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第9話 至高の日常

緊迫 Episode:07

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「ここへ候補生が入っちゃいけないこと、まさか知らないなんて言わないわよね?
 まぁ減点されたいっていうんなら、相談に乗ってもいいんだけど」

「許可は取りました。
 実はこの子――ルーフェイアが、少し情報を持ってきたもんですから」

「そうなの?」

 先輩があたしの後ろを覗き込む。
 ルーフェが制服の裾を掴んで、また縮こまった。

「ふぅん、近くで見ても可愛いわね。
 ――ほら、いらっしゃい。怖くないから」

「先輩、それじゃネコですってば……」

 何を間違えたんだかこの先輩、子ネコ呼び寄せるみたいに少しかがんで手招きしてる。

「ほら、おいでおいで。うーん、エサがないとダメかしらね」
「………」

 何かが激しく間違ってる。
 けどこのままじゃ、この子も怖がって動きそうにないし。

「ルーフェ、大丈夫だよ。別に食べられたりしないから」

 そう言ってあげると、ようやく安心したんだろう。あたしの後ろから、ルーフェがちょこっと姿を見せた。

「あの……」

 おずおずと前へ出てくる。

「――やっぱり、可愛いから食べてみようか」
「ダメですっ!!」

 先輩ときたら、とんでもないこと言い出すし。

 ――もっとも当のルーフェは、なんのことだか分かってないんだけど。

 きょとんとした表情で、首を傾げてるだけだ。

「かっわい~♪ ほら、捕まえたっ」
「きゃ……」

 ただなにしろこの子だから、逃げ出すわけでもなくて、そのまま抱かれてるし。

「いい子ねぇ。
 さ、お姉さんにお話、聞かせてもらえるかしら」

「あ、はい」

 傍目から見るとけっこう危険な気がするけど、ルーフェは知り合いのお姉さんに抱っこされた程度の認識らしい。

 ――それだってかなりアブナイんだけど。

 けど、嬉しそうなのは確かだ。

「えっと、その……」
「うんうん、それで?」

 ちゃんと通じるように、話してるし。

「それで、タシュア先輩が倒れて、病院へ行って……」

「あのタシュアが? ふぅん、あいつ人形じゃなかったのね」

 さすがこの先輩、とんでもないこと言う。

「まぁいいわ、それで?」
「それで、あたしが外へ行ってる間に……事件になったんですけど……」

 ここまでは聞いてる。
 けど次の言葉は、あたしをも驚かせることだった。
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