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第9話 至高の日常

動揺 Episode:09

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「――ごめん。あたし、どうかしてたみたい」

「私こそ、出すぎた真似を致しました。どうぞお許しを。
 それにお友だちが危険な目に遭われているのですから、気が逸るのも当然でございます」

「――ありがと」

 慰めとは分かっても、少し気が軽くなる。

「グレイス様、お取り込み中申し訳ないのですが……」
「あ、ごめんなさい」

 ケイカに話しかけられて、あたしはそっちを向いた。

「えっと、何?」
「先方が慣れていないせいか、接続がそろそろ限界です。何か、今のうちに訊いておくことはございますか?」

 彼女の言葉に、急いで頭の中をさらう。
 けど、犯人の配置なんかはすぐ分かんないだろうし……。

「とりあえず、いいと思う。
 ただイマドが大丈夫なくらいで、次の連絡時間だけ決めてもらえると、いいんだけど……」

「了解です」

 言って彼女が珍しく目を閉じた。それだけ接続が難しいんだろう。
 これで、次で犯人の配置さえ訊ければ、かなり状況は――。

「あっ!」

 大事なことに気が付いて、あたしは思わず声を出した。
 びっくりしたみたいで、ケイカが目を開ける。

「グレイス様、どうなさいました?」

 ドワルディも訊いてきたけど、そっちに答えてる時間はなかった。

「ごめんなさい、ケイカ。
 あのね、急いでイマドに、犯人の配置だけ確かめといてって――」

「今、そのまま伝えました」

 さすがに専任でやっているだけあって、早い。

「あちらも了解したとのことです。
 ――今、接続が切れました。次回は一時間八分後になります」

 半端なのは、きりのいい時間に合わせたせいだろう。

「わかった。ありがと」
「いえ……」

 でもなぜか、彼女の様子がおかしい。

「あの、ケイカ――?」

 また、悪いこと言っちゃったんだろうか。

「ごめんなさい、あたし……」
「ぐ、グレイス様、悪いのは私です。どうかお顔を上げてください」
「え、でも……」

 なんだか話が噛み合わない。
 悩んでいると、またドワルディが間に入ってくれた。

「ケイカは感激しているのですよ」
「え?」

 あたし、感激されるほど凄いこと、しただろうか?
 首をひねったけど、やっぱり分からなかった。

「まぁ、お気になさらずに。
 それよりもグレイス様、この後はどうなさいますか?」

 訊ねられて、あたしはまた考え込んだ。
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