していようがいまいが関係なく存在できる精霊に対し、ルーフェイアはさっきの通り動くことさえ出来なくなる。
 おそらくは精霊を憑依させることで、その力を自身の生命力としても使っているのだ。

 これでは、いったいどちらが主なのか……。
 謎は深まるばかりだ。

(まぁ、今考えても仕方ありませんか)

 もう少し情報を揃えなければ、何も分からないだろう。

 ふと見ると、点滴の残りがだいぶ少なくなっていた。
 イマドが寝た後に少しだけ落ち方を早くしておいたのだが、それにしても思いのほか長い間考え込んでいたらしい。

「しかし、暇ですね」

 ばたばたと走り回る性格ではないが、じっとしたまま何もしないというのは少々苦痛だ。
 ましてや寝る以外にすることもないのだから、尚更だった。

(早く戻ってきませんかね?)

 なによりも食料が欲しい。

 と、気配を捉えた。
 シルファだ。

 どうやら食料にありつけそうだと一息ついて、タシュアは気づいた。

(――おや?)

 気配はひとつだけで、ルーフェイアのものがない。
 あのヒヨコの少女がどうしたものか、別行動を取ったようだった。

「すまない、遅くなった」
「お帰りなさい」

 直後に病室へと姿を現したシルファの後ろには、やはりあの金髪の姿はない。

「シルファ、ルーフェイアはどうしました?」
「それが、イマドに頼まれた飲み物を買い忘れたと――」
「なるほど」

 もっともそういう理由でもなければ、ヒヨコを止めたりはしないだろう。

 ――頼んだ当人は、あの有様だが。

 いっぽうシルファも気づいたらしく、尋ねてきた。
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